教育活動の一環(あるいは核)として「地域連携」に以前から力を入れてきた学校では、現行課程への移行後も変わらず、「総合的な探究の時間」において「地域課題」に取り組んでいることが多いかと思います。
長きに亘って築いてきた地域との関係は大いに生かすべきであろうと思いますし、学校が教育目標として「地域課題に向き合える人材の育成」を掲げてきたのであれば、急に旗を降ろすわけにはいかないはずです。
地域課題の解決を「ターゲット」に、体験と実践を伴った探究的な学びをデザインして、「地域連携と探究活動の一体化」を目指しましょう。

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2022/04/15 公開の記事をアップデートしました。
❏ 地域連携に探究活動の要素を組み込む
主眼を「地域社会への生徒の参加」に置いた従来の地域連携では、ことさら探究の要素を意識して指導を計画する必要はなかったはずです。
しかしながら、単に地域のイベントなどに参加して、パフォーマンスを披露したり、売店の運営などを手伝ったりといった、これまで多く見られた体験活動のままでは「探究」の要素を十分に組み込めません。
これまでの地域連携に「総合的な探究の時間」での活動を上乗せするのでは、単純な足し算となり、教育リソースの枯渇は避けられません。
両者を一体のものとしてデザインし直すことで、教育活動全体をできるだけコンパクトなものにまとめる必要があるはずです。
本稿でご紹介するのは、地域課題の解決をターゲットに、体験と探究を組み合わせたプログラム作りのアイデアの一つに過ぎませんが、要所に込めた意図を汲み取っていただければ幸甚に存じます。
❏ 先ずは地域社会が抱える課題を知るところから
地域課題の解決をターゲットにするからには、地域が抱えている課題を正しく知るところからのスタートになるのは当然です。この段階から、これまでに培ってきた地域との関係性は有益に働くはずです。
先輩学年が参加してきた地域イベントを主催していた自治会や商工会との繋がりもできているでしょうし、自治体の地域振興担当部署との接点も持っているのではないでしょうか。
これまでの体験学習の中で、特産物を活かした商品作りなどを先輩学年が経験していれば、農家の方や職人の方との関係もあるはずです。
こうした方々の生の声を聞くことや、現地で実際に体験してみることをスキップして(端折って)は、課題の把握も表層的なところに止まり、課題の発見/解くべき問いの設定を誤るリスクが大です。
地域の方のお話を一方的に聞くのではなく、対話(対面でもオンラインでも)の中で疑問をぶつけ、より深く知ることが、生徒にとっての自分事としての課題の発見につながるのではないでしょうか。
ちなみに、「斜めの関係」にある人と話をすること/活動すること自体が生徒にとってコミュニケーション能力の向上を図る好機になります。
❏ 知ったことを起点に、より広く深く調べ、問いを更新
地域の方の話を聞くことは、地域課題をリアリティを持って知るきっかけになりますが、そこで学びを止めては「ただ話を聞いただけ」です。
聞いて知ったことを起点に、自力で/協働でさらに情報を集めた上で、自ら問いを立て、地域をより広く、深く知ることに挑ませましょう。
問いを起点にさらに調べていけば、知の地平が広がると同時に、新たな問いが生まれます。こうした問いの深化があってこそ、探究活動が進んだことになります。(cf. 探究のプロセスを経た「問いの深化」)
調査段階で、地域の図書館を訪ねれば、地域の歴史文化に関する(一般の書店には並ばないような)ディープな書籍にも出会えるでしょうし、ネットで調べてみれば、他の地域でも同じような問題はないか、どんなアプローチでそれらの解決が図られているのかも知り得るはずです。
生徒一人ひとりに取り組ませるだけでは、調べられるところは限られますし、どの生徒も似たような情報しか拾えないかもしれません。
生徒/グループごとに役割(テーマ)を分担して取り組ませ、その結果を持ち寄らせるのも好適。必要なら、「ジグソー法」も試しましょう。
❏ 調べ学習に取り組ませるフェイズでの「ねらい」
この調べ活動を通し、情報を集めて知に編む力も養われるでしょうし、信頼できるソースを見つけてアプローチする姿勢と方法も実践を通じて学んでいけるはずです。
調べた結果をプレゼンテーションにまとめる中では、他者の理解を得られるように表現する力も身についていきます。
あれこれと調べていけば、矛盾する情報を見つけることもあるでしょうが、そこでの対処もまた、学ぶべきことの一つです。
当然ながら、これらの「ねらい」が十分に達成されるには、指導に当たる先生方の適切なガイドが欠かせません。
また、すべての教科の学習指導の中でも「鍛錬と評価の機会」を積極的に作りだしていかないと、単位数の限られる総合的な探究の時間だけでは、十分な成果は得られないと思います。
❏ 調べ終えたところからが、探究活動の本番
調べ学習と探究活動の境界は、以下の別稿でも書いた通り、「問題の捉え方」や「課題の解決法」といった新たな知を生みだしたり、当事者としての課題への関わりを持つところにあります。
同じモノ/コトについて地域の方の話を聞いても、それぞれの立場で違う捉え方をしているでしょうから、それらを統合して新しい別の見方で捉え直すことができれば、「新たな知」を作ったことになります。
また、調べ学習を通して把握した地域課題を解決する方法を考えることは、新たな知の創造に他なりませんし、その解決に当事者として関わる意識は「社会参画力」「持続可能な未来への責任」そのものです。
思考を重ね、解決策を創り上げるフェイズでも、地域の方との接触は密に持ちたいところ。常にフィードバックを得ることで、解決策はリアリティに根差した、地域の理解と共感を得るものになり得ます。
解決策も実行に必要なリソースを得なければ「絵に描いた餅」。地域にあるヒト・モノがどう活用できるか、カネをどうするかも、地域の人と一緒に考えてみる必要があるでしょう。考え出した解決策を試行に移すにも、生徒だけではどうにもならず、地域の協力は不可欠です。
生徒の活動時間と地域の方が割ける時間が合致しない場合、あるいは遠方で行き来が難しい場合でも、Slack などのチャットツールを活用するなど、障害を取り除くすべは色々あるはずです。
❏ 成果発表会では、成果と残った課題を次学年に引継ぎ
先生方の指導、地域の方の助言やサポートに支えられた、生徒が作り上げた答えには、成果も含まれれば、未解決の課題も残っています。
これらを後輩学年に引き継いでこそ、地域社会と学校(生徒)との関係も引き継がれるのではないでしょうか。先輩たちの成果に乗っかり、残された課題を掘り起こし、それを一つひとつ解決していくことで、地域への実のある貢献が継続するはずです。
学校では毎年生徒は入れ替わりますが、地域の側からしたら、毎年リセット、脈絡のない新しい提案を持ち込まれるのでは、地域の方々も消耗していきます。「善意を消費」されるのでは、協力も続きません。
成果発表会では、地域の方や専門家から、講評や助言をもらいますが、後輩学年にこそ、そこから多くを学んで欲しいところです。
発表した学年の生徒にとっては、これまでの取り組みの成果と過程を、振り返りを通じて「学びに再構成」する最後の機会。しっかり仕上げさせましょう。cf. プレゼンテーション/成果発表を機につくる成長の場
■関連記事:
- 探究活動を成立させるための全体構造
- 体験学習をただの体験で終わらせない
- 身の回りの問題を多角的に捉えさせる
- 探究活動を通じて育む「思考力」と「実践力」
- 特色ある教育プログラムに対する意欲と興味の維持
- 地域との協働は、学校の教育目的の達成のために
追記: 地域経済分析システムRESASのWEBサイトでは、人口、産業構造、地域経済循環、観光など、地域を多角的に捉えるための様々なデータが参照できます。また、「RESAS for Teachers」では、RESASを取り入れた授業モデルも紹介されています。
便利なツールはどんどん活用すべきですし、自校のプログラムを考えるにも、ゼロから起案するより先行例を参考により良いものを作り上げていく方が効率的&建設的。巨人の肩の上に立つことは、次の一歩を決める前提。一から自分で作る「拘り」はひとまず脇に置きましょう。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
