学校評価アンケートをどう活用するか #INDEX

学校評価アンケートを行う第一の目的は、「自校が展開してきた教育活動にステークホルダーの理解と共感、支持が得られているかどうか確かめ、さらなる改善に向けた課題形成を図り、その効果を検証すること」にありますが、これに加えて以下のような重要な目的も併せ持ちます。

  1. 学校の教育意図がきちんと伝わっているかを確かめること
  2. 答えてもらうことで学校の取り組みをより良く知ってもらうこと
  3. 個々の指導の効果を確かめ、教育リソースの最適配分を図ること
  4. 自校に向けられた期待を客観的に捉え、進むべき方向を見極めること

こうした機能を十分に発揮させるには、質問設計から実施を経て、データ分析とその結果の共有まで、各フェイズで押えておくべきポイントがあります。これらを踏まえ、学校評価アンケートを効果的、且つ戦略的に活用していきましょう。

2015/10/01 公開の記事を再アップデートしました。

#1 意図は伝わっているか、成果はあがっているか

教育活動に込めた意図は、理解と共感を得ているか
意図の共有を改めて図ったら、その効果も検証
それぞれの立場での捉え方/評価の違いを確かめる
生活、学習、進路の各領域での行動や姿勢を質す
集計結果で改善成果の確認&優良実践の共有
教育の成果を正しく伝え、理解者と協力者を増やす

#2 より良く知ってもらい、理解と共感を得るために

“尋ねることで認識してもらう”という戦略
発信したメッセージに到達してもらう工夫
定点観測に終始せずに、理解を得るための質問設計を
地域社会との “斜めの関係”を作るきっかけにも
アンケートの回答率自体も、点検すべき重要な指標
学校の取り組みをきちんと説明してから回答を依頼

#3 効果を確かめ、教育リソースを最適配分

役立っているか、という訊き方に内在する限界
尋ねるべきは、教育活動/指導を通して目指した変化
肯定的な回答の増える様子から指導の効果を探る
任意参加行事の効果は参加者/不参加者の比較で
目指すべき学校像の実現に「リソースの集中配分」

#4 データを使ってゴールの共有&目線合わせ

立場の違いによる評価の違いをきちんと把握
独りよがりにならず、自校の教育を客観化
認識のかい離を知り、対話を重ねて解消を図る
見えている風景が違っては、指導の目線も揃わない
好適実践の所在を特定し、ノウハウを共有する

#5 教育目標や指導方針をちゃんと伝える

目標や方針の周知は、個々の指導の評価を左右する
相関の背後にあると考えられるメカニズム
しっかり伝えようとすれば、より深く確かな理解に
評価項目に「目標・方針の周知」を加えることの効果
正しいデータで、教育改善と学校広報

#6 結果の十分な活用のためのスケジュール

寄せられた声にしっかり答えるために
年度末までの工程を考え、逆算でスケジュール作り
組織間で方向性を共有した学校全体での教育改善
次年度の学校評価の実施スケジュールを考える

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アップデートに際しての追記(2018-05-29)
広報(Public Relations; PR)とは、認知→理解→共感というステップを経て、ステークホルダーと良好な関係を結ぶための活動です。
学校の場合で言えば、生徒、保護者との信頼関係を作ることに加えて、教育活動への理解者と共感者を増やしていくことにほかなりません。
生徒募集における学校広報では、如上の「共感」というフェイズを超えた先に「選ばれる学校としての地位の確立」があります。
アピールに努めれば「認知」までは到達できるでしょうが、「理解」の先に進むには、実現を目指している学校像とともに、これまでの成果と今後の更なる展望をエビデンスを持って示していく必要があり、学校評価アンケートの結果はその有力な材料のひとつになるはずです。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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