探究活動や課題研究には代表者による成果発表がつきものですが、代表者や発表作品を選定した理由はきちんと言語化してレジュメや作品に添えて表示したいものです。発表や作品に触れた生徒に「なぜ選定されたのか」を知らしめることは、探究活動の目指すべきあり方を示すことに外ならず、それ自体が生徒に対するとても重要な指導だと思います。
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2019/02/18 公開の記事をアップデートしました。
❏ 合理的な理由なしに代表作品を選ぶことで生じる問題
代表者の発表や、展示されているポスターを見た他の生徒や後輩学年はそれら(選ばれたもの)を「倣うべきモデル」として認識します。
探究活動が満たすべき要件を欠いている作品を代表として発表・展示しては「こんなもので良いんだ」との誤解を生徒の中に植え付けます。
表面的な面白さだけを追っかけたような作品を代表に選んでは、次年度以降、後輩たちの作品にも再生産が続くのは半ば当然かと思います。
場合によっては、次年度の指導を担う先生方にも同様の誤解を抱かせるリスクも生じます。指導経験が浅い先生への影響は小さくありません。
選ばれた生徒も、自分がやってきたことを肯定されたことになりますので、探究活動を学校が導入したときの狙いを達成しないまま、学校を卒業することになり、その後も問題意識も持たずに過ごしかねません。
進学に際しても、総合型選抜の出願書類に、探究活動を通した経験と結び付けた志望理由を整えることもできません。志望理由書が必要でない出願経路でも、進学に際して「学ぶことへの自分の理由」が希薄では、進学後の学びに意欲を維持するのも難しくなるかもしれません。
発表会の代表者や掲出作品を選ぶときには、選者の責任が問われているのだという認識を持ちたいところ。教科学習指導で評定に合理性と公平性(+説明責任)が求められるのと同じだと思います。
こうした「責任」を明確にするにも、選定理由の言語化は不可欠です。
❏ 選定理由そのものを教員間で突き合わせる
代表作品の選び方は様々ですが、先生方が各々担当する生徒(ゼミ)の中から「優秀作品」を選び出すというパターンが比較的多いようです。
先生方がそれぞれ担当した生徒の成果物を評価し、最も高いスコアをつけた作品を代表に選出する以上、対策を講じなければ、先生間で評価の観点や規準に、大なり小なりばらつきが生じます。
これでは、成果発表会が担う「次年度に向けたモデルの提示」という機能が歪められ、きちんと働かなくなってしまいます。
探究活動の入り口では、ガイダンスを行ったり、手引きを配布したりしたはず。探究のフェイズが進むたびに、生徒に対する事前指導や、先生方の目線合わせも行ってきたはずです。
そこで生徒に示したものに立ち返り、評価の観点と規準を改めてシェアし直し、必要なアップデートを施してから選考に臨むべきと考えます。
各ゼミ等で代表に選出しようとしている作品は、それを選定する理由を文字に起こしたものを添えて、選考のための協議に持ち寄り、理由の合理性を確かめ合ってから、最終決定に進むようにしましょう。
選考を、担当の先生それぞれに一任するというのは、一見すると、個々の判断を尊重するようにも見えますが、状況によっては「組織でシェアすべき如上の責任」を個人に押し付けることかもしれません。
❏ 選定理由を言語化することで改善課題が見えてくる
発表者や代表作品を選ぶときは、「予選」における発表のクオリティや探究テーマの独創性などに目が行きがちですが、「評価すべき取り組みの抽出」「後輩学年に対するモデルの提示」という目的を満たすには、探究活動をどう評価すべきかにしっかりと立ち返る必要があります。
探究の各フェイズで、きちんとプロセスを踏んできたか、探究を進める中で、問いがどう進化したか(更新されたか)に目を向けましょう。
どんな評価観点を設け得るかについては、別稿「探究活動の指導に評価を実装」で考えるところを書き起こしました。併せてご参照ください。
選考段階でのプロセスを辿った評価には、経過記録が残されていることが要件です。(cf. 探究活動と進路指導でポートフォリオに残すログ)
選定理由を言語化する工程は、どのような観点で生徒の活動や作品を評価しているかを、自分自身で客観的に捉え直す絶好の機会です。指導における主眼を教員間で共有するためにも欠かせません。
他教員の選定理由に触れることで、新たな着眼点を得ることも、それまでの自分の見方に改めるべき点があったことに気づくこともあります。
こうした担当者間の相互啓発が働かなければ、探究活動の指導スキルの獲得や評価眼の磨き上げは遅れるばかりではないでしょうか。
❏ 探究活動を評価するルーブリックは整っているか
指導を担当した生徒の作品を評価するときに、担当者間で共有した評価の観点と規準が必要である以上、ルーブリック様式(観点毎に段階的な到達規準を配列したもの)にまとめておくのが好適かと思います。
評価基準は使いながらブラッシュアップで書いた通り、ルーブリックは実際に使う中で改善を重ねるべきもの。作って終わりではありません。
暫定版が出来上がったら、実際に指導の場におろして、生徒の活動と成果の評価に使いながら、規準に朱入れを行い、観点を整理しながら、少しずつ/継続的に、より良いものに作り上げていきましょう。
評価規準の文言を頭に浮かべながら生徒の行動を観察していると、その中に「好ましい学習者行動をもっと良く表現する新たな文言」に思い当たることもあります。完成度が高まるまで使わないでいると、そうした気づきも得られず、評価基準の完成は一向に近づきません。
❏ 適切な評価・選定で、探究活動の成果を確かなものに
探究活動のプロセスにおいて、各フェイズできちんと方向を示すとともに、評価とフィードバックを行ってきたら、発表に至るタイミングでは生徒も「探究活動の評価基準」をある程度まで理解しているはずです。
その成果(学び)を活かし、成果発表会に登壇する代表者(作品)を選び出す工程に、生徒を参加させてみても良いのではないでしょうか。
良いものを選び出す工程で、自分の取り組みとその成果に足りなかったものに気づけば、(作品の作り直し、探究活動のやり直しの時間は残っていなくても)卒業後/進学後に活かせる学びになり得ます。
審査(選考)を先生方の間に閉じて行うと、その過程は生徒の視点ではある種のブラックボックス。その外にいても学びにはなりません。
多忙な学校生活の中で、協議(直接的な対話)の場を設けるのは容易ではないでしょうが、候補作品をクラウド上で見て、良いと思うものを選ばせ、どのような理由で高く評価するかを言語化(投稿)させるだけなら、どうにか実現できるかもしれません。
投稿を生徒間でシェアする(クラウド上で互いに読む)だけでも、それまでの自分の捉え方を相対化する機会になるはず。その中で探究活動が求めるものをより深く認識していくことができそうです。
仮に高校での探究活動が時間切れなどの理由で上手くいかなかったとしても、最終局面できちんとした振り返りができれば、卒業後の様々な場面(学業や研究、社会活動)における土台は築けます。
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