板書の技術、教具の使い方

授業動画をAIで振り返る~授業改善への課題形成

別稿「自分撮りのススメ~自分の授業を客観的にみる」では、ご自身の授業技術を捉え直すための「自撮り」をお奨めしましたが、技術の進歩で、改善への課題形成に生成AIを用いるのも容易になってきました。現時点では、動画をそのまま読み込ませるのではなく、「文字起こし」を経て、音声認識の誤りを修正した後に、テクストとしてAIに渡す形になりますが、相応の精度で「改善案のたたき台」を整えてくれます。学校現場で広く使…

AIの答えをどう疑わせるか(教室での指導)

AIとの対話が教室に持ち込む、思考の新しい課題 生成AIの利用が既に日常となる中、「AIの出力を鵜呑みにしない、きちんと疑う」という言葉は、教育の現場でも広く共有されています。次期学習指導要領の議論においても、情報リテラシー教育の重要性は、これまで以上に強調されるようになりました。ここで少し立ち止まって考える必要があるのは、「疑う」とは具体的にどういうことなのか――先生方ご自身の利用でも、生徒に対…

板書の技術、教具の使い方

1 板書の技術 2 学びを軸にICT活用を考える 3 板書が支える、主体的で対話的な学び 4 学びの個別最適化、非対面環境での学習指導 5 道具の変化と書くことの意味(教育のデジタル化) 6 知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得 7 板書の技術、教具の使い方に関するその他の記事

板書に残すもの(後編)

前編では、「板書は、思考のプロセスを可視化し、学びを組み立てるために行うもの」という基本的な立場から、黒板に何を書きだし、生徒のノートに何をどう残させていくかについて考えてみました。生徒のノートに残ったものは、「結論とプロセス」×「板書したものと生徒が自ら書き込んだもの」で区分した「4つの象限」のいずれかに分類できます。その割合を捉え、「生徒が自分の思考を言語化し、学びの自己編集ができる」ことを目…

板書に残すもの(前編)

板書は、単に黒板に情報を書き出す行為ではありません。発問を起点とする対話を重ねながら、生徒の思考を引き出し、そのプロセスを可視化し、学びを組み立てていくために行うものです。学びをどう設計するかによって、板書のあり方は大きく変わってくるということです。黒板に書き残されたものを分類してその割合を観察してみると、授業設計(学ばせ方)の特徴が見えてくることがあります。説明などを経て最終的に導かれた「答え」…

黒板を写すと活動が低下?

昔からよく言われることに、「板書を増やすと、生徒は写すことばかりに気を取られ、学びの姿勢が受け身になる」というのがあります。この指摘には納得できる部分もなくはありませんが、「板書が多いこと自体が思考を妨げる」というのは短絡的に過ぎるのではないでしょうか。 受け身の姿勢が強調されたり、自ら考えようとしなくなったりする要因は、板書の多さではなく、板書の仕方、板書に至るまでの進め方にあると思います。実際…

スライドや板書案を作り込んでおくだけでは…

板書(スライドを含む)や資料が整う度合いと、説明や指示のわかりやすさは非常に強く連動します。実際のデータ(生徒による授業評価アンケートでの「板書や資料」と「指示と説明」の2項目の換算得点[授業別集計])に照らしても、両者の間には 強い相関が観測されます。  板書や資料: 板書やプリントは見やすく整理され、後で見てもわかりやすい。  指示と説明: 先生の説明はよくわかり、指示にとまどうこともない。 …

板書の技術 #INDEX

板書は、単に黒板に情報を書き出す行為ではなく、生徒の学びを組み立てるために行うもの。学びをどう設計するかによって、板書のあり方は大きく違ったものになり得るということです。また、口頭による説明は情報が瞬時に消え、複雑な構造を伝えることも苦手。板書はその弱点を補い、学習内容を生徒の視野に固定し、二次元平面に構造化することで、知識の形成と理解の定着を支えます。板書の真価は、完成した情報を見せることではな…

板書の技術(その7)

生徒の学習活動を視点に考える板書のあり様 本シリーズのタイトルは「板書の技術」ですが、ここまでに触れたことの中には、いわゆる「板書のテクニック」とはイメージの異なるものが多く含まれます。これは、黒板が単なる伝達/情報提示のための道具ではなく、学びの設計の一環であることを示しています。最終回では、生徒の側での学習活動まで視点を広げ、効果的、且つ弊害が出にくい「板書のあり様」について改めて考えてみたい…

板書の技術(その6)

板書を補完するツールとしてのプリント 板書に加えて/代えて、多彩なプリントを駆使して効果的な授業を展開している先生もたくさんおられる一方、「不用意なプリント使用」が学びを浅いもの、断片化したものにするリスクもあります。板書の技術というシリーズですが、本稿では、板書を補完するツールとしてのプリント教材について考えてみたいと思います。プリント教材には様々なものがありますが、その「機能」に着目すると以下…

板書の技術(その5)

生徒のノートにどう残るかをイメージして 板書はその場の用を果たせば「消される」のが常ですが、生徒のノートに書き写されたものはその後もずっと残ります。板書のスタイルに年間を通してある程度まで統一したものがないと、表記のバラつきは、あとで生徒がノートを見直したときのわかりにくさの原因になります。書籍を読んでいても、章ごとに組版の方式や表現が異なっていたら読みにくくて仕方ないはずです。不整合に気を取られ…

板書の技術(その4)

板書を使った振り返りと、「写すだけ」にさせない工夫 学習活動を経てひと通り学び終えた段階での「振り返り」は、そこまでに得たものをまとめ直し、学びとして再構成する上で重要な工程です。このフェイズでも、板書は有効な「道具」になり得ます。導入から展開までに描き上げていた板書を辿り直しつつ、要所を問い掛けで確認しながら、生徒が得た理解や気づきを言語化して加筆していきましょう。また、本稿の後半では、生徒が板…

板書の技術(その3)

授業展開の各場面での板書とそこで学ばせるもの 前々稿、前稿と、「深く確かな学び」の実現に板書が欠かせないことや適切な板書がもたらす副次的な効果について考えてきましたが、今回は導入、展開、振り返り、拡張という授業展開の各フェイズにおける板書の有効な活用について考えてみようと思います。板書を整えるだけで授業が成立するわけではありませんが、上手に使うと中々の効果があるのが板書だと、起草しながら改めて感じ…

板書の技術(その2)

伝えるべきものを効率的、且つ確実に伝えるために 知識や理解を形成することは、「考えるための道具」を揃えることであり、それらを用いる「思考や判断」「課題の形成と解決」の土台を作ることに外ならず、決してないがしろにはできません。しかしながら、学習内容を学ぶと同時に、様々な能力や資質を獲得するための学習活動にもしっかり取り組ませようとすれば、知識の伝達、理解の形成に当てられる時間は、自ずと相対的に減少し…

板書の技術(その1)

深く確かな学びの実現に適切な板書は不可欠 チョーク(板書)とトーク(講義)で知識を付与するだけでは主体的・対話的で深い学びの実現は困難ですし、21世紀型能力を獲得させるにも十分とは言えませんが、それでも黒板/ホワイトボード(電子黒板や電子会議の「ホワイトボード」なども含みます)を効果的に使うことは、学びの成果を大きくする上で欠かせません。以下のような場面では、黒板/ホワイトボードを効果的に利用しな…

新しい道具は、思考法や行動様式も変える

この記事を初めて公開した頃は、デジタル機器の普及による、調べる、整理する、伝えるといった部分での行動変化や、思考の補助でのアプリ活用などに着目していましたが、ここ数年で起きた変化はその延長線上を大きくはみ出し、当時の想像をはるかに超えるものでした。道具が変われば、人の行動は変わるというのは、当時も今も変わりませんが、生成AIの登場と急速な普及は、思考法や学び方、さらには「何を人が担うべきか」という…

AIを使いながら鍛える「思考の力」と「判断の軸」

生成AIを効果的に活用するには、押さえておくべき勘所があります。ただ闇雲に使っても、欲しい解答が得られないばかりか、「尤もらしいだけで根拠に欠く答え」で仕事の邪魔をされることも多々です。AIの出力の妥当性を判断するには、使う側(=ユーザー、人間)にも知識と思考力が必要です。便利さにかまけてAIに頼ってばかりでは、人間本来の強みを鍛えられず、AIを上手に使えなくなります。下表に示すSWOT(強み、弱…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得 #INDEX

科学の進歩や社会の変化で、知識は絶え間なく更新されていきます。今日までの正解が、明日も正解とは限りません。教わったことを覚えていても、知識の拡充と更新が行えなければ、知識と発想の不足や古さが、正しい選択(=より良く生きること)を妨げるリスクが膨らみます。知識は思考の道具であり、しっかり拡充を図る必要がありますが、知識付与の効率を優先するあまり「情報を集めて整理し、知に編む工程」を生徒に体験させない…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その4)

効率化を迫る「時間不足」に3方向からアプローチ 前稿では、問い掛けを重ねつつ黒板上で情報を構造化してみせる中で、生徒に「情報整理のプロセス」を学ばせることをご提案いたしました。これにより、知識の拡充と、情報整理手法の獲得という「両面作戦」にも、ある程度の見込みが立ちました。整理・構造化の方法を学んでおけば、知識の断片化が進んだり、丸暗記に頼るリスクも減るはずです。しかしながら、蛍光ペンやサブノート…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その3)

問い掛けで気づかせつつ、板書で構造化を体験させる 蛍光ペンでのマークアップやサブノート式のプリントが内包する問題点と、その悪影響を抑える工夫について考えたのが前稿、前々稿です。今回は「問い掛けで気づきを促しつつ、黒板上で情報を構造化していく」ことを軸にした、別のアプローチをご提案いたします。狙うところは、問い掛けることで、観察に焦点を与え、そこでの気づきを言語化させていくこと、加えて読み取った情報…