より良い授業の実現を図るには、習ったことを使ってみる機会(=獲得した知識や理解に生きて働く場を与える問いや課題)をしっかり用意する必要があり、それを軸に学習活動(調べる、考える、話し合う、まとめる)を配列することで授業をデザインしていくことになります。
本時/単元の学びを俯瞰し得る問い(ターゲット設問)や課題は、学習目標の理解や学びの仕上げにも不可欠です。出題研究で集めた良問や、先生方ご自身が作り上げた問いやタスクは、教科内でしっかり共有し、ブラッシュアップしながら年度を跨いで継承していきたいところです。
好適な問いや課題が用意できたら、それらが授業デザインの中で効果的に使えているかも、別稿でご紹介したような方法で絶えず確かめ、使い方の改善も先生方の協働で積み重ねていきたいところです。

本稿の内容をChatGPTでイラストにしました。クリックで拡大します。
2019/09/04 公開の記事をアップデートしました。
❏ 問いや課題は、授業デザインの要で、議論も進めやすい
より良い授業の実現に向けた指導法の研究は、様々な場で行われています。まさに、先生方の知恵と発想を持ち寄った対話と協働と言えます。
そこで議題になることが多いのは、「どのように授業を進めるか」ですが、授業という「時間の流れ」の中で起きていることは、議論と修正が容易な「固定された形」に書き出しにくく、議事を反映して修正を加えたり、その結果(効果)を想定したりするのも容易ではありません。
また、深く確かな学びを実現するには、「適切な学習目標の設定」「理解の形成と確認」「授業内に作る対話」など様々な要件を満たさなければなりませんが、どこから議論を進めていくにも、各要件が互いに影響し合うため、話が拡散して、まとまりがつきにくくなりがちです。
こうした難しさを避けるには、どこかに議論の起点をきちんと構え、そこを固めてから他の領域に議事を拡張していくという手順を採りたいもの。その起点として最も好適なのは「習ったことを使ってみる機会」としての問いや課題でしょう。
適切な問いを、本時のターゲットとして設定すれば、授業のデザイン/活動の配列も自ずと決まってくるのは、以下の別稿で触れた通りです。
問いや課題は、紙の上で容易に固定できるため、話し合いの参加者全員で確実にシェアできます。事前に配布して所感を整理しておくのも可能でしょう。議論の中で生じた修正点などもその場で書き込めますので、修正後のものを再びシェアして次の議論に付すのも容易なはずです。
❏ ターゲット(設問)を先に決めることで議論が活性化
授業を通して、あるいは単元の学習を通して生徒に自ら答えを導けるようになってもらいたい問い(=ターゲット設問)を決めてしまえば、
- その問いに答えを導くのに必要な知識・理解、着想・視点は何か
- それらをどんな学習活動(調べる、話し合うなど)で獲得させるか
- どのタイミング、手順で問いを提示し、学習目標の理解に役立てるか
- 採点にはどのような観点を設け、どんな規準で評価するか
といった観点での議論へと進めることができます。ターゲットが決まっている以上、不必要に議論が拡散し、方向を失うリスクも小さいはず。
問いにきちんとした答えを導かせようと思えば、教科書や副教材に載っているものだけでは情報が足りないこともあるでしょう。それを補うためにどんな資料を用意すべきかも、先生方が発想と知識を持ち寄ることで、より良い解が見つかるはずです。
また、どんなに優れた問いでも、生徒側に「自分事として捉える素地」が整っていないと、問いへの能動的な関わりは生まれません。準備学習や素地を整えるための仕掛けについてもしっかり考えていきましょう。cf. ボールを投げるのはミットを構えさせてから
授業内の活動(アクティビティ)にしても、先生方が持っている手札を持ち寄れば、ぴったりくるものが見つかりやすくなりそうです。
議論を進める中で「こんな情報も得られる、こんな気づきもあるはずだから、ここまで踏み込ませたい」といったアイデアが出てきたら、それを問い自体に組み入れて「より良い問い」に更新していきましょう。こうしたブラッシュアップが、「問いの性能」を高めていきます。
❏ まずはターゲット設問の候補を持ち寄るところから
ターゲット設問は、教科書や副教材に載っているものでも良いでしょうし、先生方がそれぞれに進めた入試問題の出題研究の成果の中から持ち寄ることもできます。
また、過年度の授業で用いて、手応えのあったものから引っ張ってくることも忘れないようにしたいものです。効果的な設問や課題をきちんと継承してブラッシュアップすることが継続的な授業改善に直結します。
ある年度の指導で大きな成果を得たのに、次年度の生徒はその恩恵にあずかれないというのは不合理。授業評価アンケートの【活用機会】「習ったことを使ってみる機会」の評価で、大きな後退があったとしたら、前年度の成果がきちんと継承されていなかったということです。
中には、新たな挑戦として従来と違ったタイプのターゲット設問を試した結果、上手く行かなかったケースもあるでしょうが、それを授業で使う場面のシミュレーションが不足していたのかもしれません。
新たな挑戦にこそ、協働による先生方の知恵と発想の交換が必要です。紙の上に固定した問い/課題を前にワイワイやりましょう。
難易度の調整も、ターゲット設問の出し入れや修正(分割や追加)で行うのが好適です。cf. 知識活用機会としての課題付与と難易度調整
■関連記事:
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- 学習目標は解くべき課題で示す
- 解くべき課題で「何のために学んでいるか」を伝える
- 習ったことを使ってみる機会
- 入試問題を授業の教材に使うときに
- 問いをテーマに授業を考える(まとめページ)
話し合いの中で授業の新しいイメージが膨らんだら、そこに先生が最善と考えるアレンジを施して、実際の教室で試してみましょう。その効果を再び持ち寄って比較を行い、最も効果的と思われる方法を選び、ブラッシュアップを重ねることが肝要です。以下の拙稿もご参照ください。
ご担当先生が一人だけの教科の場合、校内でのディスカッションはできませんが、校外での研修会などで知り合った同じ教科の先生方とSNSなどを介して協働を始めておられる先生もいらっしゃいます。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
