2020年の高大接続改革もいよいよ近づいてきと感じます。新テストに最初に挑む世代もすでに中学3年生。来年は高校に入学してきます。高校の教育成果は3ヵ年の積み上げですから、本年度のうちに対応準備を進めたいところ。
まだ全容が見えているわけではありませんが、現時点で見えているところから、やるべきところをしっかり考えていくべきだと思います。
文科省、大学入試センターからの先週の発表を受けて、考えるところを一連の記事にまとめてみました。
モデル問題(共通テスト)を見て #1国語
「大学入学者共通テスト(仮称)」の国語と数学のモデル問題が公表されました。数回に分けて考えるところをまとめてみます。まずは国語から。
伝統的な題材であった評論や小説ではなく、契約書やガイドライン、提案書といった実用文書を題材にされたことに注目すると、コンピテンシーを発揮すべき場面が、協働による課題解決の場に変化していくもの思われます。そこでの言語活動に重きが移ることを意識して、今後の授業設計・指導立案にあたる必要がありそうです。
問題解決の方略を考案できているかどうか試すだけなら、証明させれば十分な場面で、わざわざ「確かめる方法を式を使って説明させる」という回りくどい訊き方をしています。
背景にある出題の意図は、国語のモデル問題から読み取れるものと同じです。平成36年からの導入になりそうな理科や地歴公民も含め、「協働による課題解決における言語活動、及びそこで求められる思考・判断・表現」は、全教科に共通と考えておくべきと思われます。
新共通テストでは、条件付き論述問題が課されます。モデル問題と併せて採点基準案も公表されました。
特別に難解な基準ではありませんが、大学生を被験者に行ったモニタ実施では採点結果と自己採点の一致率が6割にとどまるなど、基準に照らした答案を評価する力が十分に養えていない可能性が窺えます。
将来的に本格的な論述が始まれば採点ルーブリックも導入されます。基準に照らした答案の相対化を意識した指導が必要になりそうです。
高大接続改革では「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を選抜の基準の1つに据えます。行動観察に基づく定量的評価が求められるとなると、ルーブリック評価の導入が必要になりそうです。
また、志望理由や入学後の学びの計画を示す中、生徒は総合的な学習の時間などでの探究的な学習の成果を提出書類や面談で表現しなければなりません。生徒が本気で取り組める探究学習プロフラムと評価方法の確立は喫緊の課題です。
■関連記事(以前の記事です)
- 次期学習指導要領改訂スケジュール
- 学力の三要素とは~もう一度考えてみました
- 評価方法の再整備~高大接続答申から
- 高大接続改革に向けて今できる準備(その1)
- 高大接続改革に向けて今できる準備(その2)
- 大学入学共通テストにおける問題作成の方向性から
- 新テスト対応にも探究活動は土台となる
- 高大接続改革と定期考査問題
モデル問題でクローズアップされた、「共通テストが求める学力」 については、こちらにまとめた記事もご参考になるかもしれません。
授業そのものを改めるだけでなく、その根幹を作る考査問題の改善も待ったなしの課題です。考査問題を改めることで授業自体も変わります。