知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得 #INDEX

科学の進歩や社会の変化で、現在の知識は絶え間なく更新されていきます。与えられた知識を覚えるだけでは、知識のアップデートもできず、時代遅れの知識と発想で正しい選択ができなくなります。
教室の学びを通して身につけるべきは、単元固有の知識・理解だけでなく、「情報を整理して理解する/情報を集めて知に編む方法」です。
うっかりすると、知識付与の効率を高めるばかりに、生徒が自ら行うべきことを、教える側が肩代わりしてしまっていることもありそうです。
マーカーで大事なところを拾い上げ、サブノート式のプリントで穴を埋めていくだけでは事足りない部分。それを埋めるための方策を考えてみたいと思います。
問い掛けで生徒の気づきを促し、確認したことを描きだしていく板書には「情報整理の過程を生徒自身に経験させる」という機能があります。
教科書に記載されている事柄を、一つひとつ問いながら、重要な情報を拾い上げ、それを全体の流れに組み込んでいくプロセスを、生徒の眼前で展開して見せることが大切です。
別稿「単元で学んだことの体系化に挑ませる」に関連して、本シリーズ「知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得」を全面リライトしました。

2015/01/26 公開のインデックスを再アップデートしました。

1. 知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その1)

参考書や教科書にマーカーで色を塗らせるだけでは…
お手軽&省エネが、記銘の効果を弱くする
マークアップは、重要度より情報のカテゴリーを基準に
最初のうちは、板書でしっかりモデルを示す
情報を分類する視点とスキルの涵養は指導目標の一つ

2. 知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その2)

空所を残したサブノート式に仕立ててみると?
生徒自身でテクストに当たらせ、空所を埋めさせる
埋めるべき空所を増やすほど、着眼点が散漫に
仕組みを理解する「つなぎ」の部分を軽視させない
空所補充の弱点を補う、記述・論述タイプの課題

3. 知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その3)

問い掛けと板書で、情報整理のプロセスを学ばせる
対話をしながら、ポイントをピックアップ
分解と再構成のプロセスも対話を行う中で
フレームが完成したら、パーツは生徒に埋めさせる
教科学習指導で図るべき、情報整理のスキル獲得

4. 知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その4)

知識の拡充範囲をやみくもに広げない
ICT機器を使って伝達の効率化
効率化に走って学びを薄くしないことが肝心
プリント・スライドの共有で図る、授業準備の効率化
あれこれ考える前にまずは使ってみる

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アップデートに伴う追記:
知識を体系化するには、その前提として知識を獲得・拡充する必要があるのは言うまでもないこと。パーツがなければ整理も何もありません。
また、体系化の前には情報を分類・整理する必要もあります。
生徒はこれらを自ら十分に経験して、その方法をしっかり身につけつつあるでしょうか。
知識の拡充を図り、整理をつけて体系に編む工程を、授業の中で経験させ、学ばせていくことも大切な指導目標の一つです。
言語情報を分解し、体系化されたフレームの中に再配置してみたり(分解と再構成)、すべての情報を上手に配置できるフレームを考案したりする方法を学ばせていきましょう。
生徒に体験させるべきところをうっかり先生が肩代わりしては、生徒はせっかくのチャンスを失ってしまいます。
教科書や参考書のどこをマークアップさせるかを考えたり、サブノート式のプリントを編集する中で、先生方は情報の評価(重要度の判定)や構造化・関連付けなどを、生徒の見えないところで行っています。
見えないところで行われたことは学びようもないはず。先生がプリント作りに多くの時間とエネルギーをかけたことで、生徒から貴重な学びを奪ってしまう結果になっている可能性も考えてみなければなりません。
結果だけ与えて、「さあ、あとは覚えてね」 というのでは、生徒は大事なところ(学びの方策)を学んでいないことになりそうです。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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