進路意識形成を支える指導

調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり

探究活動や課題研究のプログラムを作って導入し、生徒に取り組ませるとき、「何を目的とする活動か」という根源の問いに先生方がどのような答えを共有しているかはとても大事なことだと思います。探究活動には様々な役割がありますが、以下の2つは他の活動での代替は困難です。 指導に当たる中、「調べ学習」で終わっている生徒、そこにも到達していない「検索&コピペ作業」だけで調べ終えた気になっている生徒を見過ごしてしま…

自分事としての目標か~達成への行動を考える前に

進路希望なり、将来の夢なり、目標となるものを決めたら、それを達成するためにクリアすべき課題が何かを洗い出し、その一つひとつにどう取り組んでいくかを考えていく必要があるのは言うまでもありません。目標達成の要件/課題を正しく捉え、それを充足するための行動を持ち時間の中に効率よく配列しておかないと、無駄なことに時間を費やしたり、肝心なことが意識から漏れて手付かずになったりしがちです。最上級生となる3年生…

目標を持った状態で巣立たせる

全国各地の学校が「特色ある学校づくり」にこれだけ意欲的に取り組む中、実現を目指す教育の価値やその成果を示す指標には、もっと様々なものがあって良いのではないかと感じます。例えば、卒業に臨んで「私はどうしてこの進路を選んだ、この道でこんなことをしてみたい」との思いをしっかり抱き、言葉にできる生徒の割合などは、その一つになり得るはずです。進学を志す生徒には、総合型選抜の拡充に伴い、志望理由書や学修計画書…

進路意識形成を支える指導

1 興味を追いかけ、しなやかに選択を重ねる 1.1 キャリアは選ぶものではなく重ねるもの ★ ・最短の進路がベストにあらず1.2 ゴールを決めて最短距離?(全3編)1.3 カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思うところ1.4 進路を選択する中での「自分を知る」をどう考えるか ★1.5 調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり 進路希望を作る指導[進路意識形成](まとめページ) 2 進路指…

進路関連行事に向けた企画・準備・事前指導

キャリア教育への注力や高大連携の強化といった流れの中で、進路意識形成を目的とする、外部から講師やファシリテーターを招いての講演会やワークショップが増えているように思います。見学をさせていただく度にたいへん勉強になりますが、「あれっ?」と疑問を感じることも少なくありません。例えば、こんな感じです。 こうした場面を目にすると、せっかく手間と時間をかけて設けた指導の機会を存分に活かしきれていないことに勿…

行事にじっくり向き合える、忙しすぎない学校生活

各地の学校で教育活動の拡充が進んでいます。新課程で導入された「総合的な探究の時間」のプログラムに加え、「21世紀型能力の実践力」の涵養を目指す進路/キャリアに関する多様な学びが整ってきました。そんな中、生徒が3年間/6年間で経験する行事は、当然ながらその数を増やし、一つひとつの行事にじっくりと向き合うことが難しくなってきているようにも感じます。進路関連の行事や成果発表会なども、準備を整えてじっくり…

進路行事としてのワークショップ

別稿「進路講演などに向けた事前指導」では、進路講演などのイベントでの成果をより確かなものにする事前の準備について考えました。進路指導関連行事の形式でも、従来からよく見られる「講演タイプ」に加え、新たに「ワークショップ型」が導入されるケースも増えており、ファシリテーターには外部の人材活用も少なくありません。 こうした変化の中、準備や行事内の活動への取り組ませ方などにも従来と違ったものが求められていま…

進路講演などに向けた事前指導

外部から講師を呼んで行う進路講演は、普段聞けない話に見聞を広げることで新たな世界の見方を知る、生徒にとって大切な成長の機会の一つですが、何の準備もなくただ話を聞かせるだけでは効果は限定的です。前もって講演のテーマについて、調べたり、考えたりする「事前学習」の機会を設けることで、講演からの学びは大きく膨らみます。多忙な日常の中で、生徒も先生も行事にむけた事前準備などにそうそう時間を当てられないという…

目標を見つける入り口~日々の学びでの興味・関心

目標を持った状態で巣立たせるには、日々の学びの中に興味や関心を見つけてもらうことがスタートです。興味は自力で考え工夫して達成したこと(=できるようになったこと)の中に生まれ、関心は「自分事」として認識できる課題に触れて芽生えてきます。せっかく生まれた興味・関心もそのままにしては、深化・拡張することなく埋もれてしまいます。機を逃すことなく、探究的な学びで興味を掘り下げ、関わりの視野を広げることで、「…

選択した結果を正解にするのは「これからの行動」

生徒に限らず「選択」を迫られる場に臨めば、誰しも「本当にこの選択で良いのか、正解なのか」と悩むものかと思います。その選択が大きな分岐になり得るほど、悩みは深く、大きなものになっていきます。進路を選ぶところに来てもなお、まったく悩みなしという生徒は、よく考えていないだけかもしれません。将来を真剣に考えれば考えるほど、集めてきた情報の中に多くの選択肢を見つけ、悩みは膨らみます。選択に悩んでいる生徒には…

進路意識の高揚を目的とした講演会の企画

進路意識の高揚を図ることを目的に、生徒が目標としている大学に進んだ卒業生や、その大学の入試広報担当者を招いて講演会を実施することがありますが、せっかくの企画も単発のイベントに終わってしまい、継続的な効果をもたらしていないケースも少なくありません。進路行事が、継続性のある進路意識の高揚や受験生としての個人/集団レベルでの成長という所期の目的を達するには、 といったことを十分に意識した上での企画・運営…

志望理由を言葉にしてみる~ゼロ学期の始まりに

ゼロ学期を目前に、いよいよ最上級生となる高2生は、先輩たちの受験生としての日々を間近に見ながら、自らの進路希望の実現という大きな挑戦を強く意識し始めているかと思います。ゴールまでの最長14か月に亘る長期戦のスタートをどう切るかは、結果とともにその過程での成長の度合いも大きく変えるのではないでしょうか。 2016/03/25 公開の記事を再アップデートしました。 旧タイトル: 志望理由を書いて選択に…

卒業を前に改めて考える、大学に進んで学ぶ理由

年末を迎え、総合型選抜で受験した生徒の合格の知らせが既に届き始めていることかと思います。学校推薦型選抜の結果もいよいよです。生徒が進路希望を叶えて進路を決めたのは喜ばしいことですが、生徒一人ひとりが「なぜ大学に進んで学ぶのか」という問いに自分の答えを持っているか、この局面でこそ確かめてみるべきではないかと思います。大学・学部を選ぶときは「大学で何を学ぶか」が焦点ですが、進学先が決まった生徒には「何…

現2年、現1年に対する、進級を見据えたゼロ学期指導

別稿「ゼロ学期を迎えるに当たり~指導計画作りへの下準備」では、新年度を迎えるために行う教員組織内の業務に焦点を当てましたが、もう一つ忘れてはいけないのは、進級を控える生徒(現2年、現1年)に対する「新年度に向けた準備を整えさせる指導」です。春を迎えて最上級生となる現2年生は、来年度の履修科目選択の希望を提出したことで「受験生」になる第一歩を踏み出したことになります。ここで歩を止めさせず、二歩め、三…

進路を選択する中での「自分を知る」をどう考えるか

進路指導計画は大きく分けて進路意識を形成する過程と進路希望を具体化し実現する過程とがありますが、前者の中に配置されているのが「自分を知る」ことをテーマにしたセクションです。呼び方は学校によって様々ですが、職業や社会を知ること、大学(学部・学科)や学問を知ることとともに3ヵ年/6ヵ年の計画に何らかの形で配列されています。 2019/11/18 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 知るべき「自分」…

進路希望を作るまでの活動を確かめる#INDEX

生徒一人ひとりの進路希望を把握することは大切ですが、それ以上に着目すべきは、進路意識を形成し、進路希望を具体化するまでに生徒一人ひとりが踏むべきプロセスをきちんと踏んでいるかどうかを確かめることではないでしょうか。「自らの選択の結果に向き合える状態」に生徒を導くことは大切であり、そのためにも如上の確認は欠かせません。進路希望調査を行うときの注意、大学選びの前に行う学部・学科研究の新しいアプローチ、…

進路意識形成について意識を質し、内省を促す

前回、前々回と、進路希望調査を行うときに注意したいことや、学問の細分化と学際の拡大とで進路希望を作るのに文理選択から学部・学科を絞っていくというこれまでの手法に限界があることについて考えるところをまとめてみました。改めて考える機会を持ってみて、進路希望を作ること自体が、以前に比べてとても難しくなっているのだと強く感じています。 2017/04/12 公開の記事をアップデートしました。 進路希望を作…

学部・学科調べに、学問探究という入り口も

前稿で、進路希望を調べるとき、その希望が生まれる前の段階の確認も併せて行うことが大事だと書きましたが、大学を選ぶのが先か、学部や学科を選ぶのが先かと言えば、当然ながら、後者が先です。学部・学科名が挙がらないうちに、大学名が出てくるのは、どう考えてもおかしな話です。自分の興味を満たしてくれる学部、学んでみたいことをきちんと学べる学科を探すことが先決なのは自明でしょう。その学科を設置している大学をピッ…

進路希望を調べるときは、前段階の確認も併せて

生徒の進路希望を調べる場合、調査票を配って、国公立か私立か、理系か文系かなど、現時点での希望を尋ねたり、大学名や学部・学科を挙げさせるのがよく見かけるやり方ですが、不用意な訊き方をすると、選択までの過程に潜んでいる問題を見落とし、後になって思わぬ弊害が生じます。進路希望調査の実施にも「押さえるべきポイント」があります。 2017/04/10 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 選択の結果を訊く…

履修科目選択と進路希望調査(志望理由の確認)

11月も半ばを迎え、高校2年生は3年時の履修科目選択に頭を悩ませている頃かと思います。1年生も2年での文理選択が迫ります。履修科目/文理を選択させるに当たり、生徒の希望を調査するだけでは指導が完結しないのは言うまでもありません。生徒一人ひとりの状況を確認し、より好ましい選択に向かわせる必要があります。何となくの選択では、その先に一人ひとりの志向や資質に見合った未来が待っている可能性は下がるばかりだ…