進路意識形成を支える指導

探究型学習を使った進路指導 #INDEX

探究型学習を通して、深めてみたいと思える興味や、自ら関わりを持ちたいと思える社会の課題を見つけ、それを起点にして具体的な進路希望を作っていく生徒がいます。あるテーマを広く調べ、考察を深めていく中で、上級学校に進んで本格的に学んでみたいと思えることを見つける可能性は低くないはずです。別稿「カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思うところ」にも書いた通り、職業をターゲットにして逆算的に作ったルートに乗…

社会が取り組む課題を軸にした学部・学科研究

この記事を最初に起こしたのは2014年の秋です。その直前、お誘いをいただいて、「都立高校生のための多摩地区国公立大学合同説明会」というイベントを参観する機会を得ました。土曜日の午後ということもあって、会場は300人を超える国公立大学を目指す都立高校生で熱気に溢れていたのを覚えています。各大学とも「志願者を増やす絶好のチャンス」とばかりに様々な趣向を凝らす中、東京農工大学のプレゼンは際立って興味深い…

探究型学習を使った進路指導(その5)

探究型学習を通じて自らの進路希望を作るに至ったA君が、本シリーズの冒頭で登場しましたが、同じプログラムを同じように経験しながら、自分のあり方・生き方と結びつくものを見つけられないまま活動を終える生徒だっています。安易にテーマを設定した、調べ学習を行うところで終わった、探究してみたことの先に広がる学問の世界を覗き見ることができなかったなど、様々な要因でゴール(課題解決に取り組む体験を通し、自己の生き…

探究型学習を使った進路指導(その4)

探究型学習に取り組む経験は、進路意識の形成にも大きな役割を果たします。その最初の難関である「探究テーマの設定」における指導の前半フェイズについて、考えるところをまとめたのが前稿です。テーマ選択を念頭におき、アンテナを高く張った状態で、様々な情報に当たらせて、日々気になったことを書き溜めていき、そのメモの整理・分類を経て、潜在的な興味と関心の所在を探らせるという手順です。しかしながら、メモの分類を終…

探究型学習を使った進路指導(その3)

探究型学習に取り組ませるとき、研究のテーマを決めさせるまでの「準備段階での指導」が大切であるというのが、前稿の主旨です。目指すところ(=課題の解決に取り組む体験を通して、自己の生き方・あり方を見出すこと)をしっかり伝えた上で、正しい準備の工程を踏ませなければ、テーマの候補を挙げさせたところで、ダメ出しをせざるを得なくなるケースもしばしばだと思います。せっかく考えたことを差し戻されては生徒も面白かろ…

探究型学習を使った進路指導(その2)

探究型学習に、これまで行われてきたキャリア教育の代替として十分な機能が期待できるのは、前稿で申し上げた通りですが、最初のフェイズである「探究のテーマ選び」の段階できちんとした指導を行わないと、探究活動と進路指導を一体のものとして運用できません。自分の生き方・あり方を見つけ出せるようなテーマを生徒一人ひとりが設定できてこそ、探究活動は進路意識を形成する機会になり得ます。前稿でご紹介した、探究活動が進…

探究型学習を使った進路指導(その1)

探究型学習を通して、興味を持てる学問・研究や社会の取り組みを見つけ、そこから具体的な進路希望を作っていく生徒がいます。テーマに沿って広く調べ、考察を深めていく中で、学んでみたいこと、研究してみたいことを見つける可能性は低くないはずです。別稿「カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思うところ」にも書いた通り、職業をターゲットにして逆算的に作ったルートに乗せる指導に限界が見える中、キャリア教育を補完す…

キャリアは選ぶものではなく重ねるもの

進学先や就職先を決めるのは、ここから先、自分がどの道を進んでいくのか(=進路)を選択することです。同時に2つ以上の道を歩くことはできませんから、他の選択肢に後ろ髪を引かれる思いがあっても一つを選ぶしかないのが通常です。この意味では「進路選択」というよく使われる言葉の成り立ちは十分に合理的なものだと思います。これとは対照的に、「キャリア」は選ぶものではなく、積み重ねるものです。ある時点で選択した道を…

総合的な探究の時間

新課程への移行で、高校での「総合的な探究の時間」が本格的に始まります。先行実施も行われ、各地の学校で進められてきたプログラム開発や指導法研究は、小さからぬ成果を既に収めています。先行実施で得られた知見を活かして、プログラムのブラッシュアップを図るフェイズを迎えています。個々の先生方が工夫を凝らした実践から優れた成果を得た指導例を抽出し、それを共有した上で先生方の協働でさらに磨き上げていく体制の確立…

進路希望を作る指導[進路意識形成](まとめページ)

生徒の進路希望の実現を支えることは、指導に当たる先生にとって大事な仕事の一つであるのは間違いありませんが、それに先立ってしっかり行うべきは、生徒一人ひとりが明確な理由を持った進路希望を持てるところまで、選択に至るプロセスをきちんと踏ませていくことです。 進路希望を作り上げていく過程で、調べるべきことを調べ尽くしていなかったり、考えるべきところできちんと対象や自分に向き合っていなかったりしたら、作り…

高大連携や進路関連のイベントに外部人材を活用 #INDEX

進路指導やキャリア教育、探究活動など、校外から講師や助言者などを招いて行う行事/イベントは多岐にわたります。研究や実業の場で日々活躍している人との接点は、生徒にとって大きな刺激と啓発を与えてくれますが、そうした人をただ招くだけでは、生徒の成長(考えや行動の変容)に狙った通りの大きな効果が得られるとは限りません。行事やイベントを設定できる日程、開催のチャンスには限りがありますので、貴重な機会の一つひ…

高大連携や進路関連のイベントに外部人材を活用 #3

高大連携や進路関連のイベントには、講演会や成果発表会など以外にもワークショップ形式のものがありますが、近年、主体的・対話的な学びが重視される流れの中で、ワークショップの形式をとるもの(あるいはその要素を含んだもの)の比率が高まってきているように感じます。ここでも、外部から招いた人材をファシリテーターなどに上手に活用すると、教育効果はより大きくなることもありますし、先生方にとっても新たな発想を得て、…

高大連携や進路関連のイベントに外部人材を活用 #2

前稿で取り上げた外部講師による講演以外にも、校外から専門家などを招いて行う生徒向けの行事には、探究活動や課題研究の成果発表会での指導講評などもあります。「総合的な探究の時間」の導入で、その機会は今後ますます増えていくものと思われます。 発表した成果に対する講師からの指導や講評は、これまでに取り組んできたことをきちんと評価してもらうと同時に、これから先の取り組みに方向性を見つけるための貴重な機会。次…

高大連携や進路関連のイベントに外部人材を活用 #1

高大連携や進路関連のイベントは、生徒に大きな刺激と成長のきっかけを与えますが、先生方だけでなく、参加する生徒にとっても貴重な時間を投じるだけに、費用対効果はできるだけ大きくしたいものです。 指導計画全体で目指していた所期の目的を達成するには、イベントが単発のもので「閉じて」はいけません。計画全体の中で明確な位置づけがなされる必要があるはずです。 事前の指導や事後の指導と一体化して、イベントが企画・…

体験学習をただの体験で終わらせない

多くの学校が、生徒に様々な「体験学習」の場を用意しています。農村や里山などを訪ねたり、防災活動などで地域社会に関わったり、各校の教育意図から生まれたプログラムには大きな期待が向けられています。修学旅行や海外研修でも、以前に比べて意図の明確なものが多くなっているのは、先生方もお感じになっておられるところだと思います。しかしながら、実際の運用を拝見する中、せっかくの貴重な体験が生徒にとって有為な学びに…

教室の中で「興味が生まれる瞬間」を体験させる

自分が何に興味を持つか、実際にやってみる/経験してみるまでわからないもの。体験の中に興味が生まれます。全く興味のなかったことにチャレンジせざるを得ない状況におかれ、仕方なくやってみたら面白く、すっかりはまってしまったという経験をお持ちの方も少なくないかと。教室/学校は、生徒の意思に拘わらず、指導計画に基づいて様々なことを生徒に経験させることができる数少ない場です。すべての教科の学習を繋げば、世の中…

探究活動と進路指導でポートフォリオに残すログ

学習の記録(成果のみならず、どのような体験をしたか、そこでどんな考え/内省をもったか)を残していくポートフォリオは、生徒が自分の学習をコントロールする「メタ認知」を養うことを意図して作成するものですが、残されたログは様々な場面で活用されることになります。生徒の指導に様々な立場から関わる先生方が、「ポートフォリオに残されたログをどう活用するのか、そのためにどんなログをどんな形で残すべきか」をしっかり…

大きな分岐を前に整えるべき指導機会

進路を決定するまでのプロセスの中、生徒は大小様々な選択を経て自分の未来を拓いていきますが、ある場面で行った選択は、その後の選択肢の構成を変えてしまいます。選択を間違えたとしても、後戻り/迂回して正しいルートに戻れますがそこには多大なエネルギーを費やすことになります。時間も巻き戻しはできませんので、進路決定までのタイムリミットを超えるリスクのある歩み直しや迂回は、できることなら避けたいのが正直なとこ…

探究活動の目的から考えるテーマ選び

探究活動が目的とするのは、自分を取り巻く世界に、いまだ解明されていないことや解決策が未確立の問題を見つけて、解明や解決に取り組むことを通し、新たな知を創造する方法と姿勢を身につけることに加え、それらの課題に自分はどう向き合うのか/どんな接点で社会に関わっていくのかを考えることにあるのだと思います。 調べたことの先に~新たな知と当事者としての関わり 高大接続改革で募集定員が増えた「総合型選抜入試」に…

先に控える選択の機会をいつ認識させるか

進路指導計画を作るときも、それに基づいて実際の指導を進めていくときも、「先に控える選択の機会」をどのタイミングで生徒に認識させるかは、様々なことを想定して決めていくべき重要事項です。タイミングが早すぎては、今やるべきことに集中しなくなってしまい、その中で得られるはずの成果を逃してしまうリスクを抱えますし、逆に遅すぎれば、準備を十分に整えないまま選択に臨ませてしまい、「とりあえずの選択」でその先の可…