大学入学共通テストの出題研究で持つべき視点

大学入学共通テストから一週間あまりが経過しました。出題分析を終えて、次年度以降の指導の計画を描き始めておられることと存じます。
生徒の進路希望を実現する授業を目指すには、当然ながら、テストへの対策(≒どう学ばせ、解かせるか)を考える必要もありますが、先ずは個々の問題がどんな学力を測っているか正しく捉えるところからです。
入学者選抜という場でわざわざ課した以上、その問題が測定している力は、進学後の学修を支障なく進める上で不可欠なものであるはずです。
そこには、各科目に固有の学習内容(知識や技能)だけでなく、各単元の内容を学ぶことを手段に獲得を図った様々な能力や資質も含まれています。両方に等しく意識を向けて、カリキュラムを最適化しましょう。cf. カリキュラムは{学習内容×能力資質}で設計する

❏ 共通テストの出題群が図ろうとしている能力・資質

大学入学共通テストでは、科目ごとにそれぞれ特徴的な出題が見られますが、通底するのは、探究活動を含めた「日々の学習」を追体験させようとの意図です。(cf. 新テスト対応にも探究活動は土台となる
必要な情報を(自ら)集めて、目の前の課題を解決するのに必要な知に編もうとすれば、多様且つ多量な資料(文章、表、グラフなど)に限られた時間で目を通し、その内容を捉える力が必要なのは当然のこと。
正解を選ぶのに必要としないものも含めて、多量の資料を問題冊子に載せ、目を通すことを受験生に求め、その理解の上に立って、問いに答えさせ(=思考させ)ているのはこのためと考えるのが合理的です。
思考を深め、視野を広げるには、対話による気づきの交換(=対話的な学び)が欠かせませんが、そこで必要な能力を備えているかをテストで試すための苦肉の策が、「会話文を組み込んだ問題」でしょう。
仮説を確かめる方法を考えたり、判断に必要な資料を選び出したり、考えたことを効果的に他者に伝えるためにモデル化を行ったりするのも、正しい学び(+それに基づく正しい選択)を重ねる上で必要な力です。
各教科の学びに加えて、探究活動にしっかり取り組むことで身につく、これらの力を試そうという意図で出題されているのが、「探究の場面を想定した問題」の数々であるのは言うまでもありません。
こうした力は、大学に進学する生徒に限らず、学びと選択の連続である社会生活を送るための土台となるものだと思います。
受験期を迎えて行う「共通テスト対策」の中で、対応のスキルを身に付けさせるというアプローチよりも、入学から卒業まで通した日々の授業の中で、こうした能力や資質(大学に進学しない者も含めた、すべての生徒が身に付けるべきもの)を獲得させるというスタンスが好適です。

❏ 視野を広げて、他教科の出題にも目を通してみる

出題研究というと、大学入学共通テストに限らず、ご自身の担当する科目だけになりがちですが、前述の通り、「教科を跨いで通底するもの」がありますので、それを正しく捉えるには、他教科の問題にも少し目を通してみる(解けなくても大丈夫!)のが好適です。
例えば、科目に固有の知識を持たずとも、問題文を読み解く力さえあれば、正解が選べる設問は、様々な科目の出題の中に見出せます。
巷では、「これは○○(科目)の問題ではない。読解力を試しているだけだ」という批判的と取れるコメントがついたりしているようですが、逆に考えれば、そうした問題が解けないのも困りものかと。
大学に入れば、専門書を読む必要がありますし、授業準備では自力で資料を読んで内容を理解しておかないと、教室に臨んでのディスカッションにも参加できないはず。成績は低空飛行、苦労が目に見えます。
大学に入ってからの学びに耐えうるかを試しているという点において、むしろ「入学者選抜」の主旨に沿う、合理的な設問だと思います。社会生活を送るにも、必要な情報を集めて知に編む必要は至る所にあり、読んで理解し、それに基づき正しく思考する力はどんな人にも必要です。

❏ 出題形式から、「考査問題作りの知見」を得る

新課程が求める学力観や、各科目の学びを手段に獲得させる能力や資質を俯瞰的に捉え直す以外にも、共通テストの出題研究から得られるものがあります。その一つは、考査問題作りにおける新たな手札でしょう。
正しい記述をすべて選ぶ問題、複数の空所に補うものの組み合わせを選ぶ問題は、共通テストに限らず、あちらこちらで見かけます。
こうした問題/選択肢作りは大きな手間が掛かります(今、模試の出題を頼まれても腰が引けます)が、メリットは小さくありません。
単純な択一設問では、選択肢のどこかに正誤を判定する箇所を見つければ答えを選べてしまい、他の部分に不明を抱えている生徒にも同じ点数を与えなければならず、学力を点数に換算する機能に不備が残ります。
かといって、こまごましたところまで独立した設問で理解や知識の有無を試そうとすると、不要に設問を増やすばかりか、配点の原則(=測定項目の重要性∽回答に要する時間∽配点)を崩します。
正しく理解しておいてもらいたいことや、ありがちな誤解をセンテンスに起こして並べ、正しいものをすべて選ばせる形式を採れば、当該項目とその周辺の「穴のない、正しい理解」を「適正な配点」で試せます。
理解を確かめたいことに、幾つかチェックポイントを設け、それぞれに正しい概念や用語と、混同されがちなものを選択肢としてセットするのも、意図は同じ(配点の原則を崩さずに、多角的に理解を試す)です。
定期考査の問題作りでも、「断片的な知識やうろ覚えでの正解」をできるだけ除外し、きちんとわかっている生徒にだけ点数を与えることを目指したいところです。正しい評価(成績付与)は、現在位置を正しく知り、目標への道程を的確に描かせるための前提です。
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大学入学共通テストは、言うまでもなく「大学への進学を志す生徒」に課されるものですが、大学進学以外の道を歩もうとしている生徒にも、高校卒業までに身に付けさせるべき様々な力を試しています。
出題研究に際しては、担当科目に固有の部分だけを注視せず、21世紀型能力の各要素がどう試されているかという視点を広く持ちましょう。
繰り返しになりますが、社会生活は学びと選択の連続であり、共通テストが求めている学力は、卒業後の人生をより良く生きるための基礎となり得るもの。3年間/6年間の指導を通じて、すべての生徒に身に付けさせていきましょう。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一