活動の配列/授業デザイン

カリキュラム全体の中での英語の位置づけと授業デザイン

2030年度以降の学習指導要領について議論が進んでいます。8月31日に示された「審議まとめ」の素案では、AIの飛躍的な発展を受けた情報教育の大幅拡充に焦点の一つが当てられています。 こうした背景を受け、審議では英語を学ぶ意義についても議論が交わされています。生成AIが手軽に、高精度の翻訳を提供する今、英語学習の意義を生徒に説明するのが難しくなっている中、素案では、「言葉、文化、コミュニケーションへ…

活動の配列/授業デザイン

1 問いを軸に授業を設計~学習活動の適切な配列 1.1 教室でしかできない学びを充実~問いを軸に授業を設計 ★ ・学びの場での「問いの活かし方」 ・目標理解と活用機会を整える授業デザイン1.2 学習内容が同じでもアプローチによって学びの質は異なる ★ ・確かな学力を獲得させるための「学習活動の適切な配列」1.3 問いのあり方に焦点を置いた授業研究 ★ ・どんな問いを立てるかで授業デザインは決まる1…

学びの場での「問いの活かし方」

学びの過程で「問い」が担う役割は極めて大きいものです。「思考」は問いに触れて初めて発動するものであり、適切な問いが設定されないところでは、思考力を鍛えることも、評価することもできません。深い(=思考を十分に掘り下げた)学びの実現にも、問いを重ねることが不可欠。「学びの深さ」はどれだけ問いを重ねたかで決まります。また、単元の導入からまとめ(次に向けた新たな起点)に至る、すべてのフェイズで、問いはそれ…

授業立案の手順~初期値を捉え、学びの地図を描く

授業を設計するとき、どうしても「本時で何を理解させるか」「どんな結論に導くか」から考えることになりがちです。もちろん、到達させたい理解を明確にすることは不可欠ですが、そこから逆算するだけでは、学びが十分に立ち上がらない/進まないことがあります。効果的な授業を成立させるには、以下の3つは外せない大前提です。 この記事の内容をChatGPTでイラストにしました。クリックで拡大します。 生徒が何を知って…

教え込むより、生徒に自力で学ばせる

知識・理解の形成を効率よく進めようとすると、調べさせたり、考えさせて気づかせたりすることより、「教える」という方法を選択しがちですが、それでは「自力で物事を理解したり、何かを解き明かしたりする力」を獲得する機会を生徒から奪ってしまいかねません。下図を見ると、横軸と縦軸の値が等しくなるところに引いた基準線(赤い破線)の上側に位置する、{指示と説明(=わかりやすさ)<学習効果}の授業、即ち「指示と説明…

伝達スキルと授業デザイン

新しい学力観に沿った学ばせ方を実現し、「生きる力」としての能力や資質を不足なく育むには、獲得した知識や技能を生きて働かせるための課題解決や、それらに取り組む対話や協働といった学習活動をきちんと配列した「授業デザイン」が不可欠なのは言うまでもありません。しかしながら、その一方では、伝わりやすい話し方、指示や説明の組み立て、効果的な板書といった「伝達スキル」の完成度が、授業の成否を大きく分ける要因であ…

学びの個別最適化/複線化、拡張(まとめページ)

学びの個別化、複線的ハードル、学びの拡張といった考え方に通底するのは、教室を学びのコミュニティとして十分に機能させることと、個々の生徒の特性やニーズに応じた学びを実現することの両立です。教室には、学力差や希望進路の違いが必ず存在しますが、それらに対応する術を「個別指導」に頼ると、集団で学んでこそ得られる効用(対話的な学び、協働性や多様性の涵養など)を失わせることになります。クラス全体で共有する「必…

書くことでの学び~手書きとデジタルの併用

クローズアップ現代で「最近、手書きしてますか? 最新研究が明かす“頭を動かす力”」という番組が放送されました。番組を見て思ったのは、学習の場での「手書き/紙の教材 vs デジタル活用」の議論がときに噛み合わないのは、それぞれが違うところに焦点を当てて「学力」を語っているからではないか、ということ。手を使った方が獲得に有利な学力要素と、それ以外の要素をきちんと区別する必要があります。

答案のシェアや発表で相互啓発を正しく働かせる

生徒が調べたり、考えたりした結果を、答案、レポート、発表などの形でシェアさせると、教室には生徒間の「相互啓発」が働き始めます。直接的な対話(話し合い)の場合と同様に、「気づきの交換」で思考が深まり、視野が広がるのは当然のこととして、取り組み方(結果に至るまでの工夫/プロセス)を互いに知る(あるいは想像する)中で、課題へのアプローチやより良い学び方を、生徒は学んでいきます。そうした機能を十分に働かせ…

確かな学力を獲得させるための「学習活動の適切な配列」

科目固有の知識・理解を獲得させるだけなら、丁寧に教えて理解させてしっかり覚えさせれば十分ですが、現行課程では、科目内容(コンテンツ)を学ぶことを手段に、様々な能力・資質(コンピテンシー)の獲得という目的を達成する必要があり、生徒がそうした能力・資質を駆使・発揮する場を整え、訓練と評価の機会を確保する必要性が高まります。 言い換えるならば、丁寧に教えきることから、生徒自身にきちんと学ばせることに授業…

新しい学力観の下での授業デザイン(記事まとめ)

現行課程の下、学力観はパフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルへと更新が加速しています。大学入学共通テストや各大学の個別入試でも新しい学力観を反映した「意欲的な出題」が見られます。目指すところは、大学進学者のみならず、全ての生徒が卒業後に正しい選択を重ね、より良く生きるための基盤となる「学力」の形成です。基礎力という言葉一つをとっても、それが指すのは従来の「単元内容の根幹をなす知識群」から「言…

学びの初期値を計測(後編)

先生方による「学ばせ方」を、生徒が備えている既得知識や問題意識、学習方策などにマッチしたものにアレンジすること。さらに、指導がどれだけの効果を得たのか、効果測定を着実に行い、改善を重ねていくこと。この2つはより良い授業を実現するには欠かせません。双方(授業デザインの最適化と効果の正確な測定)を成立させるには、前提要件として「学びの初期値」を測定しておくことが不可欠、というのが、本稿(前編・後編)で…

学びの初期値を計測~授業デザインと効果測定のために

授業の効果は、先生方による学ばせ方と、生徒が備えるもの(既得知識や問題意識、学習方策など)とのマッチングで決まります。生徒がこれまでにどんなことを学び(+どう学ぶ中でどんな能力や資質を獲得しているか)、対象への理解や問題意識がどのようなものであるかを捉えないと、効果的な授業はデザインできません。これらは、実際の授業を始めるときより、さらに遡って授業をデザインする/指導計画を起こす段階でも把握を試み…

授業改善の方向性は合っているか?(チェックリスト)

現行課程において、知識・理解の着実な形成に加え、基礎力(=言語、数量、情報の各スキル)や、思考力(狭義の問題解決力に限らず、問題発見力、メタ認知・適応的学習力なども含む)などの獲得が、これまで以上に求められているのは、これまでの別稿でも書いてきた通りです。 日々の教室での「学ばせ方」にも、こうした「新しい学力観」に沿うことが求められ、その方向で授業改善も進んでいるはずです。さらに歩を進める前に一度…

教材づくりは、学習活動の配列を想定して

授業で用いる教材(プリントやワークシート、スライドなど)を作るとき、「わかりやすい」ものを目指すのは当然だと思いますが、それだけでは「学びに資する有益な教材」にはならないことがあります。わかりやすさ(≒着実な理解の形成)は、掲載する内容の精選、関連性がつかみやすい配列・構成などで高められますが、授業/学習を通して獲得を図るべきは「知識・理解」だけではありません。効果的な伝達に偏ると、ほかの部分の学…

各教科で実践する「探究的な学び」

総合的な探究の時間だけでなく、各教科の授業でも「探究的な学び」を生徒に経験させようとする取り組みが広まっているのを実感します。先日、授業公開でお訪ねした学校でも、保健の授業では生徒がそれぞれのテーマと切り口で行った調べ学習の発表場面を、公民では企業と金融についてのシミュレーションを行うグループワークを見かけました。大学入学共通テストでも、「探究的な学び」の場を想定した出題をよく見かけます。現場の先…

どんな問いを立てるかで授業デザインは決まる

どんな問いを携えて教室に臨むか、授業の成否を分ける最大のポイントだと思います。拙稿「学習目標は解くべき課題で示す」でも申し上げた通り、「問い」は学習者にとって取り組むべき課題そのものです。問いのあり方について改めて考え、問いを軸に授業をどうデザインするか、発想とスキルを常にアップデートすることが求められています。 2018/12/20 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 問いの立て方で、学ば…

生徒が問いを立てる授業(導入から仕上げまで)

昨日の記事「教科書をコスパよく使う~適切な問いの付与」では、先生が用意した本時/単元の学びを俯瞰しうる問い(ターゲット設問)を軸に授業をデザインすることを提案しましたが、「問いを立てる」ことにも、学習者(生徒)を関わらせていきましょう。21世紀型能力の中核をなす「思考力」の構成要素には、問題発見力も含まれますので、観察をタスクに問題を見つけ出す力を育む場(指導と評価)を用意する必要があるのは言うま…

教科書をコスパよく使う~適切な問いの付与

授業デザインを考えるときに最も重要なのは「どんな問いを立てるか」であると考えます。教科書という「食材」もそのままかじったのでは、美味しく調いません。そもそも、生のままではお腹をこわすかも…教科書に範囲を設けて適切な問いを立てれば、情報を集め、知に編むのにも軸が持て、調べる/考える/話し合うなどの行動も活性化します。さらにその「問い」が、生徒にとって自分事、答えを出すべき問題と認識できるものなら、「…

ボールを投げるのはミットを構えさせてから

相手にボールを投げようとするときには、相手がミットを構えているかを確認するもの。少なくともこちらを見ているかどうか確かめているはずですが、普段の指導の中で同じことが徹底できているでしょうか。大事なことを伝える前に、前振りもせず、問題意識や関心を刺激しておかなかったら、伝えたことは生徒の意識をすり抜けてしまい、受け取ってもらえません。あたかも、投げられたことにすら気づいてもらえなかったボールが、グラ…