進路意識形成を支える指導

体験のたびに感じたことをしっかり考え、言語化&記録

日々の学校生活の中では、生徒は様々なことを感じたり気づいたりしていますが、それを漠然とした感想に止めず、少し立ち止まって考えを深めさせるとともに、言語化し記録に残すことを習慣とさせましょう。先生方から聞かされた話や周囲との会話、あるいは授業で読んだ資料など、生徒が受ける「成長のための刺激」は学校生活を送るあらゆる場面に散らばっていますが、それらをもとに考える機会がなければ、気づきや学びは深まりませ…

カリキュラムを活かす、目的意識を持った科目履修

各教科の内容をしっかり学習させつつ、21世紀型能力を構成する様々な能力・資質を獲得させるべく練り上げられたせっかくのカリキュラムも必要な科目を必要な生徒が正しく選択して履修してくれないことには、本来備えている性能を十分に発揮できません。嫌いな科目を避けたり、受験情報誌などが示すモデルパターンを鵜呑みにしたりの履修科目選択では、いざ出願校を選ぶときになって落とし穴に入り込んでいることに気づいたり、進…

探究から進路へのきっかけを作るプラスαの一問

クラス全体に与える必達課題と、学力に余裕のある上位生に挑ませる任意課題を併用することで複線的にゴールを構えることの効用は、以前に別稿「知識をどこまで拡張するかは個々のニーズに合わせて」でご説明した通りです。本稿で新たにご提案するのは、そこからもう一歩踏み込んだ、「単元で学んだことの先を上級学校に進んでさらに深く学んでみたいという生徒に、探究に繋がる問いをもう一つ用意してみる」ということです。 20…

諦めない心は諦めたくないものを見つけた人に

11月も半ばを迎え、最上級生はいよいよ進路希望の実現に向けて本格的なスパートに入ったものと拝察します。一方で、ここから先は弱気の虫も騒ぎ出しやすい時期。期末考査の終了後は登校日も少なく、周囲の頑張りや先生の励ましに触れて気持ちを新たにする機会も減りがちです。“受験期はまたとない成長の好機“です。苦しく感じるのは頑張っている証拠ですから、受験を終えたときに気づく自分の成長を楽…

進路指導で育む“選択の力”(その2)

進路選択は生徒にとって重大事です。生徒一人ひとりの資質や志向に合致した進路を決定するという目的を達することに加え、その過程を「選択の力」を獲得する機会と捉えた指導を実践しようというのが前稿の主旨です。進路指導を通じてどんな資質や姿勢、スキルが身につくいていくか、それらが探究活動や教科学習指導を通して獲得するスキルとどのように関わっているかを視点に、もう少し考えてみたいと思います。 2014/12/…

進路指導で育む“選択の力”(その1)

進路指導が、生徒一人ひとりに資質や志向に合致した進路を決定させることを目的として行うものであることに異論の余地はありませんが、この目的を達成する過程で生徒が身につけていくべき様々な資質や姿勢があることも忘れてはいけません。とりわけ、進路を選択していくプロセスの中で養われる「選択の力」は生徒がその後の人生を歩む上でとても大切なものです。進路指導は「選択の力」を養う上で、ほかに代えがたい重要な指導機会…

最短の進路がベストにあらず

普段乗ることがあまりない路線を利用したとき車内を見回していたら、専門学校の中吊り広告に「私の進路は最短距離」というコピーを見つけました。ある職業を志す決意で入学する専門学校では、進路希望という夢を最短距離で実現させることが求められるのは当然ですが、高校での進路指導となると全く別の話になります。 ❏ 寄り道が視野を広げ、正しい選択を可能にする 高校の進路指導は、「進路希望や志望理由を作るフェイズ」と…

ゴールを決めて最短距離?#INDEX

社会の変化が加速する時代にあって、様々な研究者が予測していたことが現実に近づいていることを実感します。曰く、 2011年に米国の小学校に入学した子供の65%は大学卒業時に今はない職業に就くだろう。(ニューヨーク市立大学キャシー・デビットソン教授) 今後10~20年程度で、米国の総雇用者の47%の仕事が自動化される可能性が高い。(オックスフォード大学マイケル・A・オズボーン教授) 将来の夢を早くから…

ゴールを決めて最短距離?(その2)

知らないことや経験したことのないことが山ほどあり、認知の網を十分に張れていない高校生に、脇見や寄り道をせずに「10年後、自分が何をやっているか」を考えてまっすぐゴールを目指せ、というのはあまりにも酷。選択肢を見せる前に正解を選べと言っているようなものです。前稿で繰り返し使った「偶然との出会い」を生徒が持てるよう、社会との関わりや、学ぶべきことの所在を探れる機会の整備こそ先決です。職業調べや学部・学…

ゴールを決めて最短距離?(その1)

将来なりたい仕事を見つけ、そのためにはどんな学部・学科で学ぶのが最善かを逆算して考えるという、広く行われてきた進路決定の方法は今後ますます難しくなるように思います。ゴールとして目指していた仕事が10年、20年先にも存続している保証はありません。ゴールだけを見つめてそこに到達する努力を続けたあげく、辿り着いてみたら目指していたものは既に価値を失い、存在しなくなっていることだって十分にあり得ます。最短…

ポートフォリオの円滑な導入と効果的な活用に向けて

高大接続改革に向けてポートフォリオの導入が始まっています。プラットフォームは様々な事業者や機関が提供しているものの、使う側である高校では運用方法について試行錯誤が続いている段階のようです。大学がどんなデータを求めてくるかはっきりしないので運用方法の検討を進められずにいるとの声も方々で聞かれます。しかしながら、ポートフォリオは学習者の自己認識を深めさせて主体的に学ばせることを目的に考案されたツールで…

準備が整わないうちに選択を迫っていないか

進路形成は大小様々な選択の積み重ねであり、ある局面の選択によってその先に見える景色が違ってきます。もちろん、選択のやり直しはいつでも可能ですが、ある分岐点を右に曲がった場合、左に折れたら見えたはずの光景(≒興味や関心)に出会うチャンスは小さくなります。選択の機会に臨ませるとき、拙速な結論を出させないよう、そこまでに踏むべき手順をきちんと踏んできたか確かめるべきだと思います。 ❏ 進路探索の機会に、…

考察: 大学入学共通テスト&高大接続改革

2020年の高大接続改革もいよいよ近づいてきと感じます。新テストに最初に挑む世代もすでに中学3年生。来年は高校に入学してきます。高校の教育成果は3ヵ年の積み上げですから、本年度のうちに対応準備を進めたいところ。 まだ全容が見えているわけではありませんが、現時点で見えているところから、やるべきところをしっかり考えていくべきだと思います。 文科省、大学入試センターからの先週の発表を受けて、考えるところ…

高大接続改革では"探究活動"と"行動評価"にも注目

先週16日に検討・準備体制などが発表された「大学入学共通テスト(仮称)」では、英語の外部検定利用や国語と数学の記述式問題などが話題になっていますが、「第1回、第2回モニター調査実施結果の概要について」や文科省HPで公開された「高大接続改革の進捗状況について」などにも注目すべき箇所があります。 ❏ 探究活動への取り組み方が合否を分けるようになる 以下は、文科省HPの「高大接続改革の進捗状況について2…

先輩の経験から間接的に学ぶ機会

卒業生を招いて行う進路行事は、様々な世代からそれぞれの経験を踏まえたメッセージを在校生に伝えてもらう場。在校生が、先輩たちの経験から学び、これからの自分に向き合うきっかけとして整備が必要です。まだ訪れたことがない地域を旅行する前に、その場所を経験した人の話を聴くのが大いに参考になるのと同じかもしれません。その人と同じ行程を踏むのでは意味はありませんが、間接経験を通し、自分ならどうするかを考えること…

卒業生を招いて行う進路行事(その2)

卒業生を講師として招いて行う進路行事では、卒業生が今どのフェイズにいるかで伝えてもらいたいことが異なります。昨日の記事では、「難関大に合格したばかりの生徒」「大学で前期を過ごし、ひと通りを経験した卒業生」「専門課程に進んだ学生」 などに話して貰いたいことを思いつくまま並べてみました。もう少し年代が進んだときに話してもらいたいこともありますし、講演タイプに加えて座談会形式やパネルディスカッションの形…

卒業生を招いて行う進路行事(その1)

卒業生を講師に呼んで行う進路講演は多くの学校で見かける行事です。進路希望を叶え、新たな世界で頑張っている先輩の姿に自分の未来を重ねてやる気を出してくれる後輩たちも少なくありません。 ❏ ある段階を経て伝えられるようになること 卒業生とひと括りにしても、その立場は実に様々です。ある年代/フェイズにいる一人が話せることには自ずと限りがありますので、いろいろな世代から講師を選ぶことで、生徒の気づきを広げ…

起業家教育について考えるところ

起業家教育という言葉を耳にするようになってだいぶ経ちました。試しに、「起業家教育&高校」で検索してみたら55万件もヒットしました。どんな効果があるのかと調べている中、野村総研が行った「起業家教育の普及等に関する調査(最終報告書)」 を見つけました。 ❏ 高校での起業家教育は何をもたらすのか 「情報収集・分析・問題解決力が高まった」は、効果があったが8%、どちらかと言えば効果があったが47%と、やや…

カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思うところ

「キャリア教育の充実」という言葉があちらこちらで聞かれますが、職業調べ、職場体験などを起点に行うことが多く、そのやり方にぬぐいきれない疑問を少々感じています。もちろん成果をあげているケースもあると拝察しますが、どのような意識の変化を目指した体験なのかは一度しっかり考えてみる必要があろうと思いますし、私の知る狭い範囲では、その成果か検証がなされているのはむしろ少数派のようにも感じます。 ❏ 自らのゴ…