思考力と表現力を養うには

改めて考えてみる「問いを立てる」ということ

このブログでも、以下のように「問いを立てる」という言葉をたびたび使ってきましたが、改めてその意味するところを考えたいと思います。 単純に「なんだろう」「どうなっているのだろう」と疑問や興味を持つ段階から、「疑問の正体を特定し、共有可能な表現でその本質を表現する」という過程を経てようやく「問いを立てる/起こす」に至ります。目の前の事物を注意深く観察したり、資料などを注意深く読んだりしないと、起点の「…

学び方における守破離(続編)~型を学ばせた先~

本編では、初期段階にある学習者には「やってみせ、言って聞かせる」ことが必要ながら、取り組み方を学びつつある学習者に対して細かく指示を出し続ければ、伸びる芽を抑えかねない、という整理をしました。指導は「やってみせる」と「やり方から考えさせる」の二択ではなく、学習者のステージに応じて行き来しながら、徐々に手を放す方向に進めていくことが重要である、というのが結論でした。続編となる本稿では、初期学習の円滑…

ターゲット設問の具体例(追記)

別稿「授業改善を加速するための共通言語」(用語集)のトップに配置したのは、ターゲット設問です。これを授業デザインの中心に置くことで、主体的で深い学びの実現に近づける可能性は格段に高まります。本時の学習内容を俯瞰し得る問いを、授業の冒頭に示すことで、本時の学習で「何ができるようになればよいか」を生徒に見える形で提示すると同時に、学び終えたときに問いに立ち戻り、答えを仕上げることで、学びをより深く、確…

思考力を鍛えるのは、教える前が勝負

生徒の思考力を鍛えられるのは、主に「正解や解法を示すまで」です。答えや解き方を知った後にできるのは、解に至る過程を辿り直して確認することと、答えを覚えることくらいに限られてしまいがちです。そこでは、答えを導き出すために重ねるべき思考(題意の理解/問題の発見、解法の考案など)の大半を、生徒は自ら体験できません。答えを導くべき問いや解決すべき課題を与えたら、生徒が十分に思考を尽くすまで、不用意に正解や…

答案を正しく評価できているか

答案を正しく評価するとは、答案を通じて生徒が示した学力(知識・技能、思考力、表現力など)を、過不足なく点数に変換すること。良い答案には高い点数を与え、直すべきところに応じてきちんと減点されることが第一義。生徒が採点結果に納得できるかも、重要な要素です。これが実現することによって、生徒は「学習を通じてどれだけ進歩し、どんな課題が残っているか」を知り、学びに正しい方向を得ます。同時に先生方も採点結果を…

思考力と表現力を養うには

1 学力の三要素~思考力の捉え方もアップデート 1.1 学力の三要素とは~もう一度考えてみました1.2 PISAが測ろうとしている「創造的思考力」 ★1.3 論理的思考と批判的思考1.4 観察をタスクに「問題発見力」を育てる ★1.5 探究活動を通じて育む「思考力」と「実践力」1.6 メタ認知、適応的学習力 ・失敗から正しく学べているか ・助言や指示は、生徒自身がじっくり振り返ってから ★ 2 新…

質問に答えて不明を解消してあげる前にやるべきこと

生徒が問題演習を行ったり、実験や話し合いに取り組んでいたりするときに、先生方が机間指導を行いながら、生徒の質問に答えるシーンは、教室ではごく当たり前の、まさに日常でしょう。わからないことがあったら訊くようにと声をかけ、質問一つひとつに丁寧に答えていくのは、生徒の疑問や不明に向き合う指導者としての親身な姿に見えますが、よく考えてみると、「質問に丁寧に答える」という対処だけでは、十分ではないところも多…

新しい学力観にそった授業と家庭学習の再設計

新課程への移行で学力観が新しいものに更新される中、家庭学習(予習や復習)にも「学ばせ方の変化」に応じた新しい形が求められるようになってきたのは、既に以下の拙稿などでもお伝えしてきた通りです。 単純に授業外学習時間の延伸を図れば良いということではありません。宿題・課題の増量といった昔からの対策には、自ずと限界があります。荷物を増やしても学びが膨らむとは限らないことを念頭に、「その宿題、本当に必要です…

〇〇的な(教科固有の)考え方・見方を養う第一歩

教科や科目に固有の「物事を捉える視点や思考方法」(所謂「〇〇的な考え方・ものの見方」)を学ばせることは学習指導の重要な目的です。目指すべきところは、3年/6年間の教育活動を通じて「物事を多角的に、深く、正しく捉えられる状態」に近づけること。全ての科目がそれにコミットすることではじめて、死角のない「見方」が実現します。正しい捉え方ができるようになれば、科目の学びに対する自己効力感も高まり、より広い対…

AIの時代だからこそ「問いを立てる力」

AIが知的作業の道具(相棒?)として存在感を持ち始めたのは、3年前の2022年11月、ChatGPTの登場を機にしてのこと。以降、あっという間に、学習や仕事、生活の場で、物事を調べたり、考えたりするのに使って当然、なくてはならない道具としての立場を手に入れました。クリックを重ねるまでもなく、尤もらしい答えがすぐに返ってくるのが当たり前(普通の状態)になった今、生徒や学生に限らず、AIを活用するあら…

どんな問いを立てるかで授業デザインは決まる

どんな問いを携えて教室に臨むか、授業の成否を分ける最大のポイントだと思います。拙稿「学習目標は解くべき課題で示す」でも申し上げた通り、「問い」は学習者にとって取り組むべき課題そのものです。問いのあり方について改めて考え、問いを軸に授業をどうデザインするか、発想とスキルを常にアップデートすることが求められています。 2018/12/20 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 問いの立て方で、学ば…

学習内容が同じでもアプローチによって学びの質は異なる

生徒にとって新しい単元を学ぶのは、歩いたことのない道を歩き、訪ねたことのない目的地を目指すようなもの。歩き方にも色々とあります。以下の3つのシチュエーションを思い浮かべてみると、次のチャレンジでも的確にゴールに辿り着けるかには小さからぬ違いがありそうです。 同様の違いは「教室での学ばせ方」にもあるはず。学習する内容が同じでも、そこに至る方法(学びへのアプローチ)によって、身につくものや学びの質が大…

生徒が問いを立てる授業(導入から仕上げまで)

昨日の記事「教科書をコスパよく使う~適切な問いの付与」では、先生が用意した本時/単元の学びを俯瞰しうる問い(ターゲット設問)を軸に授業をデザインすることを提案しましたが、「問いを立てる」ことにも、学習者(生徒)を関わらせていきましょう。21世紀型能力の中核をなす「思考力」の構成要素には、問題発見力も含まれますので、観察をタスクに問題を見つけ出す力を育む場(指導と評価)を用意する必要があるのは言うま…

記憶は思考(理解や予測)の大事な道具

インターネット上には膨大な情報があり、それを学習した生成AIは、どんな問いにも瞬時に答え(正解とは限りませんが、少なくとも確率的に最も妥当な[尤もらしい]語の連鎖)を提示してくれます。もはや、ググって表示された結果を見比べる手間すら不要になってきました。こういう状況になると、「物事をいちいち覚えておく必要があるのか」という疑問も生じます。そもそも、日々新たな情報と知が生み出されるスピードは、人が学…

アイデアを膨らませ、まとめる方法への習熟

生徒に新しいアイデアを出させるためには、事前に行う調べ学習が重要というのは別稿でもお伝えした通りです。そこで得た様々な情報を関連付けたり構造化したりすることで、アイデアを考える土台が整います。本稿では、調べ学習の中で得た知識や気づきを拡張しながら、整理していくフェイズでの指導の工夫を考えてみたいと思います。 2019/11/26 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 様々なツールを使い、思考を…

判断力をどう考え、育て、評価するか

現行課程における学力の第2要素は、ご存じの通り「思考力・判断力・表現力等」です。理解していることやできることを使って未知の状況に対応する力を指しますが、こうした能力と資質を育もうとする以上、その意味するところをきちんと定義/言語化しておく必要があります。言語化できない状態では、指導を通じて目指すべきところ(指導目標、評価基準)も曖昧なままでしょう。能力資質の獲得を目指す場/評価の機会としての学習活…

入試問題を授業の教材に使うときに

現行課程への移行を経て、新しい学力観を取り入れた出題も、意欲的な大学・学部では広く見られるようになっています。完成年度を迎え、現課程での最初の入試も終わりましたが、暫くは大学入試問題ウォッチに一層の力を入れて、新しい学力観の下での学ばせ方を模索すべきです。出題研究を通して”問い方”を学ぶ ことは、先生方ご自身の持つ学力観を更新するのに代えがたい機会のひとつですし、「問いの立…

教科書内容の理解を「学びのゴール」としない

教科書や資料に書かれたことを正しく理解することは、いかなる場面においても大切なことであり、ないがしろにすることはできません。当然ながら、教科書をきちんと読ませることを通じて、書かれていることを自力で読んで理解する力もしっかり獲得させたいところです。しかしながら、新しい学力観の下では、学びのゴールは「教科書や資料の内容を正しく理解すること」ではなく、そのさらに先に設定する必要があるのではないでしょう…

学びにおけるインプット(input)とインテイク(intake)

新しい学力観に沿った学ばせ方への転換を図ろうとするとき、学ぶ過程を「インプット」と「インテイク」に分けてみると、様々な着想が得られたり、見落としていたものに気づきやすくなったりします。ともに知識や情報を外から内に入れることに変わりありませんが、専ら外からの働きかけで行われる「入力」と、不明を見出した/興味を持ったときに、自ら求め、工夫して行う「取り込み」とは別ものです。 2019/03/22 公開…

予想と違う結果がでたときにこそ~実験などの場面で

理科の授業では「実験」が欠かせませんが、配られているワークシートを見ると「うまくいったとき、予想通りの結果が出たとき」だけを想定した書式になっていることが少なくないように思います。すべての実験が上手くいくとは限らず、ちょっとしたところで操作を誤っただけで、想定した結果にならないこともあれば、機器の扱いが拙いなどの理由で測定誤差が大きく出たりすることも少なくないはずです。こうした場面に遭遇したときの…