授業で学んだことをしっかり定着させることを意図して行う小テスト。授業で習って、復習で覚えて、テスト用紙に再現して…と、最低3回は対象知識への接触機会が持てますので、再記銘も進みます。
また、覚える練習、思い出す練習は、記憶力そのものを鍛えるのにも欠かせません。知識の定着に加え、学習に必要なスキル/能力を得ていることにもなります。(cf. 新しい学びの中で「覚える力」が持つ意義)
しかしながら、短時間で行う小テストでは、記憶と再現、「覚えたかどうか」を確かめるのに偏ることが多く、本当に理解しているかどうかを確かめる機能には欠けるところが小さくありません。
また、テストを外圧に利用することで学びの習慣化を意図しても、学ぶ姿勢そのものの改善に繋がるかどうかは甚だ疑問です。「勉強を好きにさせる学ばせ方」に所謂「反復方策」は含まれていないようです。
小テストのあり方について、その要否にまで遡って、どのように利用するのが最適か、冷静に考えてみる必要がありそうです。
2015/08/25 公開の記事を再アップデートしました。
習ったことを覚えたかどうかに偏りがち
“記憶と再現”を、”知識の活用と言語化”に置き換え
5分のテストでは50分の学びを網羅できない
小テストを補完する、学びを見渡す”チェックリスト”
チェックリストの答えは、生徒に自分で作らせる
再テストの繰り返しで、後手のスパイラル
副教材を計画的に学ばせるためのテストは…
小テストはその場で自己添削+その結果を点検
小テストの点数は平常点に加えるべきか?
続編:授業内に行う小テスト
授業途中の小テストで後半の学びの土台を作る
集中力を高めた復習&暗記ができるようにさせる
授業を終えるときに小テストを行うという選択肢
手順に習熟するための練習機会としても
忘却曲線のリセットと後半に向けたリフレッシュ
覚える練習を重ねて、覚え方を脳に覚えさせる
重要語句をただ覚えて答えるだけの場合と、新しく知った語句の概念などを生徒自身の言葉で説明させる場合とでは、確かめられる理解の度合い(広さと深さ)に大きな違いがあります。
調べたことを文字に起こさせたり、学ぶたびにそこまで学習を振り返らせたりする方が学力伸長に効果的との調査結果(書くことと振り返りが学力を伸ばす)を踏まえると、小テストを繰り返して定着を図ることから、学ばせ方の主眼を切り替えていく必要もあろうかと思います。
単元で学んだことも、単に覚え込むのではなく、生徒自らが整理し、体系立ててみることにも挑ませていきたいところ。卒業後も自ら学び、知の地平を押し広げられる力を獲得させることも指導目標の一つです。
こうした課題や活動に振り向ける時間を確保するには、「理解や活用」から切り離された「覚えるだけ」の作業は軽くする必要もあるのではないでしょうか。覚えたことを使う場面もないまま、ひたすら記憶と再現を繰り返すだけでは、その知識を得るために努力することの意義も実感できません。「学ぶことへの自分の理由」も生まれにくいはずです。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一