授業改善を組織的に進める上では、先生方がそれぞれに重ねてきた工夫の成果を確かめ、効果の大きな実践を見つけ出し、共有することが不可欠。テストやアンケート、行動評価などの結果で効果測定を重ねれば、教育目標の達成により大きく近づけた指導の所在を特定できます。
そこで見つけた効果的な実践を共有することで、学校全体の指導力向上が図られますが、ここで共有すべきは「良い授業」を写した「模倣のための型」ではありません。何が成果に結びついているのかを捉え、そこから取り出した再利用可能な工夫や考え方です。
こうした実践知を蓄積し、それぞれの先生が自分の授業に合わせて組み替え、効果を確かめながらさらに磨いていけば、そこで得られた新たな知見もまた、次の改善、すなわち指導知見の更新に繋がっていきます。
2017/09/21 公開のまとめページをアップデートしました。
(旧タイトル)組織的授業改善の土台: データを使った効果測定
組織的な授業改善では、先生方がそれぞれに積み上げてきた工夫や実践を共有することが大切ですが、共有の対象は闇雲に広げればよいわけではありません。結果学力だけでなく、進歩や成長の実感、学習行動なども含めて指導の成果を多角的に捉え、同じ時間やコストでより大きな、好ましい変化をもたらした「付加価値の大きな指導」を見つけ出すことが、効果的な実践共有の起点になります。
校内にある好適実践を見つけたら、改善が遅れた授業のキャッチアップにも活かしたいところです。但し、優れた授業のやり方に倣うとは、これまで培ってきたものを否定して置き換えることではありません。自分の授業にも組み込めそうな、十分な改善効果が期待できる「パーツ」を見つけ、既得の手札と組み合わせましょう。
cf. キャッチアップ(授業改善)を効果的に進めるために
他の授業で効果を上げた手法も、そのまま持ち込めば同じ成果が得られるとは限りません。生徒はそれまでの学習履歴の中で、それぞれ異なる学習方策や負荷耐性などを身につけています。既習内容の定着・習熟だけでなく、学習方策や自己効力感なども多角的に把握し、目の前の学習者特性に応じて「学ばせ方」をアジャストすることが必要です。
実践共有が役立つのは、改善が遅れた授業のキャッチアップだけではありません。同じように高い成果を上げている授業でも、そこで使われている工夫や「手札」は一様ではないはずです。互いの異なる強みに学び、新たなパーツを自分の実践に組み込み、効果的な手法を融合させることで、すでに優れた授業もさらに先へ進める可能性が生まれます。
実践知の交換と組み合わせを、教科内の協働とするには、議論の起点を具体的なものに置く必要があります。授業という時間の流れ全体を議論するより、紙の上に固定できる問いや課題を共有するところから始めましょう。その上で、必要な知識・理解、学習活動、提示の仕方、評価の観点へ議論を進めるのが好適です。
cf. 授業で使った教材・課題や考査問題の引き継ぎ
授業改善は先生方一人ひとりが取り組む仕事であると同時に、先生方の協働があってこそ、成果が上がるものです。周囲の優れた手法や工夫に学ぶことなしには、改善に向けた発想も自分の中に閉じたものとなり、広がりも深まりもないまま凝り固まってしまいがち。互いの実践に学び、より良いものが共有されるにつれ、校是というべき「自校が目指す授業像」も生まれてきます。
結果学力の伸長や、学びに対する自己効力感の向上などに加え、学びへの取り組み方や学習方策の獲得も指導を通じて目指す以上、これらについても効果測定をきちんと行う必要があります。進路意識の形成や選択の力の獲得なども効果測定を行うことで優良実践の共有が進みます。優良実践の共有は業務の効率化にも繋がります。
■ご参考記事:
- 優良実践の共有~授業評価の結果を活かして(全3編)
- 大きな成果が出た時にこそ~実践の共有と継承
- 実践報告に触れての気づきを言語化することの効果
- 優れた実践を見て言語化する(見取り稽古)
- 効果測定は、理解者と賛同者を増やすため
- 効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)
- 指導案の優劣を論じるときも(新たな取り組みを始めるときの鉄則)
- 考査問題の改善が授業も変える

このページの内容をChatGPTでイラストにしました。クリックで拡大します。
追記:自分が行ってきた指導の成果を検証し、生徒の声に耳を傾けることは、体重計に乗る習慣と似ています。毎日体重を測るだけで、減量がうまく進んだり、生活習慣の改善が図られたりすることもあるとか…。より良い授業の実現を目指すなら、データを用いて自分の指導を定期的に振り返る(=効果を測る)のは欠かすことのできない「習慣」です。
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一
