評価の基準と機会を見直し~指導計画の起案前に

新年度に向け、指導計画の見直しが行われていることかと拝察します。現行課程の完成年度を経て、これまで進めてきた取り組みにも改善課題が見えているはず。反省を活かしてより良い指導を実現していくのは至極当然ですが、指導計画を更新する前にやるべきことがあります。
先ずは「これまでの指導を振り返り、その成果(進捗)と反省点(改善課題)を的確に把握し直すべき」であるのは、先日の記事「指導計画の更新は、効果測定の結果を踏まえて」にも書いた通りです。
目指していたものは何か、それがどこまで実現したかを捉え直さないまま、舵を切ったところで進む方向を正せるとは限りません。指導の効果を正しく測定できたか、評価の基準は適切だったかの点検が先決です。
生徒に対する指導では「指導と評価の一体化」が求められていますが、それと同様に、学校経営/教育活動の実践においても適切な基準に沿った「評価」がきちんと行われる必要があるということです。

❏ 年間行事予定/指導計画に「評価の機会」を配列

年度の切り替わりを機に、「年間行事予定」や生活・学習・進路(+探究)の各領域の「指導計画」の更新に着手する前に、「どこで、何を基準に評価を行うか(=指導の効果を測定するか)」がきちんと想定されているか、きちんと点検しておきましょう。
先生方の頭の中には、例えば生活領域でも「5月の連休明けには新しい生活サイクルへの順応を完了させる」といった目安があるはず。それらを先生方の間で共有しておかないと指導がバラつき、徹底できません。
共有するためには、言語化しておくことが前提になりますので、評価の基準(観点ごとの到達規準)を改めてしっかり文字にしてみましょう。この作業を通して、先生方の目線合わせも進むはずです。
生活領域の指導は、ホームルームで行われることが多いとは言え、様々な行事(郊外での体験学習、合唱祭や体育祭、進路学習や面談、成果発表会)において他領域の指導と重なるため、単独では行えません。
教育活動の全領域を見渡して、ホームルームの年間実施計画を作り上げるとともに、時期ごとの「重点達成目標」を定めて、どのような基準で評価を行うかも、あらかじめ十分に検討しておく必要があります。

❏ 教科学習指導では、まずは考査問題の点検と更新を

新課程への移行を機に「指導と評価の一体化」の必要性が強調されてきましたが、対象となるのは学習の領域だけではないはずです。生活や進路、探究活動でも同じでしょう。
整備への着手が比較的早かった教科学習指導の領域でも、今もなお定期考査の問題が古い学力観の下のままといったケースも見受けられます。他の領域では「手つかず」というケースも少なくなさそうです。
各教科の学習における評価の中心的なところは定期考査で行われているかと思いますが、この部分でもまだやり残しがあるかもしれません。
各時期/単元の指導を通して、身につけるべきものをきちんと獲得させないと、次のステージ(学年など)にバトンを渡せなくなります。
学年教科の中に議論を閉じず、隣接学年との「学びの接続」を考えて、学期(考査)や単元ごとに目指すものをすり合わせておきましょう。

加えて、主体的に学ぶ姿勢や、協働場面でのふるまい方なども、評価を行い、生徒にフィードバックしてこそ、学習の改善が進むはず。今期の指導を振り返ってみたとき、十分な評価ができていたでしょうか。

❏ 進路と探究でも、きちんと評価を行い、成長を促す

進路指導と探究活動は、目指すものが近いこともあり、指導は互いに関連付けて行う必要がありますが、それぞれの成果を捉えないと、指導目標の達成は確実なものにできず、指導の改善も進みません。

進路指導の計画は、担当分掌(進路部など)か学年進路で起こすのが一般的でしょうが、進路希望を作り上げるまでのプロセスの一つひとつにおける狙いを「評価の規準」に起こせているでしょうか。
どんな観点で、どんな規準に照らして個々の生徒の状況を捉えるか、生徒に自己評価させるかが、きちんと議論され、共有されていることではじめて、方向性を持った指導を重ねていくことができるはずです。
探究活動では、フェイズを一つひとつ経験させる中で「探究の方策」を獲得させるとともに、「学んだことを通した社会との接点(社会に対して自分が引き受ける役割)」を見つけさせていきますが、その進捗を確かめていかないと、次に取り組むべきことが見えてきません。
進路と探究の2領域をしっかりと結びつけて、時期ごとに生徒にどんな成長(=能力や資質の獲得)を重ねさせていくか、評価のタイミングと方法(材料+基準)を整えながら、しっかりと考えていきましょう。



入試シーズンのど真ん中でご多忙を極める日々と存じますが、ゼロ学期も半分が経過しています。次年度に向けた計画づくりも遅延させないようにしたいところです。
計画を考えていくだけでは「やりっぱなし」を助長しかねません。重点的な指導目標に対しては、その達成検証の手段(評価の方法)までしっかりと考えた上で、継続的に改善を重ねられる態勢を整えましょう。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一