進級後の指導を見据えて(円滑な学びの接続)~まとめ

教科学習指導にしても、進路指導や生活指導にしても、単年度で指導が完結するわけではありません。ある学年での指導は進級/進学後に必要になるものを獲得させるためのものでもあり、そこでの指導目標が未達なら、先の指導は補完やフォローに追われ、計画は崩れていきます。
カリキュラムは、単元内容を理解させることを手段に、様々な能力・資質を獲得させるために編まれているものですので、各単元の学習内容を理解させるだけでは、必要なものを整えて次のステージに学びを進めさせたことにはならないはずです。
個々の授業の改善を図ることに加えて、学年間、校種間の学びを円滑に、且つしっかりと接続させることにも十分な意識を向けましょう。
単元や学期、学年ごとの指導目標/指導主眼が、3年間/6年間を見渡したグランドデザインの中に正しく配列され、互いに結び付き合っているかどうか、どこかのタイミングで点検してみるべきだと思います。


カリキュラムは{学習内容×能力資質}で設計する

 

2017/10/19 に公開したシリーズを再アップデートしました。

前年度の指導に起因する学習指導上の課題

あるクラスを担当していて、学習指導がうまく行かない場合、その原因が前年度までに生徒たちが受けていた授業に存在する場合があります。既習事項の習熟が不十分であれば、学び直しに手間取り本時の学びが十分に深められないこともありますし、不安定な土台の上に新たな知識を積もうとしてもうまく行きません。授業改善に向けた改善計画を練るとき、自学年での課題と前学年での指導改善で解決を図るべき課題とをきちんと切り分けしましょう。

次に進んだときの学習をイメージ

各単元の学習目標は、当該学習内容を理解させることに加えて、学びのステージが次に進んだときに備えて、基礎的な理解や学びの方策などを身につけさせておくことにもあります。学習内容が高度化していく中、学習方策の獲得が遅れて「生徒が個人の学習活動でできること」が相対的に減っていくようでは、教室でしかできない学びを充実させることも難しくなってきます。「学びの個別化」にも個々の生徒ができることの増大は不可欠です。

学習内容の高度化、学びの変化に備えさせる

学びを進めていく中で、新しい学期・年度を迎えて学習内容が難しくなる局面があるのは改めて申し上げるまでもありませんが、そうした局面を迎えさせるための「準備」はきちんと行えているでしょうか。学習内容が高度化することだけでなく、科目の学びに求められるものが変わる(=学ばせ方の変化)こともまた、躓きの一因になります。データも活用しながら、学びのステージが次に進んだときを想定した指導を心掛けましょう。

生徒は何ができるか~指導計画立案の前に確認

来年度の教育活動の最終設計に入る前に、確実に行っておきたいことのひとつに、「これまでの指導を通して生徒は何をできるようになっているか」の点検があります。指導とは、現状と目標の差分を解消する活動ですので、目標をしっかり定めるのと同時に、現時点で知っていること/出来ていることをきちんと把握しないことには正しい設計ができません。来年度の指導計画を固める時期を迎え、その確認をするのは今をおいて外にないはずです。

生徒が学んできたこと、経験してきた学び方の確認を

本時の学びに繋がるところ[既習内容]を、目の前にいる生徒がどこまで/どのように学んできたか正しく把握した上でなければ、効果的な学びの場は作り出せないはずです。知っているだろうと先生方が思い込み、「既習」と想定していたことを生徒が学んでいなかったとしたら通じる話も通じませんし、既に学んで知っていることを「初出」と取り違えていても無駄が生じます。改定された小中学校の教科書には改めて目を通しておきましょう。

教え方と学び方のマッチング

生徒はそれぞれの学習履歴の中で学び方を身につけてきています。その一方で、先生方もそれぞれの教え方をお持ちです。進級を機に生徒と先生の組み合わせが変わったことを機に「学び方」と「学ばせ方」のミスマッチが生じることがあります。教え方と学び方のマッチングが失われると、学び側での戸惑いなどが生じ、生徒本来のポテンシャルが十分に発揮されず、成績の伸び悩みという形で影響が現れることが少なくありません。
cf. 同じ教材で同じように教えているのに…

新課程が求める「学ばせ方」~学年間の円滑な接続

課題解決や対話協働といった学習活動の多寡は、教室でどのような「学ばせ方」がなされているかを示唆する指標です。これらの項目で、校種間あるいは学年間の差が大きな(円滑な接続がなされていない)箇所では、躓きが多くなります。変化による戸惑いから生じる躓きが小さなものなら、それを乗り越えることでの学習者としての成長も見込めますが、乗り越えられないほどの大きさでは、科目への自己効力感を失わせてしまうかもしれません。

中高一貫校での中高/前後期接続

中高一貫校の強みは、6ヵ年を通した指導計画のもとで中断なく指導の成果を積み上げられることにありますが、入学当初の高い意欲と終盤での進路希望実現への努力との間に生じる「中だるみ」が大きくなりがちという弱みも持ち合わせます。今学んでいる単元を理解すると同時に、次に進む準備をしていることを生徒は意識できているでしょうか。また、見えないところで同年代の生徒が何に挑み、頑張っているかを知る機会はあるでしょうか。


教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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新課程が求める「学ばせ方」~学年間の円滑な接続Excerpt: Ⅴ活用機会やⅥ対話協働は、教室でどのような「学ばせ方」がなされているかを集計結果から推測できる項目です。これらの項目で、校種間あるいは学年間の差が大きな(円滑な接続がなされていない)箇所では、躓きが多くなります。
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