学年・校種間の指導を繋ぐ

学年・校種間の指導を繋ぐ

1 学年・校種間での学びの接続 1.1 新課程が求める「学ばせ方」~学年間の円滑な接続 ★1.2 前年度の指導に起因する学習指導上の課題 ・学習内容の高度化、学びの変化に備えさせる1.3 生徒は何ができるか~指導計画立案の前に確認 ★ ・生徒が学んできたこと、経験してきた学び方の確認を ・授業で使った教材・課題や考査問題の引き継ぎ1.4 同じ教材で同じように教えても~学習者特性の違いを把握 ・教え…

入学時に思い描いた自分に照らして

受験学年を迎える現2年生に対しては、第一志望を宣言させたり、春休みには志望校別の対策講習が始まったりと進級への準備が着々と進んでいく中、現1年生に対しては、2年への進級を意識した策を特に講じていないというケースが思いのほか多いようです。入学時に抱いていた高校生活での夢や目標、思い描いていた自らの日常と今の自分とを照らし合わせて、「進級後の自分の目標を再設定」させることが、中だるみを起こしやすい2年…

生徒は何ができるか~指導計画立案の前に確認

来年度の教育活動の最終設計に入る前段階で確実に行っておきたいことの一つに、「これまでの指導を通して生徒は何をできるようになっているか」の点検があります。指導とは、現状と目標の差分を解消する活動ですので、目標をしっかり定めるのと同時に、これまでに経験したことや現時点で知っていること/出来ていることをきちんと把握しないことには、ここから先の指導を正しく設計することはできません。 2019/01/18 …

授業で使った教材・課題や考査問題の引き継ぎ

新年度の引き継ぎに際し、これまでの指導で使用した教材や課題、考査問題などを必要に応じて次年度以降も利用や参照ができるように整えて残しておくことはとても重要です。日々の指導の中で積み上げてきた工夫には成果と反省の両方があり、それらを踏まえた上で「その先」を考えることが、継続的な指導の改善に繋がるからです。 2019/03/18 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 効果的な設問や課題を継承してブ…

生徒の現況と意識を把握してから新学期をスタート

いよいよ3月も今日を入れて残り2日となりました。新年度を目前に、新たな指導/取り組みを思い描いておられることと拝察します。意欲的なチャレンジは、指導の幅を広げ、その中から良いものを選び出して、さらにブラッシュアップすることで、改善もどんどん進んでいくはず。しかしながら、指導が所期の成果を結ぶか否かは、生徒が備えているものとのマッチング次第。生徒がどんな経験をもち、どんな能力やスキルを獲得しているか…

進級を前に「学びへの自己効力感」を点検

進級後の学びを視野に、学びへの自己効力感を生徒がどのくらい持っているか、この時期に確認をしておく必要があろうかと思います。どのフェイズでも、「学び」はそれまでに身につけてきたものを土台に積み重ねるもの。既習内容の理解と定着が不可欠なのは言うまでもありませんが、それと同等以上に重要なのが「学びへの自己効力感」です。 ❏ 学力向上感などを尋ねるアンケートの結果を参考に 年末(11月~12月)に、生徒に…

進級後の指導を見据えて(円滑な学びの接続)~まとめ

教科学習指導にしても、進路指導や生活指導にしても、単年度で指導が完結するわけではありません。ある学年での指導は進級/進学後に必要になるものを獲得させるためのものでもあり、そこでの指導目標が未達なら、先の指導は補完やフォローに追われ、計画は崩れていきます。カリキュラムは、単元内容を理解させることを手段に、様々な能力・資質を獲得させるために編まれているものですので、各単元の学習内容を理解させるだけでは…

前年度の指導に起因する学習指導上の課題

あるクラスを担当していて、学習指導がうまく行かない場合、その遠因が前年度までに生徒たちが受けていた授業に存在する場合があります。既習事項の習熟が不十分では学び直しに時間がかかり本時の学びが十分に深められないこともありますが、ことはそれだけではありません。生徒は授業を担当する先生の教え方にあわせて学びのスタイルを作りますが、新年度からご担当される先生が変わって学ばせ方が違ったものになれば、当然ながら…

学習内容の高度化、学びの変化に備えさせる

学びを進めていく中で、新しい学期・年度を迎えて学習内容が難しくなる局面があるのは改めて申し上げるまでもありませんが、そうした局面を迎えさせるための「準備」はきちんと行えているでしょうか。学習内容が高度化することだけでなく、科目の学びに求められるものが変わる(=学ばせ方の変化)こともまた、躓きの一因になります。学びのステージが次に進んだときを想定した指導を心掛けましょう。 ❏ 学習内容が高度化するタ…

中高一貫校での中高/前後期接続

中高一貫校の強みは、6ヵ年を通した指導計画のもとで中断なく指導の成果を積み上げられることにありますが、中高/前後期の接続に課題を抱え、本来の強みを生かし切れていないケースもあります。中学/前期課程では高い学力向上感や積極的な学ぶ姿勢が観測されていたのに、高校/後期課程に進んだとたんに伸びを欠くこともしばしばです。 新課程が求める「学ばせ方」~学年間の円滑な接続 下図は、中等教育学校を含むいくつかの…

新課程が求める「学ばせ方」~学年間の円滑な接続

前稿「授業評価アンケートの集計結果を相対的にみる」でも少し触れましたが、Ⅴ活用機会やⅥ対話協働は、教室でどのような「学ばせ方」がなされているかを集計結果から推測できる項目です。 活用機会:習ったことをもとに考える機会が課題などで整っている  対話協働:話し合いなどの協働で気づきや学びの深まりが得られるこれらの項目で、校種間あるいは学年間の差が大きくなっている(円滑な接続がなされていない)箇所では、…

生徒が学んできたこと、経験してきた学び方の確認を

どの教科の学習指導でも同じですが、本時の学びに繋がるところ[既習内容]を、目の前にいる生徒がどこまで/どのように学んできたか正しく把握した上でなければ、効果的な学びの場は作り出せないはずです。知っているだろうと先生方が思い込み、「既習」と想定していたことを生徒が学んでいなかったとしたら通じる話も通じませんし、既に学んで知っていることを「初出」と取り違えていても無駄が生じます。既視感の中で退屈を覚え…

次に進んだときの学習をイメージ

各単元の学習目標は、当該学習内容を理解させることに加えて、学びのステージが次に進んだときに備えて、基礎的な理解や学びの方策などを身につけさせておくことにもあります。学習内容が高度化していく中で、学習方策の獲得が遅れて「生徒が個人の学習活動でできること」が相対的に減っていくようでは、教室でしかできない学びを充実させることもできなくなってしまいます。また、学びが進んでいくと、不明や躓きが起きる箇所も生…

中学での経験を踏まえて考える「高校での探究活動」

中高一貫校では、6年間という長い指導期間を活かして探究型学習プログラムの整備が比較的進んでいます。これに対して指導期間が3年(実質的には2年半)しかない高校では、本格的なプログラムを組み込むには時間的な制約が小さくありません。成果が確認できるまでの期間が中高一貫校の半分の3年間で済むという利点を活かし、短いサイクルの中でプログラムの改善を加速させるとともに、生徒が中学校までに経験してきたことをうま…

教え方と学び方のマッチング

生徒はそれぞれの学習履歴の中で学び方を身につけてきています。その一方で、先生方もそれぞれの教え方をお持ちです。進学や年度の切り替わり等で生徒と先生の組み合わせが変わったことを機に、ときとしてこの「学び方」と「学ばせ方」のミスマッチが生じることがあります。教え方と学ばせ方のマッチングが失われると、学ぶ側での戸惑いなどが生じて、生徒本来のポテンシャルが十分に発揮されず、成績の伸び悩みという形でその影響…

生徒は学び方をどこまで身につけているか

授業の予復習を含めて、生徒に課題を与えて取り組ませていくとき、その課題にしっかりと取り組めるだけのレディネスが生徒に備わっているか、しっかり確認しておくことが大切なのは言うまでもありません。既に出来るようになっていることはもちろん、もう少しで出来そうなことを「不用意に肩代わりしない」ようにしたいもの。できることはどんどんやらせる~生徒の邪魔をしないことは指導を行う上での鉄則です。しかしながら、ただ…

同じ教材で同じように教えても~学習者特性の違いを把握

同じ教材を使って同じように教えているのに、模試や考査での成績分布に違いが出たり、授業評価アンケートの集計結果がクラスごとに大きく違ったりすることも珍しくありません。学習者がこれまでに身につけてきた「学び方」と、先生方が授業で実践している「学ばせ方」のマッチングの度合いによって生じた違いです。テストなどの成績、観察を通した行動評価やアンケートの集計結果、ポートフォリオに残った様々なログなどを手掛かり…

校種間連携で図る、授業改善と指導の最適設計

高大接続改革について耳目にする機会は多いですが、小中高の教育活動の異校種間接続についてはそれほどでもないように思います。生徒が小中高で学ぶ12年間にわたり、指導目標や学ばせ方などが連続性を以て段階的にきちんと配列されていることは、その間の教育活動の無駄や矛盾を取り除き、成果を最大化するための絶対要件です。学習指導要領の上で整合性のある学びが設計されていても、それぞれの校種の先生が現場での経験に照ら…

教科学習指導以外でも実現したい校種間連携

授業公開を機に行う小中校教員の意見交換、出前授業、考査問題やレポートの閲覧など、異校種間の連携を通じて授業の改善や指導計画の最適化を図る方法をご紹介してきましたが、もう一歩踏み込めるようなら検討してみたいのが、「考査問題の作成(=到達目標の設定)における協働」と「数年後の状態と照らした分析(コホート研究)」「総合的な学習/探究やキャリア教育の接続」です。いずれも、現場の先生の負荷が小さくありません…

下級学校の取り組みと成果を知る、参観以外の方法

校種間の学びを正しく接続するうえでの問題の一つは、下級学校が取り組んだ教育の成果を上級学校が正しく踏まえきれていないことにあるのではないかと思います。生徒が小中学校で体験してきた/達成してきたことを高校の先生方がこれまで以上に知る機会が必要と考えます。小中学校を訪ねて成果発表会や作品展示を見るたびに「こんなことまで出来るのか」と感心させられます。相互参観や研究協議、出前授業などを通して上級学校での…