校種間連携で図る、授業改善と指導の最適設計

高大接続改革について耳目にする機会は多いですが、小中高の教育活動の異校種間接続についてはそれほどでもないように思います。生徒が小中高で学ぶ12年間にわたり、指導目標や学ばせ方などが連続性を以て段階的にきちんと配列されていることは、その間の教育活動の無駄や矛盾を取り除き、成果を最大化するための絶対要件です。
学習指導要領の上で整合性のある学びが設計されていても、それぞれの校種の先生が現場での経験に照らして設計図を解釈しますので、高校の先生が小中学校の指導要領を読んで想像できるものと、実際に小中学校に足を運んで目にする光景とは違っている可能性もあります。
特に、今回の学習指導要領の改訂は「史上最大の変化」を伴うものですので、隣接校種でどんな教育を展開し、生徒がどのように成長しているのかを改めて確認することなく、過去のイメージで考えていては、校種間の接続に整合性を高く保つことは難しいのではないでしょうか。
異校種の学校で行われている授業公開や成果発表会を覗きに行ったり、出前授業で異校種の生徒に教えてみたりする機会をこれまで以上に積極的に作る必要がありそうです。
少なくとも、職員室に異校種の教科書は常備しておき、新しい単元に入るときには、生徒たちが小中学校で何を勉強してきたか、章末問題などを参考にどこまで学びを深めていたか、確認してから指導を立案するようにしたいところです。

#1 隣の校種での授業を知るのは、学びの接続の大前提

今教えていることが、どのように次の学習につながるのか
教材研究は次のステージの学びを知ることから
生徒が学んできたことを知らずに授業は設計できない
各教科の学習内容以外にも把握しておくべきこと

#2 授業公開と研究協議~指導に込めた意図の共有

高校で行われる研究授業・授業公開を機会として
参観者に対して、指導に込めた意図をきちんと説明
高校教育改革の成否は、小中学校との意図共有にかかる
協議の場では小中学校側からも積極的に発信を

#3 異校種の生徒に教えてみることのメリット(出前授業)

出前授業を請け負うことでの様々なメリット
普段の前提が成り立たない場で得られる貴重な気づき
小中学生と比べることで気づく高校生のポテンシャル
生徒に加え、異校種の先生方にメッセージを伝える好機

#4 下級学校の取り組みと成果を知る、参観以外の方法

入試答案や出願書類で知り得るのは成果の一部だけ
定期考査の問題や採点基準を見せてもらう
長期休業期間の自由研究などのレポートも
成果発表会や作品展示を目にすることでも

#5 教科学習指導以外でも実現したい校種間連携

考査問題作りの協働で、到達目標の適正配置
考査以降のパフォーマンスを追跡するコホート研究
キャリア教育も段階を踏んで連続的に
総合学習から探究活動&進路意識の形成への接続


このシリーズでのご提案は、多忙を極める先生方の普段の校務にさらに仕事を加えることになりますが、土台を見誤ってあとで指導をやり直すよりは、トータルでの費用対効果は大きく改善するものと思います。
ピーター・ドラッカーも「いかに優れた部分最適も全体最適には勝てない」と言っています。自校の教育活動を設計するときは、12年間にわたる初等中等教育全体の中で、自校がどのような部分(役割)を引き受けるべきかを考えることはとても大切ではないでしょうか。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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