生徒の現況と意識を把握してから新学期をスタート

いよいよ3月も今日を入れて残り2日となりました。新年度を目前に、新たな指導/取り組みを思い描いておられることと拝察します。意欲的なチャレンジは、指導の幅を広げ、その中から良いものを選び出して、さらにブラッシュアップすることで、改善もどんどん進んでいくはず。
しかしながら、指導が所期の成果を結ぶか否かは、生徒が備えているものとのマッチング次第。生徒がどんな経験をもち、どんな能力やスキルを獲得しているか、どんな意識でいるかを十分に把握しないことには、せっかく起こした指導計画も「空回り」するばかりかもしれません。
既に持っている「良いもの」に気づかないまま、こちらがお膳立てしたものを押し付けてしまい、「角を矯めて…」という事態もあり得ます。
こうした観点でこれまでに起こした記事を、思いつくままピックアップしてみました。いくらかでもご参考になれば、この上ない喜びです。

授業開き/オリエンテーション(全4編)

まずは、何はともあれ、どの科目でも行うことになる「授業開き/科目学習のオリエンテーション」でしょうか。生徒が入学までに経験してきた「学び方」も以前とは違っているかも。まずは、その把握です。
 #01 シミュレーションを通じた学習法ガイダンス

 #02 授業開きを起点に継続的に行う学習法確立指導

 #03 指導に臨む前の目線合わせと、効果検証への備え

 #04 スタートに立った生徒に伝えていること
上記のシリーズは、教科学習の導入指導に焦点を当てていますが、教育活動全体を円滑、且つ効果的に進めるには、生活、学習、進路の各領域で生徒への期待や指導方針を最初に正しく伝えることも大切です。

先生方の思いと全く違うところに生徒の意識が向いていることもあります。先生方が意図するところをきちんと伝え、齟齬を防ぎましょう。

中学での経験を踏まえて考える「高校での探究活動」

新課程への移行で「総合的な探究の時間」が正式に導入されて丸1年。昨年度の指導/これまでの試行を踏まえた、プログラムのさらなる改善が図られているものと拝察します。
しかしながら、指導はすべからく「生徒の現況」と「目指すゴール」を結んだ直線状に設計するもの。入学してくる生徒が何を経験し、どんなことができるようになっているかを知らないことには始まりません。
探究活動のオリエンテーションを行う前に、入学前の経験(どんなテーマに、どんな形態で取り組み、どんな成果を得たか)を質しておきましょう。オリエンテーションまでの「宿題」として、アンケートフォームに投稿させるのも効率的なやり方のひとつです。

探究活動に限ったことではありませんが、指導の効果を測定して、継続的に「より良いプログラム/指導法」に近づいて行くためには、指導を開始する前の「初期状態」を把握しておくことが大切です。
数ヶ月、半年、1年と時間が経った後の「到達点」だけを見ても、生徒一人ひとりがどれだけ進歩、成長したかはわかりません。指導で得た効果は、指導の前と後の「差分」の中にこそ現れます。
探究マインドや探究の方策の獲得を目的とする指導を重ねて行くわけですから、まずはアンケートなどで、入学時点における生徒の意識や姿勢を把握しておきましょう。(cf. 探究活動の効果測定アンケート



当たり前のことですが、新入生は様々な思いを胸に学校に入学してきます。その思いには「小中学校での生活で見いだした夢や目標」「これまでを振り返っての反省」などに加えて、生徒募集に際して学校が発信したメッセージから受けた刺激をもとにしているものもあるはず。
これらをしっかりと言語化させてみると、生徒一人ひとりをより良く理解することもできると思いますし、中学/高校生活を始めるに際しての決意や覚悟もより強固なものにできるのではないでしょうか。
当然ながら、生徒募集を通じて入学前の生徒と交わした約束にどのようなものがあったか、指導に関わるすべての先生(学年、教科)がきちんと知っておき、それに沿った指導を展開する必要があるはずです。



新入生のみならず、2年生、3年生になる生徒に対しても、取り組ませるべきこと/把握しておくべきことが少なからずあります。
2年生に進級する生徒には入学時に思い描いた自分に照らして、新しい1年間をどう過ごすか、改めて決意を表明させてみましょう。
前段のように、入学してすぐのタイミングで、決意と覚悟を言語化させておけば、1年後の照らし合わせのための「材料」もポートフォリオにきちんと保存させておくことができるはずです。
指導を考えるときは、その場の用を満たすことだけでなく、先の展開/必要も見据えておくべきだということだと思います。
3年生(最上級生)になる生徒には、現時点での第一志望に対して、明確な志望理由を言葉にできるか試しておきたいところです。ゼロ学期のうちに「志望理由を言葉にしてみる」タスクを課していたならば、4月を迎えてどこまでそれが出来ているかを確かめてみることも重要です。
受験期を迎えるための準備は、春から始まっています。部活を引退して/夏休みを迎えての切り替えだけでは準備不足による躓きが心配です。
別稿「現2年、現1年に対する、進級を見据えたゼロ学期指導」で書いたことは、その時にやり損ねてしまい、1学期を迎えてから時間を巻き戻してやり直しても、少々タイミングを逸したことになります。
とは言え、ゼロ学期の指導で狙っていたことと、4月を迎えてできていることの差分を把握した上で、もし埋めるべき不足があれば、4月からの指導の中で、相応の措置を講じていく必要があるはずです。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一