高大接続改革入試初年度生を迎えて9か月

新しい年を迎えて一週間が経ち、今日が始業式という学校も多いかと思います。昨年4月に高大接続改革入試初年度生となる新入生を迎えて既に9か月が経過したことになりますが、新しい学力観に沿った学ばせ方の転換はどこまで進んできたでしょうか。
本年度の成果をきちんとたな卸しして次年度以降に継承するとともに、新しい取り組みの中に見出された課題をしっかり特定し解決を図る必要があります。今日から年度末まではこれに当てる重要な期間です。

❏ 新しい学力観に沿った学ばせ方への転換は図れたか

高大接続改革とその先にある本丸たる新学習指導要領では、思考力・判断力・表現力がこれまで以上に重視されるのは改めて申し上げるまでもありません。
学力観がパフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルに切り替わるとともに、学習型問題正解が一つでない問題も増えてくるはずです。
読んで理解したことをもとに考えたことに、第三者の理解や共感を得られるだけの表現を与える力が求められる以上、そうした力を求める(=育み、試す)場面を普段の授業の中でどれだけ作れたかが問われます。
日々の授業を振り返ってみたとき、そうした場面を過年度に比べてどれだけ拡充することができたでしょうか。
ご自身の授業についてだけでなく、教科内外の他の先生の授業についても、以前との違いに着目して新たな取り組みの成果とそこに生じた課題が何か、ともに振り返って共有してみるべき時機を迎えています。

❏ 考査問題はどのように変わったか

学ばせ方が変わるのは、生徒に獲得させるべき学力が変わったからであり、当然ながら「学習の成果を測るモノサシ」である考査問題も新しい学力観に沿ったものに変わる必要があります。
生徒は考査問題に合わせて自分の勉強のスタイルを無意識のうちに作り上げていきますので、考査問題の刷新が遅れると学びの方向性を誤らせるリスクを招きます。
昨年度までの考査問題と現在の考査問題との間に、どのような違いがあり、新テストの試行問題や意欲的な大学の新傾向問題などが示す方向性とずれが生じていないか、確かめておく必要がありそうです。
大学入学共通テストで求められる読解力にしても、過去の教室で想定していたものとは大きく異なるように感じます。
考査問題改革も、周囲の先生の取り組みにも目を向けることで、ご自身の積み上げてきた工夫を相対化しておく必要があろうかと思います。
昨年末には第2回試行テストの採点結果が速報として公開されました。
今一度、問題と正答率、さらには出題に込めた意図などに目を通しておくことが如上の点検に向かうための準備です。
正答率が極端に低い問題は、生徒がこれまでの学習で身につけてきたものと新テストが求める力との隔たりを端的に示唆しています。

❏ 次期学習指導要領に向けた準備に遅れはないか

各学校では、次期学習指導要領に向けて「探究」「カリキュラム・マネジメント」「ポートフォリオ」などをキーワードに教育課程や指導プログラムの見直しが計画・推進されていると思います。
それらの計画について、スケジュールの遅延が生じていないかもこの時期に点検しておく必要があろうかとも思います。
遅延がある場合は、スケジュールの再設定は喫緊の課題です。放置しては遅延が拡大するばかりです。
また、改善策が具体化したり、先行的に試行してみたりすると、思わぬ課題が見えてくることも少なくありません。担当した先生方の気づきを校内でシェアしておく必要もあるはずです。
探究的な学習のプログラムの開発やポートフォリオの導入では、各教科の連携や、校務分掌の垣根を超えた協働が不可欠だからです。
現1年生の指導に現場で当たった先生方が見出した成果と課題を、学校全体で共有する場を今学期中に用意すべきです。

❏ 改革への意図をステークホルダーと共有できているか

こうした改革を推し進めた場合、当事者の思いが他のステークホルダーと十分に共有されず、両者の思いがずれていくこともままあります。
学校が実現を目指している教育の在り方などを、変革期だからこそしっかりと伝えていく必要があります。
以前の記事「教育目標や指導方針をちゃんと伝える」でも申し上げた通り、目標とするところをきちんと伝えておくことは、個々の指導に対する評価も大きく左右します。
昨年6月に公開したシリーズ「新課程への取組を伝える学校広報」でお伝えしたことに照らし、新テストや新課程への学校としての取組を十分に伝えて来られたか、この機に点検しておきたいものです。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一