チームで取り組んでこその授業改善

より良い授業の実現は、先生方一人ひとりの仕事でもありますが、チームで取り組んでこそ、知見や発想の交換を通じて効率よく進めることができます。自分一人で頑張っていても、気づけないことや思いつかないことが多々あるはずです。先生方一人ひとりの試行錯誤と努力の中で作り上げてきた優れた実践を互いの良さとして学び合ってこそ、校是とすべき授業像の姿が見えてくるのではないでしょうか。個々の先生が自ら工夫を重ねること…

組織的授業改善の土台: データを使った効果測定

効果測定を重ねながら、優良実践の抽出と共有を継続的に行っていけばそれぞれの先生方が持っておられた強みの集合体として、共通項を一定以上に含む「本校の授業のありかた」の具体的な姿が徐々に表れてくるのではないでしょうか。授業改善に向けた協働の中で、先生方が互いの実践から学び、指導効果の高い指導手法を共有していけば、学ばせ方・教え方における担当者による差は自ずと縮小に向かうはずです。これまで取り組んでなお…

生徒にYESと答えてもらいたい質問

指導目標の達成により大きく近づいた指導(=付加価値の大きな指導)を特定して共有を進めることで、組織的な授業改善が進みます。先生方一人ひとりが、より良い指導を目指して試行錯誤を繰り返すことは大切ですが、その段階に止まっていては、限りある教育リソースを浪費するばかりではないでしょうか。 ❏ 結果学力を測るモノサシの精度を高める 結果学力については、昨日までの記事などにも書いた通り、テストの結果を用いて…

箱ひげ図をどう読むか、エクセルでの作り方

学習指導の効果測定には、模試や外部検定のデータを用いて分布の変化を捉える必要があるのは昨日の記事で申し上げた通りです。一般的に利用されている平均点の推移で捉える方法では、層別の動きが捉えられませんし、上下への動きが相殺して平均値の変動は小さなものに集約されてしまうこともあります。 追記:Excel 2016から箱ひげ図の作成機能が実装されています。使い方は「箱ひげ図を作成する」(Officeのサポ…

知識活用の機会を生徒が認識できないとき

昨日の記事では、授業内外に「理解して覚えたことを課題解決に用いる場面を設けることが、学習目標の理解や学習を通じた成果(学力向上や自分の進歩の実感)を確かなものにする上、授業内活動を高めて対話的で主体的な深い学びの実現に近づく可能性をデータで示しました。しかしながら、理解したことを用いて解決する課題が授業内外に整えられているのに、生徒の側でそれを「知識活用の機会」として認識していないというケースが稀…

知識活用の機会を整えて授業改善を加速

ようやく夏も終わりそうですが、今年も多くの学校の授業評価アンケートのデータをお預かりして、分析させていただきました。データからは様々な「問い」をもらいます。それまで考えていたことだけでは、説明がつかないデータのことです。そのたびに、あれこれ考えて「データを説明できる仮説」を作り、実際に授業を観に行ってそれを確かめたりするのは、なかなか骨の折れることではありますが、ことのほか楽しい時間でもあります。…

リフレクションシートの記載を参考に観察精度を高める

生徒一人ひとりにその日の授業を振り返らせるのは、できるようになったことを「たな卸し」して学びに対する自己効力感を高めると同時に、次に向けた自分の目標を設定させるためですが、そこに書き出されたことをしっかり読めば、生徒一人ひとりが抱えている課題や達成感を覚えた箇所などを知る手掛かりになります。先日の「今日の授業でどんな気づきがあったか」で書いた、リフレクションシートを熟読して授業者が意図したことがど…

新しい学力観に沿った学ばせ方への転換

高大接続改革以降の入試では、「テクストを読み、そこで理解したことをもとに思考し、その結果を表現する力」 が重要視されます。 教科書や資料に書かれていることを理解する場面で先生が不用意に肩代わりしてはいけませんし、正解に至る工程を丁寧に解説して納得させるだけでは足りないものがあります。また、発言がなかなか出ない/思考が膨らまないとき に採るべき方法も確立しておかなければなりません。 ❏…

荷物を増やしても、学びが膨らむとは限らない

昨日、テレビの某情報番組で、東京近郊の公立中学生が通学で持ち歩く通学カバンとバッグの重さの平均が8.6キロにも及び、その原因は脱ゆとり教育で副教材が増えたこととのレポートがありました。たしかに、授業を参観に教室を訪ねてみると、生徒のカバンは大きく、通路にあふれ、机間指導もままなりません。でも、荷物が増えた分だけ、学びが膨らんでいるのでしょうか。持ち運んでいる教材のうち、使いきれていないものがかなり…

多国籍化する社会での共生と協働

センター試験に代わる新共通テストで、民間の検定試験を利用して4技能を測る方針が打ち出され、小学校では外国語活動が3年生から、5年生からは正式な教科になるなど、英語教育についての議論が盛んです。 ❏ 地域コミュニティの国際化 かつて、国際化社会といえば、海外に出て活躍するというイメージでしたが、今や、国内で暮らしていても外国人との交流や関係は珍しくありません。 2016年の在留外国人は…

考察: 大学入学共通テスト&高大接続改革

2020年の高大接続改革もいよいよ近づいてきと感じます。新テストに最初に挑む世代もすでに中学3年生。来年は高校に入学してきます。高校の教育成果は3ヵ年の積み上げですから、本年度のうちに対応準備を進めたいところ。 まだ全容が見えているわけではありませんが、現時点で見えているところから、やるべきところをしっかり考えていくべきだと思います。 文科省、大学入試センターからの先週の発表を受けて、考えるところ…

高大接続改革では"探究活動"と"行動評価"にも注目

先週16日に検討・準備体制などが発表された「大学入学共通テスト(仮称)」では、英語の外部検定利用や国語と数学の記述式問題などが話題になっていますが、「第1回、第2回モニター調査実施結果の概要について」や文科省HPで公開された「高大接続改革の進捗状況について」などにも注目すべき箇所があります。 ❏ 探究活動への取り組み方が合否を分けるようになる 以下は、文科省HPの「高大接続改革の進捗状況について2…

新共通テストの採点基準~正しく適用できる力

前々回から引き続き、5月16日に発表された「大学入学者共通テスト(仮称)」のモデル問題についての考察です。出題内容とともに着目すべきなのは採点方法。また、2回にわたって実施されたモニター調査実施結果からも今後の指導のあり方を考えさせられることがあります。 ❏ 今回提示の採点法は、条件付き記述に特有のもの 共通テスト(仮称)のサンプルで示された問題では、出題内容に加え、採点方法についても着目しておく…

モデル問題(共通テスト)を見て #2数学

昨日に続き、共通テスト(仮称)のモデル問題を見て感じたところをまとめます。数学のモデルでも、「確かめる方法を数式を使って説明せよ」 など、協働での課題解決という「対話相手が存在する場面」 を想定しないと意図が見いだせない問い方が散見されます。 地歴・公民分野や理科の記述式問題は平成36年度の導入に向けて検討を進めるとのことですが、「社会生活の中での言語活動、及びそこで求められる思考・判断・表現」 …

モデル問題(共通テスト)を見て #1国語

先日(5月16日)に、大学入試センターから「大学入学者共通テスト(仮称)」の国語と数学のモデル問題が公表されました。また、採点基準案やモニタ実施の結果も出ています。何回かに分けて考えたところをまとめてみます。 ❏ コンピテンシーを発揮する場の想定が変化した? 国語のモデル問題をみて、真っ先に感じたのは 事業者からの提案のどこが行政のガイドラインに抵触するか判断する 対立する意見がある…

先輩の経験から間接的に学ぶ機会

卒業生を招いて行う進路行事は、様々な世代からそれぞれの経験を踏まえたメッセージを在校生に伝えてもらう場。在校生が、先輩たちの経験から学び、これからの自分に向き合うきっかけとして整備が必要です。まだ訪れたことがない地域を旅行する前に、その場所を経験した人の話を聴くのが大いに参考になるのと同じかもしれません。その人と同じ行程を踏むのでは意味はありませんが、間接経験を通し、自分ならどうするかを考えること…

卒業生を招いて行う進路行事(その2)

卒業生を講師として招いて行う進路行事では、卒業生が今どのフェイズにいるかで伝えてもらいたいことが異なります。昨日の記事では、「難関大に合格したばかりの生徒」「大学で前期を過ごし、ひと通りを経験した卒業生」「専門課程に進んだ学生」 などに話して貰いたいことを思いつくまま並べてみました。もう少し年代が進んだときに話してもらいたいこともありますし、講演タイプに加えて座談会形式やパネルディスカッションの形…

卒業生を招いて行う進路行事(その1)

卒業生を講師に呼んで行う進路講演は多くの学校で見かける行事です。進路希望を叶え、新たな世界で頑張っている先輩の姿に自分の未来を重ねてやる気を出してくれる後輩たちも少なくありません。 ❏ ある段階を経て伝えられるようになること 卒業生とひと括りにしても、その立場は実に様々です。ある年代/フェイズにいる一人が話せることには自ずと限りがありますので、いろいろな世代から講師を選ぶことで、生徒の気づきを広げ…

合格体験記は誰に書かせるか

進路の手引きや進路通信に掲載する合格体験記は、誰に書いてもらうかで、後輩に伝わるメッセージはずいぶん違ったものになります。記載されている内容以上に言外に伝わるものの影響が大きいことを踏まえ、誰に何を書いてもらうか細心の注意を払って戦略的に考える必要があるのではないでしょうか。 ❏ 難関を突破したという事実だけでなく 進路希望を高く持ち、努力を続けて難関を突破した生徒は立派ですが、その事実だけでは、…

勉強を好きにさせる学ばせ方

先週半ば、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所との共同研究(親子パネル調査)の結果速報がプレスリリースされました。方々で取り上げられましたので、ご覧になった方も多いと思います。 「子どもの生活と学びに関する親子調査2016」 ❏ 勉強が嫌いでも好きに転じる可能性がある 勉強嫌いが小6から中2にかけて増えていく一方、嫌いから好きに変わった生徒も一定割合で存在することに、明るいものを感じまし…