練習場面での成果確認

練習に取り組むことで、どんなことができるようになるかイメージできていないと、練習はただの反復・作業と変わらなくなってしまいます。生徒が先生の指示に従って、元気よく練習していたとしても、「どんなことができるようになるのか、どのように進歩しているのか」をきちんと認識しているかどうかは、とても大切だと思います。筋トレをするときも、どんな意識をするかで効果が違うとか。メニューを漠然とではなく、動かす筋肉を…

第一志望をあきらめさせない指導

表現は多少違っても、「第一志望を諦めさせない」「進路希望を堅持させる」ことを指導目標に掲げているケースは少なくありません。目標とした以上、どこまで達成できたか確認は行うべきですし、継承・共有すべき指導法の所在を特定するには、成果を定量的に捉える必要もあるはずです。 ❏ 最後まであきらめずに挑んだ生徒はどのくらいいたか 最終的に合格できたかどうかは、大学入試が選抜試験という競争の場である以上、「諦め…

起業家教育について考えるところ

起業家教育という言葉を耳にするようになってだいぶ経ちました。試しに、「起業家教育&高校」で検索してみたら55万件もヒットしました。どんな効果があるのかと調べている中、野村総研が行った「起業家教育の普及等に関する調査(最終報告書)」 を見つけました。 ❏ 高校での起業家教育は何をもたらすのか 「情報収集・分析・問題解決力が高まった」は、効果があったが8%、どちらかと言えば効果があったが47%と、やや…

学びの広さと深さ

昨日の記事「進学前に改めて考えさせたい、大学で学ぶことの意味」でも書きましたが、自分が興味があることだけを掘り下げて学ぶのではなく、選り好みせずに広く学ぶことも重要だと思います。 様々な専門を持つ方と触れ合うことでの気づきもあれば、単位を揃えるためにやむなく履修した授業で偶然みつけた「自分の専門・興味と、他の領域の関係性」などもあるはずです。 ❏ 広く学ぶことのイメージ 各教科・科目の内容を学び始…

生徒が自分で気づける機会を作る

教科学習指導で、その科目に固有の知識や技能を獲得させようとする場合、一つひとつ丁寧に説明して理解させる、いわゆる「教える」というアプローチのほかに、作業をさせたり、問いかけて考えさせたりする中で「生徒自身に気づかせる」というアプローチがあります。思考は一定の知識がなければ成立しませんので、「しっかり教える」ことも大事であり、その責任から逃れることはできませんが、生徒が自分で気づけるようにしていくこ…

シラバスの起草・更新に際して#INDEX

シラバス(年間授業計画)は、単体で機能させようとするのではなく、グランドデザインを最上位に据え、到達目標一覧、学習の手引きと補完させ合うことで、使いやすく本来の目的を果たし得るものになります。様々な学校で如上の書面群を拝見しましたが、互いの関連付けが曖昧なままにされているものも少なくありません。時には、記載内容が競合を起こしているケースすら見受けられます。各科目の指導を通じて達成を目指す目標は、学…

異校種連携で行う授業研究の必要性

異校種の授業を参観する機会はどのくらいあるでしょうか。中高一貫校なら中学と高校の先生が相互に授業を観るのに大した制約はないはずですが、頻繁に、あるいは定期的に参観しているというケースは多くないように感じます。ましてや、設置者が異なる学校の間では、そもそも観に行くチャンスも少ないのが実情でしょう。 ❏ 生徒が何を経験・学習してきたかを知らずには… 例えば小学校での授業を中学の先生が見れば、入学してく…

高校生にとっての探究活動

高校生にとって課題研究などの探究活動は、新たな知を生成する方法を学ぶ場でもあり、また大学に進んで学んでみたいことを見つけ、さらにはその先に社会との接点を見出す進路意識形成にも繋がります。このように考えると、高校の3年間の中のどこかに、こうした活動を組み込む必要があるのではないでしょうか。探究を軸に各教科の学びを繋いだり、進路希望を形成する指導と探究活動の一体化を図ることを、本気で考えなければいけな…

『TOK(知の理論)を解読する』 を読んで

今年2月に出てすぐに買ったにもかかわらず、積読(つんどく)になっていた同書をようやく読み終えました。以前から国際バカロレアのカリキュラム、特にTOKには大変興味があり、テキストを取り寄せて読んでみたり、実際の教室を参観させて頂いたりしてきましたが、知れば知るほど大きな可能性を感じます。ただし、国際バカロレアのDPを導入するとなるとコストは膨大…。まずは、教える側がそのエッセンスをじっくり学んで、教…

生徒を活動させることの意味を考える(記事まとめ)

各地で行われる研究授業を拝見する中、協働学習やアクティビティなど授業内での生徒の活動性が、以前とは比較にならないほど高まっていることを実感します。その一方で、活動性が、「深い学び、対話的な学び、主体的な学び」 に直結し、思考力・判断力・表現力の向上やコンピテンシーとしての学力形成に直接的に寄与しているかというと、一定の疑問も残ります。そんな疑問を起点に、データを検証してみると、「個々の活動に生徒が…

せっかくの授業内活動を活かすために(その3)

授業時間内の活動性を高めることには、①生徒の頭の中を覗く「観察の窓」を開く、②他の生徒の意見や考えに触れさせて相互啓発を働かせる、③学習方策や知識の不足を生徒が相互に補完する、④知識や経験を交換することでの発想の拡充を図る、などの狙いがあるというのが前稿で申し上げたことです。 これらに加えて、 活動課題に取り組む中で使用機会を自然に増やし習熟を促すことや 生徒一人ひとりに役割を持たせることで能動的…

せっかくの授業内活動を活かすために(その2)

授業内活動を設計するときに、「この活動で狙っているものは何か」 を明確にしておくことが大切です。手段の合理性や妥当性は、目標に照らしてこそ評価ができるということを忘れないようにしたいものです。 昨日の記事では、 生徒の頭の中を覗く「観察の窓」を開くこと、 他の生徒の意見や考えに触れさせて相互啓発を働かせること について考えました。 今日はその続きとして、 学習方策や知識の不足を生徒が相互に補完する…

せっかくの授業内活動を活かすために(その1)

授業における学習者の活動性を高めることは目的ではなく、別の目的を達成するための手段です。個々の活動によって目指しているものをきちんと区別しておけば、その活動が妥当なものか工夫の余地が残っていないか判断がつきやすくなるのではないでしょうか。 一昨日に公開した「生徒がみな一斉に反応できていることに感じた違和感」 から続くシリーズです。 活動とかアクティビティという言葉でひとくくりにするから、根っこの問…

生徒がみな一斉に反応できていることに感じた違和感

この数年、高校に限らず機会があれば小中学校の授業も参観させていただいています。素晴らしい実践、実に様々な工夫を拝見して、大いに刺激されます。生徒や児童の活動性を高める工夫が随所に凝らされ、「おおっ、こんな方法もあるのか」と勉強になります。しかし、小中のみならず高校も含めた話ですが、授業内活動の充実を図ったことの成果が、どこに繋がっているかに注目してみると、ちょっと立ち止まって冷静に考えてみる必要を…

教室の学びをサンドウィッチに喩えてみると

学習目標の理解と言語化を伴うアウトプットが伴えば、学習の成果は確かなものになるのは、これまで様々な記事で申し上げてきた通りです。 生徒の学習活動を、「目標提示」と「アウトプット」で挟んで、きちんとサンドイッチにしましょう。間に挟まれる「生徒自身による学習」は、言ってみればサンドイッチの中身です。パンで挟まれていないと食べにくくて仕方ありませんよね。 ❏ 1枚目のパン: 導入時にやること 本時に学ぶ…

次期学習指導要領改訂スケジュール

次期学習指導要領は、平成32年に小学校で、平成33年に中学校で全面導入され、高校では平成34年度から年次進行で実施予定とされています。平成32年度からはセンター試験に代わる新テストが実施されるなど、今後数年間は様々な変革への対応に迫られることになりそうです。 二度手間を防ぐには、正式な発表を待つのが得策ですが、かといって座して待っているだけでは後手を踏むリスクばかりが増えそうです。 ご参考: ht…

ルーブリック評価の作成と運用

ポートフォリオと並び、次期学習指導要領で導入が検討されている評価ツールの一つが「ルーブリック」です。基本形は、観点ごとに段階的な到達状況を配置したマトリクスに各々の規準を書き込んだものであり、目標準拠評価(絶対評価)の一つです。あまり馴染みのないせいか、導入を終えて本格的な運用に踏み込んだ学校はまだ少数派。今からスタートして実運用を経てブラッシュアップしておけば、2020年には他校への大きなアドバ…

カッコつきの“キャリア教育の充実!”に思うところ

「キャリア教育の充実」という言葉があちらこちらで聞かれますが、職業調べ、職場体験などを起点に行うことが多く、そのやり方にぬぐいきれない疑問を少々感じています。もちろん成果をあげているケースもあると拝察しますが、どのような意識の変化を目指した体験なのかは一度しっかり考えてみる必要があろうと思いますし、私の知る狭い範囲では、その成果か検証がなされているのはむしろ少数派のようにも感じます。 ❏ 自らのゴ…

高大接続改革に向けて今できる準備(その2)

昨日の記事でご紹介した「採点ルーブリック」ですが、すでに一部の学校では、定期考査において自由英作文や意見論述問題などで利用が始まっているようです。最初から満点のものなど作りようもなく、使いながら、規準そのものの妥当性(※)を高め、適用しやすいものに改めていくことが大切です。 「直感で与えた点数と、基準に沿った点数が一致するのが良い基準」というのも荒っぽく聞こえるかもしれませんが事実です。良い答案だ…

高大接続改革に向けて今できる準備

大学入試改革では、これまでと違った新しいタイプの問題が登場すると考えられています。昨年末に文科省のホームページでイメージ例が公表されましたが、検討の途中とあってまだサンプルは十分ではありません。現段階では、出題の変容を正確に予想するのは困難です。しかしながら、すでに一部の大学で出題されている「正解がひとつに決まらない問題」 などは、今後も出題を増やすはず。正解がひとつに決まらない以上、結論を書かせ…