月: 2022年10月

探究活動や課題研究と成果発表会(まとめと追記)

課題研究や探究活動の成果発表会は、生徒一人ひとりが取り組んできたことを互いに知り、相互に新たな刺激を得る「相互啓発」の機会としてとても大切だと思います。先輩の発表を見た後輩たちも大いに刺激を受け、自分たちも頑張ろうとの思いを持ってくれるはず。こうして受け継がれていく成果と刺激は、やがて学校に「文化」を創り出していきます。さて、その成果発表会ですが、押さえるべきところをきちんと押さえないと、形だけの…

成果発表会の“成果”(その2)

前稿(その1)でも書いた通り、課題研究/探究活動の成果発表会は、次学年に多くのものを引き継ぐための教育機会です。先輩学年が考察を重ねてもなお残った未解決の課題は、後輩学年の研究テーマになり得ますし、研究や考察の中で用いた/見出した優れた手法は、倣うべきものとして後輩たちにもしっかりと学ばせたいものです。自分自身で探究に取り組んだ経験は、大学で何を学びたいのか/学んだことを通じて社会とどう関わるのか…

成果発表会の“成果”(その1)

機会あるごとに、各地の学校での探究活動/課題研究の発表会を参観させていただいております。プレゼンやポスターからは、生徒一人ひとりの頑張りや先生方がご指導に凝らした工夫の成果が伝わってきます。活動を通して得たもの(テーマに関する新たな知見のみならず、探究を進める上で必要なスキルや姿勢も含めて)を発表するのは、成果をまとめて、確かなものにする「仕上げ」のためですが、さらに大きな成果をより広い範囲に届け…

他教科の授業で生徒が学んでいる「探究の方策」

総合的な探究の時間が「教科横断型の学びの場」である以上、自教科以外の授業で生徒がどんな探究のスキルや姿勢を身につけているかを知ることは不可欠。それらを踏まえないことには、生徒が獲得しているものを活かした/土台にしたその先の指導にはなり得ません。探究活動は、各教科で学んだこと(学習内容そのものに加えて、それらを学ぶことを手段として獲得した能力・資質)を、自分事としての課題の解決に使ってみることで、そ…

PPDACサイクルを用いた課題研究(後編)

昨日に引き続き、PPDACサイクル(以下の5フェイズからなる統計を使った課題発見&解決の手順)を用いた課題研究について考えます。 Problem(問題): 問題の把握と明確化 Plan(調査の計画): 研究計画づくり、不足する知見の補完 Data(データ): データの収集・整備、統計表の作成 Analysis(分析): グラフの作成、問題点の分析 Conclusion(結論): 分析結果の解釈、レ…

PPDACサイクルを用いた課題研究(前編)

課題発見や課題解決を行う枠組み(型)の一つに、「PPDACサイクル」というのがあります。 未だに認知度は高くないようですが、総務省統計局が開設している 「データ・スタート」というWEBサイトに紹介されています。ちなみに「なるほど統計学園」もお役立ちサイトです。この枠組みでは、問題の解決に至るまでのプロセスを以下の5フェイズで構成されるものと考えています。 Problem(問題): 問題の把握と明確…

探究活動の充実には図書室との連携が不可欠

探究型学習の充実を図ろうとするとき、図書室との十分な連携は欠かせません。各教科の学習で「調べる、資料を探す」といった活動を増やしていこうとするときも同じです。これらを教育活動の軸に据えて全校で力を入れていこうと決めたのであれば、なおさらでしょう。学校をお訪ねするとき、可能な限り図書室を覗くようにしていますが、自習室としての使用がメインになっていることがしばしばで、蔵書群に学校の教育目標や特色ある教…

成果発表会は、先生方が指導を振り返る機会

生徒が1年かけて取り組んできたことの成果は、取りも直さず、先生方が重ねてきた指導の成果にほかなりません。成果発表会での講評者からの指摘や助言などからどれだけ反省(課題)と展望を得て、その先の活動に活かせるかは、生徒のみならず、先生方にも問われるところだと思います。日々の学習でも、「振り返り」は次に向けた課題形成を図るのに欠かせませんが、特色ある教育活動として小さからぬリソースを割いて取り組んでいる…

良いものを選んで重点的に~探究活動の成果発表

探究活動や課題研究の成果発表会では、優れたものをきちんと選び出してスポットライトを当てるよう、その運用には細心の注意が必要です。後輩たちは先輩の発表を見て参考やヒントにします。良いものと悪いものの違いがはっきり判るようにしてあげないと、適当にお茶を濁したものを目にして「あの程度でOK」という誤解を抱くかも知れません。成果を発表させる/まとめる機会は、学校全体で取り組んできた新たなチャレンジが、次年…

"探究活動の作法"を学ぶ機会は整っているか

総合的な探究の時間(探究活動)が「自己の在り方生き方を考えながらよりよく課題を発見し、解決していく」ための能力・資質の育成を目標とする学びの場であることは言うまでもありません。前半の「自己の在り方生き方を考えながら」を実現するには探究テーマの選択に際して「進路との接点」をしっかり意識する必要があります。 探究活動の課題~調べ学習との境界と進路への接点 探究活動の目的から考えるテーマ選び ここで目指…

探究型学習(課題研究等)の成果をどう測るか

課題研究などの探究型学習に限ったことではありませんが、何かに取り組ませたら、その成果と過程(取り組み)をきちんと評価をする必要があるのは言うまでもありません。できるようになったことを「たな卸し」することで生徒に自らの成長を自覚させるとともに、これまでの取り組みに足りなかったものに気づかせ、「この先、何にどう取り組んでいけば良いか」を考えさせる/展望を立てさせることが評価を行うことの第一の目的です。…

難易度の調整、適正な負荷

1 難易度をどう考え、どのように調整するか 1.0 難易度をどう考え、どのように調整するか(序)1.1 難易度をどう考え、どのように調整するか(その1)1.2 難易度をどう考え、どのように調整するか(その2)1.3 学習内容の難しさと苦手意識 2 負荷の高め方 2.0 負荷の高め方(序)2.1 難易度の感じ方を把握し、負荷耐性を見極める2.2 負荷を高めるときになすべき配慮と工夫2.3 事前指導で…

生徒にも学ばせたいファシリテーション・グラフィック

先生方の板書などを通じて、生徒は情報を整理し、構造化する方法を学んでいます。(cf. 知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得)結果として残った板書やプリント/スライドなどは、各単元に固有の知識をすっきりと提示し、生徒が覚える上での利便を図るものになっていると思いますが、それらが出来上がるまでの工程そのものにも生徒に学ばせたいことがあります。話し合いなどの場で、メンバーの発言(発想や意見)を拾い上げ、…

学力観の変化は良問と悪問の分け方を変える

良問とは何かという問いには様々な答えがあろうかと思いますが、良問であるために外せない要件のひとつが「求められる学力を正しく点数に換算できること」であることに異論はないと思います。パフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルに学力観の更新が進む中、従来なら「良問」とされていた問題も、今後は「測定すべき学力が点数に換算できない」ことを理由に「悪問」に分類されかねません。生徒は定期考査の出題内容に合わせ…

資料を与えて読ませる/探させる、そしてその先に

新課程の土台となった21世紀型能力では、その中核となる「思考力」を構成する要素に「問題解決・発見力・創造力」が挙げられています。cf. 全教科でコミットすべき能力・資質の涵養思考力には、これ以外にも「論理的・批判的思考力」「メタ認知・適応型学習力」といった要素が含まれますが、それぞれに応じた「獲得のための学習活動」を適切に配置したカリキュラムが必要です。 カリキュラムは{学習内容×能力資質}で設計…

自教科以外の授業も参考に「学ばせ方」を見直してみる

授業の進め方や学ばせ方を研究するとき、同じ教科の他の先生の授業を参考にするのが「普通/当たり前」のことだと思いますが、倣うべき実践を探す先は「他の教科・科目の授業」まで広げてみるのも好適です。授業の進め方には、教科ごとに「こういったもの」という固定観念みたいなものがあるのではないでしょうか。ご自身が中高で受けていた授業は思いのほか、意識に深く刻まれており、指導の組み立てを考えるときも、知らぬ間にそ…

大きな成果が出た時にこそ~実践の共有と継承

進学実績にしろ、模擬試験や外部検定の成績にしろ、あるいは授業評価や学校評価のアンケートにしろ、成果が出たときの行動こそが重要だと思います。結果を受けた振り返りというと、どうしても課題/反省点の洗い出しに意識が向きがちですが、成果をあげた好適な取り組みにも、しっかりとスポットライトを当てましょう。失敗に原因があるのと同様に、成功にもそれをもたらした要因があります。それをきちんと分析的に捉え、共有と継…

道具が変わっても必要であり続けること(まとめ)

ICTの導入が進み、教室で使えるサービスやアプリもどんどん増えてきました。学ばせ方の可能性が大きく膨らみ、生徒に獲得させることができる能力・資質はさらに幅広いものになったということです。道具の使い方を含めての課題解決力ですので、新しい道具を使った様々なチャレンジの場をきちんと整えてあげることは大切です。 新しい道具は、思考法や行動様式も変える しかしながら、その一方で、たとえ道具が変わろうとも、生…