月: 2022年9月

進級後の指導を見据えて(円滑な学びの接続)~まとめ

教科学習指導にしても、進路指導や生活指導にしても、単年度で指導が完結するわけではありません。ある学年での指導は進級/進学後に必要になるものを獲得させるためのものでもあり、そこでの指導目標が未達なら、先の指導は補完やフォローに追われ、計画は崩れていきます。カリキュラムは、単元内容を理解させることを手段に、様々な能力・資質を獲得させるために編まれているものですので、各単元の学習内容を理解させるだけでは…

前年度の指導に起因する学習指導上の課題

あるクラスを担当していて、学習指導がうまく行かない場合、その遠因が前年度までに生徒たちが受けていた授業に存在する場合があります。既習事項の習熟が不十分では学び直しに時間がかかり本時の学びが十分に深められないこともありますが、ことはそれだけではありません。生徒は授業を担当する先生の教え方にあわせて学びのスタイルを作りますが、新年度からご担当される先生が変わって学ばせ方が違ったものになれば、当然ながら…

学習内容の高度化、学びの変化に備えさせる

学びを進めていく中で、新しい学期・年度を迎えて学習内容が難しくなる局面があるのは改めて申し上げるまでもありませんが、そうした局面を迎えさせるための「準備」はきちんと行えているでしょうか。学習内容が高度化することだけでなく、科目の学びに求められるものが変わる(=学ばせ方の変化)こともまた、躓きの一因になります。学びのステージが次に進んだときを想定した指導を心掛けましょう。 ❏ 学習内容が高度化するタ…

助言や指示は、生徒自身がじっくり振り返ってから

生徒に課題を与えて取り組ませ、上手くいかなかった場合に、的確な助言・アドバイスを行って、次のチャレンジで上手くいくように導くのは指導者の役割でしょうが、生徒が自ら「何をどうすべきか」を考え尽くす前に指導者が「先回り」してしまうと小さからぬ弊害が生じます。新課程の土台にある「21世紀型能力」では、その中核である「思考力」の構成要素のひとつに「メタ認知・適応型学習力」があります。メタ認知・適応的学習力…

負荷を高める/抑えるための様々なアプローチ

教材の難易度などの「学習者への負荷」を抑え過ぎると、生徒の能力を十分に引き出せず、成長にブレーキをかけてしまうことがあります。別稿でも書いた通り、「できた気にさせてしまうリスク」もあり、楽々とクリアできる課題ばかりでは、もう一歩先を目指す上での課題を見つける機会を持てません。目的意識(学ぶことへの自分の理由)をしっかり持ち、学習方策を獲得してきている生徒には、ちょっと頑張らなければ届かないところに…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得 #INDEX

科学の進歩や社会の変化で、現在の知識は絶え間なく更新されていきます。与えられた知識を覚えるだけでは、知識のアップデートもできず、時代遅れの知識と発想で正しい選択ができなくなります。教室の学びを通して身につけるべきは、単元固有の知識・理解だけでなく、「情報を整理して理解する/情報を集めて知に編む方法」です。うっかりすると、知識付与の効率を高めるばかりに、生徒が自ら行うべきことを、教える側が肩代わりし…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その4)

前稿では、問い掛けを重ねつつ黒板上で情報を構造化していくことで生徒に「情報整理のプロセス」を学ばせることをご提案いたしました。これにより、知識の断片化や丸暗記に偏る学びといったリスクも、かなりのところまで解消できるはずです。しかしながら、蛍光ペンやサブノート式プリントを使うことになった、根っこの問題がまだ解決されずに残ります。言うまでもなく、学習内容の多さに比して授業時間が足りないという問題です。…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その3)

蛍光ペンでマークアップやサブノート式のプリントに頼る手法が抱える問題点とその悪影響を抑えるための工夫について考えた前稿、前々稿に引き続き、今回は「問い掛けで気づきを促しつつ、黒板上で情報を構造化していく」ことを軸にした、別のアプローチをご提案いたします。 2014/12/12 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 問い掛けと板書で、情報整理のプロセスを学ばせる 問い掛けで生徒の気づきを促し、確…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その2)

昨日の記事で考察した「教科書・参考書にマークアップさせる方法」に加えて、空所を設けて重要語句などを埋めさせる「サブノート式のプリント」を用いている授業も多いと思います。こちらの方法であれば、 「重要語句を一文字たりとも自分の手で書いていない」という、マーカーで色を塗るだけの方法が抱える問題の多くは解消できますが、それでもなお、様々な解決すべき課題が残ります。 2014/12/11 公開の記事を再ア…

知識の拡充 vs 情報整理手法の獲得(その1)

知識の整理と拡充を図る場面でよく用いられている方法に、蛍光ペンでマークアップさせたり、サブノート式のプリントを用意したりといったものがあります。限られた授業時間の中で、必要な知識をピックアップして漏らさず伝えていくには、一見したところ合理的で効率的なやり方にも見えますが、弊害も少なくなさそうです。情報が断片化しやすいことや、見やすくなっても記憶に刻まれにくいこと、加えて情報整理の方法を学べないこと…

情報を集めて編む作業で知識獲得の方法を学ぶ(その2)

知識の獲得は、思考力や判断力の土台作りですので、どの教科を学ばせるときにも力を抜くことはできませんが、生徒自身が必要に応じて情報を集めて知に編めるようにすることも学習指導の重要な役割です。昨日の記事(その1)では、授業の導入フェイズや学び終えてからの知識拡充の場面で課すべき「手元にある教材から必要な情報を拾い上げ、知に編み、蓄えるタスク」をご紹介し、生徒が自力で知識を獲得できるように導く方法につい…

情報を集めて編む作業で知識獲得の方法を学ぶ(その1)

生徒に一定の知識や理解を獲得させようとするときに、昔から最もよく用いられているのは「話して聞かせてわからせる」という方法かと思われますが、単元固有の知識・理解を獲得すると同時に、それらを獲得する方法を身につけさせることにも十分に意識を向けたいところです。学校を卒業した後も、科学技術の進歩や社会の変化によって新たな知識や理解を積み重ねていく必要がなくなることはありません。必要なことは自力で調べ、きち…

プロセスに焦点を当てた問い

教室で発している問いのうち、「結果」を尋ねるものと、「過程(=プロセス)」を訊ねるものの割合はどのくらいでしょうか。新しい学力観の下では「答えを出すにはどのようにすればよいか、どう確かめるか」と解決へのアプローチそのものを尋ねる問いも増えて然るべきです。正解が何であるかを訊ねるときはもちろんですが、「~が~になるのはどうしてか」という理由を聞くときも、実は、思考の「結果」を引き出しているだけです。…

対話によって学びはどこまで深まったか

主体的、対話的な深い学びを構成する要素のうち、主体性を持った学びに欠かせない【学習方策】と【目的意識】については、それぞれ以下の別稿にてデータ解析の結果に基づく考察を行いました。 本稿では「対話的な深い学び」にフォーカスしてみたいと思います。なお、主体的、対話的な深い学びについては、拙稿「主体的・対話的で深い学びの実現に向けて(全3編)」でも考えるところをまとめておりますので、お時間の許すときにご…

中高一貫校での中高/前後期接続

中高一貫校の強みは、6ヵ年を通した指導計画のもとで中断なく指導の成果を積み上げられることにありますが、中高/前後期の接続に課題を抱え、本来の強みを生かし切れていないケースもあります。中学/前期課程では高い学力向上感や積極的な学ぶ姿勢が観測されていたのに、高校/後期課程に進んだとたんに伸びを欠くこともしばしばです。 新課程が求める「学ばせ方」~学年間の円滑な接続 下図は、中等教育学校を含むいくつかの…

"正解を言って欲しい"と言う生徒

生徒や学生にアンケートで授業への感想を尋ねてみると「正解をちゃんと言ってもらいたい」という声がちらほらと混じります。先生は意図をもって敢えて正解を示していないのが傍からも明らかな場合にもです。ここから垣間見える問題は、「答えは与えられるものではなく、自分で作るもの」という発想をしっかり持っている生徒・学生ばかりではないということではないでしょうか。 2018/04/11 公開の記事を再アップデート…

生徒の答案をシェアして作る学び(相互啓発)

様々な答えやアプローチが予想される問題を扱うとき、生徒一人ひとりに個人ワークで取り組ませるだけでは、発想も広がらず、多様な考え方を踏まえた上での答えに辿り着くのは容易ではありません。生徒同士が互いの気づきを交換して、視野と発想を拡充する場として、協働や討論などの活動を授業に組み込むことが不可欠です。当然ながら、グループでの話し合いが盛り上がり、何となく答えらしきものが見えてきても、そこで学びを止め…