学習活動の段階的拡充で目指す深く確かな学び

各地の教室で拝見する、授業内活動(アクティビティ)の多彩さには、先生方の発想の豊かさとより良い学びを目指す強い意欲を感じます。
多様なアクティビティが、生徒を授業に飽きさせず、学びに関わらせる効果を持つのは間違いなさそうですが、その場の盛り上がりと裏腹に、活動が自己目的化した「やりっぱなし」も珍しくありません。
活動を経たら、「きちんと振り返りを行い、体験を学びに再構成する」という工程を踏んでこそ、「深く確かな学び」の実現が期待できます。
活動そのものへの取り組み方に習熟させる(≒学習の改善を図らせる)こともまた、活動の効果を継続的に高めていくために不可欠でしょう。
こうした「前提条件」を考えれば、授業内活動のバリエーションもただ増やせばよいということにはならないはず。段階を踏まえながら、生徒が「効果的に取り組める活動」を増やしていくことが肝要と考えます。

❏ 振り返りで体験を学びに再構成~活動は目的にあらず

体験は、振り返りを通じて再構成してこそ、学びになります。活動自体は、目的にはなり得ず、学びのための手段に過ぎません。
知識の獲得、理解の形成の観点で言えば、新たに知ったのは何か、何に気づいたか、思い出しながら生徒自身が整理していく中で個々のパーツが互いに結び付き、学んだことの全体像が浮かんできます。
課題やタスクを前に考え、行動したことも、上手くいったところとそうでないところを捉え直し(=振り返って)、次の機会でどう考え、行動すべきかをイメージできてこそ、メタ認知・適応的学習力、ひいては次の機会でのパフォーマンスの向上が期待できます。
口と体を動かしているだけの状態と、より良いパフォーマンスを得ようと「何が勘所か、何にどう取り組むか」を考え続ける場合では、活動を体験する中での「進歩」の速度に、雲泥の差が生じるということです。
振り返りは、高度な知的活動であり、最初からできるものではありません。あるパターンの活動に対する振り返りを幾度か繰り返す「練習」の中での「試行錯誤」を通じて、生徒がやり方を獲得していくものです。
教室での学びの時間を「活動」で埋め尽くしては、そもそも振り返りの時間も持てませんし、次から次へと新たなタスク/活動が課されては、如上の試行錯誤も、結論を得るところまで容易に達しないはずです。

❏ 評価基準への理解を深めながら、振り返りの方法を学ぶ

評価基準には、成果物(答案やレポート等)を評価する「採点基準」と活動そのものに焦点を当てたものがあるのは言うまでもありません。
本稿が焦点に据えている授業内活動(アクティビティ)では、具体的な成果物を伴わないこと(例えば、音読練習)も多いため、整備(+継続的な更新)が真っ先に必要なのは、後者の「活動評価」についてです。
活動場面ごとにルーブリックを設けて自己評価をさせるにしても、最初のうちは、生徒の「評価基準への理解」も不足して当然。活動と基準の適用(自己評価)を重ねる中で、規準に用いている語句・文言の意味をしっかりと学ばせていく必要があります。

こうした基準適用も、一定の反復が必要であり、活動のタイプを一気に増やしても、生徒の側では混乱の方が先に立ちかねません。
冒頭に書いた「生徒が効果的に取り組める活動」とは、振り返りをきちんと行える活動と言い換えても良いかと思います。段階を踏まえながら少しずつ活動のタイプとそこで用いる評価基準を拡充しましょう。
ちなみに、成果物が存在する場合でも、プロセス(活動)の評価は重要です。例えば、グループ討論で、賛否の分かれる問題に「納得解」を作る活動では、メンバー一人ひとりが議論にどう参加したか、どんな役割を引き受けることができたかといった「プロセス」の方が重要です。

その場で作り出した「答え」は、学びのために設けた条件(問い)の下で作ったもの。同じ状況/問題が発生しない限り、(参考や前提理解になっても)直接的な「解」にはなりません。一方、議論への関わり方、役割の引き受け方などは、事後も別の場面で活きる汎用スキルです。
後者の獲得を確実にすることこそが、学びの場を設計するときの優先事項、ということです。但し、成果物にもしっかりと評価のモノサシを当てないと、答案のシェアなどを介した相互啓発も十分に機能しなくなります。この辺りは、以下の各稿もご参照ください。

❏ 先行練習として、振り返りを求めない活動を徐々に拡充

振り返りまできちんと行えるようになった活動は、回数を重ねる中で、より良い取り組みができるようになっていきます。そのタイプの活動に対するメタ認知が形成されているため、自己修正が効くからです。
しかしながら、活動そのものへの習熟が進み、生徒が「進捗と改善課題を捉えた学び」に取り組めるようになるまで、ワンパターンを繰り返すだけでは、飽きてくる(退屈する)のも時間の問題かと思います。
きちんと習熟させるべき活動と、先行練習として体験だけさせていく活動に線引きを行い、両者を併用していくのが「落としどころ」です。
活動を体験させるが、そこでの振り返りに厳密なものは求めない「先行練習」を行うことで、単調さによる退屈を遠ざけつつ、単元が進んだときに本格的に求める活動が「何を目指し、どう取り組む」べきものかを生徒が(漠然とでも)学べれば、次への展開もスムーズです。
アクティビティのバリエーションを増やしていく流れは、以下のイメージです。これを繰り返し、C、Dへとタイプを拡充していきましょう。

  1. ひとつのアクティビティAを導入し、やり方に習熟させる
  2. 振り返りをさせながら、自己評価+修正を行わせる
  3. 慣れからの飽きが出る前に、次のアクティビティBを導入
  4. Aでの振り返りができてきたら、振り返りの重点をBに移す

退屈する暇を与えないのと同時に、活動に習熟する余裕を奪わない、というのが指導計画作りの基本的なスタンスになります。慣れから飽きに転じる局面を見逃さないよう、観察は密に行いましょう。



初期段階からあれこれと活動のタイプを多岐に揃えるのでは、効果的な振り返りもできません。指示されたことを戸惑いながら、どうにか形だけなぞっても、有意な学びにならないはず。成果を実感できなければ、活動へのモチベーション低下も避けようがありません。
本稿で申し上げてきたのは、一つの活動に慣れてきたタイミングを待ってから、別タイプの活動を導入していくこと。こうした段階性を備えた指導計画の方が、活動への習熟に躓く生徒も出にくいはずです。
なお、授業内活動の充実を図り、その効果を最大化しようとするなら、教室外での個々に取り組む学習(準備と仕上げ)にも大きな役割が期待されます。以下の記事も併せてご高覧下さい。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一