活動性を高める方法と効果

新しいことに生徒が戸惑いを見せても

生徒をそれまでやらせたことがないことに挑ませれば、最初の戸惑いは当たり前のこと。例えば、拙稿「教科書をきちんと読ませる」や「質問を引き出す」でご提案したような活動でも、教室に初めて持ち込んでみたときから何の障害もなくスムーズに運ぶのはむしろレアケースです。最初のトライで上手くいかないからといって、その後の挑戦を止めてしまっては生徒はいつまでたってもできるようにはなりません。やらせようとしたのが必要…

積極的に学ぶ姿勢(記事まとめ)

積極的に学ぶ姿勢を生徒一人ひとりに持たせたいというのは、先生方のどなたもが抱く思いでしょうが、言うは易く、その実現は中々たいへんです。学びへの積極性を引き出すには、それを構成する要素群を正しく想定し、その一つひとつを着実に成立させていく必要があります。如上の構成要素の想定(=問題の切り分け)には、生徒が学びに消極的になる場面とその要因を考えてみるのも一つの手。以下のようなケースは教室でも多く観察さ…

活動性を高める方法と効果

1 活動性を高め、成果を可視化する 1.1 アクティビティと学習効果1.2 グループワークで作る学びへの積極姿勢1.3 チェックリストを用いた目標提示と達成検証 ・練習場面での成果確認 ・活動の成果を可視化する(英語の音読を例に)1.5 活動させるだけでは学ばせたことにならない ★ ・“アクティブ・ラーニング”で学習時間が減る? ・答えを仕上げる中で学びは深まる ★ ・確認…

途中でも、その時点で成果を共有

別稿「積極的に活動させるツボ(全3編)」では、授業内活動に生徒を積極的に参加させるための工夫を考えました。あちこちの学校を訪ねて授業を拝見してみると、生徒が活動性を下げてしまう瞬間には、まだまだ色んなパターンがありそうです。(cf. 不用意な“待て”をかけない)生徒一人ひとりに調べる、考える、まとめるといったタスクに取り組ませるときも、グループなどで話し合わせるときも、限られた時間の中で活動の密度…

対話の前後に取り組ませる個人ワーク

授業評価アンケートの集計結果を見ていると、教室での対話的な学びはますます充実してきたように感じます。「話し合いなどの協働で、気づきや学びの深まりが得られるか(対話協働)」を尋ねた項目で、回答の9割以上を積極的な肯定が占めるケースもかなり増えています。しかしながら、対話協働の換算得点が上昇しても「授業を受けて学力の向上や自分の進歩を実感できるか(学習効果)」への肯定的回答が占める割合の向上に直結する…

対話によって学びはどこまで深まったか

主体的、対話的な深い学びを構成する要素のうち、主体性を持った学びに欠かせない【学習方策】と【目的意識】については、それぞれ以下の別稿にてデータ解析の結果に基づく考察を行いました。 本稿では「対話的な深い学び」にフォーカスしてみたいと思います。なお、主体的、対話的な深い学びについては、拙稿「主体的・対話的で深い学びの実現に向けて(全3編)」でも考えるところをまとめておりますので、お時間の許すときにご…

フォーメーションは、意図的に且つ頻繁に更新

ペアワークやグループワークに取り組ませるとき、フォーメーションはどのくらいの頻度で、またどんな意図で変更しているでしょうか。生徒の組み合わせが固定してしまうことの悪影響は小さくありません。仲の悪さで活動が阻害されるのも困りますが、仲の良い生徒とばかり組んでいても、「なあなあ」になってしまうかも…。多様な人々とコミュニティを形成し、そこで課題の解決に協働で取り組むときに必要になることを身につけるのが…

できることはどんどんやらせる~生徒の邪魔をしない

先生が先回り/肩代わりせずとも、生徒にやらせてみればできることはどんどんやらせるべきだと思います。現時点では少しばかり生徒の手に余るようなことでも、「できるようになってもらいたいこと」なら、トライさせることなしに、出来るようになるチャンスを奪ってしまうようなことは、努々慎みたいところ。教科書や参考書に書かれていることだって生徒に自力で読ませれば理解できるはずですし、もしできない生徒がいたとしたら、…

活動させるだけでは学ばせたことにならない

授業のデザインでは、従来の「教えること」から「学ばせること」に発想を切り替えていく必要がありますが、生徒を学習活動に取り組ませることを自己目的化してしまえば、深く確かな学びは実現しません。よく言われる「教え過ぎない」というのは、生徒に取り組ませるべきことを不用意に肩代わりしないということですが、これを曲解してしまったのか、「生徒に活動をさせるだけで、きちんと学ばせていない授業」が生まれてしまってい…

できない? やらない? やらせてない?

本来ならば生徒自身に挑ませて完遂を求めるべきことを、先生が不用意に先回り/肩代わりしてしまうと、生徒は自力でできるようにならなければいけないことをいつまで経ってもできないままだったりします。学習者としての自立を促すためにも、主体性の及ぶ範囲を膨らませるためにも、生徒にやらせずに先生が肩代わりしていたことがないか、これまでの授業をどこかで振り返ってみる必要がありそうです。 生徒にはできないと思い込ん…

チャイムから生徒が活動を始めるまで何分かかる?

授業開始のチャイムが鳴ってから、生徒が最初の活動を始めるまでにどのくらいの時間が掛かっているか意識したことはあるでしょうか。各地の学校をお訪ねして授業を参観させていただくときに様子を観ているとクラスごとに状況は実に様々です。ちょっとした余談を挟んだり、連絡事項を伝えたり、あるいは生徒が授業の準備を整えるのを待ったりしている間にも時間は刻々と過ぎていきます。先生が最初の板書をして生徒がノートを開くま…

演習中にワンステップずつ進める板書

ひと通りの説明を終えて、生徒に問題演習や作業などを始めさせたら、そこから先はできるだけ生徒の活動を止めないようにしたいものです。指示や説明を追加するのに先生が口を開いてしまっては、生徒は先生の話を聞くために思考や手元の作業を止めてしまいます。 こうした場面では、生徒の様子を観察してタイミングを見極めつつ、口を開かず黙って板書の続きをワンステップずつ進めるのも好適です。 教室で実際にこの方法を試して…

不用意な“待て”をかけない #INDEX

せっかく動き出そうとしている生徒に不用意な”待て”をかけてしまっている場面はないでしょうか。生徒は3年間の高校生活で、のべ2,625時間(※)の授業を受けていますが、もしストップが掛かっている時間をこまめに削って毎回5分ずつ浮かすことができたら、総指導時間の10%に相当する260時間以上も授業時間枠の拡大を図ったのと同じことになります。(※50分×30単位×35週×3年=の…

不用意な“待て”をかけない(その4)

生徒は取り組むべきタスクがないときに手を止めてしまい、その時間の蓄積が1年間、3年間という長いスパンでは大きなロスとなり、学びの総量を減らしてしまいます。このシリーズの前3稿で触れたような場面に加えて、生徒に注意や指導をするときや、指名した生徒が答えられずに窮しているときにも、同じようなことが起きてしまいます。教室内で生徒に不用意な待てをかけてしまうリスクについて、これまで書いてきた記事と関連付け…

不用意な“待て”をかけない(その3)

授業計画の中に配列した学習活動に生徒が着手できるだけのレディネスを備えているのに、先生方が指示や説明などを重ねては生徒に「待て」を掛けているようなもの。学習活動に充てられる時間を圧迫しますし、仕上げる時間が足りなくなれば、学びは深く確かなものになりません。生徒が既にできるようになっていることをきちんと見極めて、不必要なところでは積極的に手を放していくようにしたいところです。「できることはどんどんや…

不用意な“待て”をかけない(その2)

生徒が出来るようになっていることをきちんと見極めて、不用意な「待て」を掛けず、上手に「手を放していく」ようにしたいものです。数学や物理などで初見の概念を学ばせるときだって、それまでの勉強をしっかり積み上げてきた生徒には、例題の解説を読んで理解し、類題や練習問題を自力で解き進めさせるのは十分に可能ではないでしょうか。理解の早い生徒には次にチャレンジする問題を与えたり、他の生徒に教えたり、シェアした答…

不用意な“待て”をかけない(その1)

生徒の側ではとっくに準備が整っているのに、先生がいつまでも指示や説明を繰り返している場面は思いの外たくさん見かけます。先生が話を終えるのを待っている間に活動に当てる時間がどんどん減っていきますし、生徒のやる気や集中力も削がれていきます。くれぐれも余計な「待て」は掛けないようにしたいものです。 2015/06/29 に公開した記事を再アップデートしました。 ❏ 例えば、実習や実験の手順を理解させると…

ひとつの教材を扱う中で4技能を養う(その1)

新課程のベースとなった「21世紀型能力」では、言語、数量、情報の各スキルが「基礎力」と定義されていますが、英語は国際化がさらに進む社会において、すべての教科を学ぶための基礎として、これまで以上に重要なポジションに置かれます。英語学習が直接的に目的とするところは「4技能のバランスの取れた獲得」であることに間違いありませんが、他教科を学んだり、探究活動に取り組んだりするときの、情報の収集、発信といった…

失敗を積極的に経験させる#INDEX

生徒に限らず、人は失敗をしながら学ぶのだと思います。既にできるようになっていることしかやらなければ、失敗のリスクは小さいでしょうが、そこに大きな成長は見込めないはずです。達成感も希薄でしょう。今できることの少し上に挑んでこそ、それをクリアするのに現状の自分に足りないものに気づけます。既に跳べる段数の跳び箱を繰り返しても飛べているだけに「これで良し」と思い込んでしまうかもしれません。何かに挑戦して最…

失敗を積極的に経験させる(その2)

失敗を積極的に経験させるといっても、誰しもわざわざ失敗などしたくないものです。前稿に触れたような「失敗を重ねて自己効力感を弱め、学びが消極的なものになるのを抑える工夫」を凝らしても、それだけでは失敗のリスクを冒してまで積極的に挑戦する姿勢は生まれません。ものごとに積極的にトライする姿勢を生徒に取らせるには、失敗への不安を上回る強い動機を持たせるための仕掛けを講じる必要があります。 2015/01/…