不用意な“待て”をかけない #INDEX

せっかく動き出そうとしている生徒に不用意な”待て”をかけてしまっている場面はないでしょうか。生徒は3年間の高校生活で、のべ2,625時間(※)の授業を受けていますが、もしストップが掛かっている時間をこまめに削って毎回5分ずつ浮かすことができたら、総指導時間の10%に相当する260時間以上も授業時間枠の拡大を図ったのと同じことになります。(※50分×30単位×35週×3年=のべ2,625時間)

2015/07/03 に公開したシリーズを再アップデートしました。

意図したとおりに生徒を動かすことや、練り上げた指導手順をしっかり実行することは、所期の学習目標を達成するために必要なことのひとつでしょうが、クラス全体での学習活動の総量を引き上げることにこそ、重きを置きたいところ。
生徒は様々な学習活動に取り組む中で、各科目に固有の内容を学びながら、生きる力としての様々な能力・資質を獲得していきます。余計なところで生徒の活動にブレーキをかけては、知識・技能の形成も、能力・資質の獲得も遅れていくばかりです。
普段の授業を振り返って、どんなに短いものであろうと、生徒を不必要に待たせている時間が生じていないか、時々は冷静に点検してみる必要があろうかと思います。そのための着眼点を改めて整理してみました。思いもよらぬところで不要な“待て”をかけているかもしれません。

#1 手順の説明やルールは読んで理解させる

例えば、実習や実験の手順を理解させるとき
自力で進められるのに「待て」をかけられている状態
プリントを用意してあるなら、読ませた方が早い
大切なところには問い掛けを通して認識を確かめる
手順を理解する中で獲得しているスキルや資質

#2 個々の生徒の学力に合わせて与えるタスク

例題の解説を自力で読んで理解できるなら
解くべき問題の範囲は個々の学力とニーズに合わせて
任意課題の答え合わせや解法の点検も生徒に任せて
理解できずにいる生徒に教えるというタスクも
本当にわかっているかを、問い掛けて試してみる

#3 指示の無駄を省き、待つことを学習させない

予習チェックやノート点検をおこなうときに
生徒が手を動かし始めたら、先生は口をつぐむ
「できると思ったらどんどん進める」を約束ごとに
ルーチンを確立して指示や説明をできるだけ省く
└プリントの配布/小テストの回収/アクティビティの切り替え

#4 生徒を待たせてしまっているその他の場面

宿題をやってこなかった生徒を叱っている間
他の生徒が指名されてフリーズしているとき
板書を生徒がノートに写しているとき
マルチタスクをこなすスキルを徐々に養う
授業の中でしかできないことに時間を割く

■関連記事:

  1. 演習中にワンステップずつ進める板書
  2. チャイムから生徒の活動開始まで何分かかる?
  3. できない? やらない? やらせてない?
  4. できることはどんどんやらせる~生徒の邪魔をしない


再アップデートに際しての追記:

単元固有の学習内容を理解させ、生徒が学習活動に取り組むための土台を作る工程で、余計な時間を掛けてしまったり、説明がわかりにくくて土台を固めきれなかったりすることは、生徒の学習活動にブレーキをかけてしまう最大要因です。
授業デザインに求められる発想は「教えること」から「学ばせること」に大きくシフトしましたが、わかりやすい説明/的確な伝達という従来から先生方に求められていた「基本スキル」を十分に高めておくこともまた、学習活動からブレーキを外すために欠かせないことの一つです。
また、指導計画を立案したときに前提要件として想定した「生徒が備えているレディネス」を見誤れば、指導は計画通りに進みませんし、場合によっては後になって「やり直し」を迫られ、結果的に学びの進みを遅くしてしまいます。日々の授業での観察を怠らず、生徒の状態を正確に把握することもまた、余計な「待て」を掛けないための要件です。
生徒が個々の活動で行えるところと、教室での授業で行うところの線引きを間違えてしまうことも避けたいところの一つ。教室でしかできない学びを充実(問いを軸に授業を設計)させることも、限られた授業時間を最大限に活用するには欠かせません。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一