活動を配列するときに考えるべきこと #INDEX

主体的・対話的で深い学びの視点での授業改善が図られる中、各地で授業を拝見していても実に様々な活動が授業の中に組み込まれています。途切れることなく配列されたアクティビティに、生徒がノンストップで取り組んでいる光景もすでに珍しいものではありません。
しかし、多彩なアクティビティの中で生徒同士の対話が増え、活動性が高まっても、それが主体的で深い学びになっているかどうかは、また別の話ではないでしょうか。
学習内容をしっかり理解させることに止まらず、内容(コンテンツ)を学ぶことを手段に、現代社会が求める能力・資質(コンピテンシー)や自立的な学習者であるために必要な学びの姿勢と方法を獲得できてこそ教科学習指導は目的とするところを達したことになるはずです。
こうした目標をしっかり見据えて、その達成に必要な学習活動を選択・配列するようにしましょう。活動を終えたときに「生徒が知っていること、できること」が増え、学習者としての自立に向かうことをイメージした授業デザイン(=学習活動の配列)が必要ということです。

2015/07/09 公開の記事をアップデートしました。

#01 活動の一つひとつに目的を持たせる

ペアワークにも、目的を持たせ、準備をさせる
活動の目的をしっかり設け、自己目的化させない
何ができるようになったか、アウトプットで検証

#02 チェックポイントを意識した練習や作業

練習を始める前にモデルをしっかり観察
実際の練習に移行する前/練習の途中で
気づきをシェアするためには、まず言語化
仕上げの前にチェックリストに照らした課題形成

#03 活動を通じて目指すはコンピテンシーの増大

パフォーマンスモデルからコンピテンシーモデルへ
課題解決工程の実地体験でコンピテンシーの増大
仕上げ/確認の場でも、学びの深まりと広がりを狙う

#04 個人で取り組ませる活動、教室外に設ける活動

個人で練習や演習に取り組ませるとき
他の生徒の成果に触れるときには質問を考えさせる
相互評価や自己評価を通して図るメタ認知の向上
予習・復習、宿題に正しく取り組ませる

■関連記事:

  1. 授業を通して21世紀型能力は育めているか
  2. 確かな学力を獲得させるための「学習活動の適切な配列」
  3. 新課程に備え、改めて考えるカリキュラム・マネジメント
  4. 新しい学力観の下での授業デザイン(記事まとめ)
  5. 学習内容が同じでもアプローチによって学びの質は異なる
  6. 協働場面における個々の生徒の評価をどう行うか
  7. 活動性を高める方法と効果(ジャンル別記事インデックス)


授業内に「生徒が主体的に関わる学習活動」を戦略的・効果的に配列することの重要性と、そのための視点について考えるところをまとめてきましたが、もう一つ大切なことがあります。
それは、「教えるべきことはしっかりと、且つ余計な時間をかけずに教えきること」です。効果的な伝達スキルは、学習者主体の学びに転換が進む中でもその重要性が失われることはないと思います。

もたもた教えていては、生徒の活動に割くべき時間は失われるばかり。不完全な知識と理解しか形成できなければ、生徒に活動に取り組ませたところで、金づちとノコギリも使えない状態で「家を建てろ」と言われているようなもの。何も進まないか、とんでもない結果になるかです。
また、生徒が抱えた不明一つにしても、学習者側の活動でその解消を図らせる必要があるはず。先生が丁寧に対応することの重要性を否定するものではありませんが、安易に答えを教える/不明に答えることが、生徒が自力でできることを増やすチャンスを奪ってしまいかねません。

こうしたリスク/副作用をきちんと認識したうえで、生徒に最適な行動を取らせる(=その場での学習活動を選択する)ことこそが、本来の意味での「丁寧な対応」ではないでしょうか。
また、学習者による活動には、他者との対話で形成されるものばかりではありませんし、50分間の授業の外に置くものもあります。こうした視点で「学習活動」を広くとらえて、その一つひとつを正しく、効果的に配列していきたいものです。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

この記事へのトラックバック

アクティビティと学習効果Excerpt: 授業内の活動(アクティビティ)を通じて参加意識や充足感を得られることと、学習を通じて学力向上や自分の進歩を実感できることとは、単純にイコールではないようです。
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2015-07-17 05:57:27
授業改善での協働のあり方Excerpt: 1 授業を観る、授業を観てもらう 2 組織的授業改善の土台: データを使った効果測定 3 授業改善行動の実効性を高めるために 4 組織的な協働で取り組む授業改善 5 優良実践の共有~授業評価の結果を活かして 6 新たなチャレンジに先生方の協働で取り組むとき 7 好適な課題や教材をシェアして授業改善
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2015-07-29 05:54:24
対話と協働による気づきと学びの深まりExcerpt: 授業内における学習者の活動性が高まることで、授業を受けて学力や技能の向上をより強く実感できたり、苦手意識の発生や増大を抑制できたりといった効果があることは、既にデータで確かめられています。これをもう一歩進めて、「深い学び」に繋がっているかどうかを確かめようというのが、以下の質問文(授業評価項目)に込めた意図です。
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2016-05-10 08:27:06
活動性と学びの成果を繋ぐ鍵~課題を通じた目標理解Excerpt: 昨日の記事に書いた通り、授業時間内における学習者の活動性は昨今大きく高まっていますが、せっかくの活動性が学びの成果につながっていないように見受けられるケースも少なくありません。
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2016-10-25 07:31:22
知識の活用、学びの仕上げExcerpt: 1 課題解決を通した知識活用の機会1.1課題解決を伴わない知識獲得は…(序) 1.1 課題解決を伴わない知識獲得は…(その1) 1.2 課題解決を伴わない知識獲得は… (その2) 1.3 伝達スキルと授業デザイン 2 課題に挑ませた以上、仕上げさせるのが責任2.1 仕上げきる過程を省かない 2.1 やりきらせる責任(序) 2.2 やりきらせる責任(その1) 2.3 やりきらせる責任(その2) 2.4 課題の仕上げは個人のタスクに(前編) 2.5 課題の仕上げは個人のタスク...
Weblog: 現場で頑張る先生方を応援します!
racked: 2016-12-27 08:24:11