授業評価アンケートにおける目的変数は学力向上感

模擬試験の成績などでも観測できる結果学力(知識・技能、思考力・判断力・表現力)の伸びと、授業評価アンケートなどの集計に現れる学習者側での伸びの実感(学力向上感)とは別物で、両者が一致しないこともしばしばですが、進路希望の実現を目指す意欲と行動を継続できるかどうかは、前者より後者にかかっているようです。学んだことに新たな興味や関心が芽生えるかどうかも、実際の成績より当人の学力伸長感に左右されることが…

学習評価は多様なツールを組み合わせて多面的・総合的に

学習指導が所期の成果を上げているかどうか正しく評価するには、学習の成果として形成された知識・技能、思考力・判断力・表現力を測定する「テスト」や、活動そのものをルーブリックなどの基準に当てはめて行う「パフォーマンス評価」に加えて、学習者の認識そのものを把握するための「アンケート調査」や「面談調査」なども欠かせません。 2014/10/27 公開の記事をアップデートしました。 ❏ テストが測るのは解内…

大学入学共通テストの試行調査の結果から(まとめ)

共通一次やセンター試験の出題には、できるだけ高校現場の邪魔をしないようにとの配慮が感じられましたが、2年後に迫る新テストは一転して、大学の教育の在り方のイメージのもと「これからの高校教育はこうあるべき」との方向性を明確に示そうとしています。 これまで幾度もチャレンジしてきた高等教育と中等教育の改革により確実な効果を生み出そうと、大学教育と高校教育の接点である大学入試に手を入れたこと自体にも強い覚悟…

理解したことをきちんと覚えることの先に

いよいよ2年後に迫った新テストは、これまでの2回に亘る試行テストを経て、出題の方向性がはっきりと見えてきました。共通一次試験やセンターテストは、高校現場での教育をできるだけ邪魔しないようにという配慮のようなものが見えていましたが、新テストで、「今後の高校教育はこうあるべきだ」というメッセージを強く発信しています。 第2回試行テストに合わせ公表された平成30年度試行調査(プレテスト)問題作成における…

高大接続改革入試初年度生を迎えて9か月

新しい年を迎えて一週間が経ち、今日が始業式という学校も多いかと思います。昨年4月に高大接続改革入試初年度生となる新入生を迎えて既に9か月が経過したことになりますが、新しい学力観に沿った学ばせ方の転換はどこまで進んできたでしょうか。本年度の成果をきちんとたな卸しして次年度以降に継承するとともに、新しい取り組みの中に見出された課題をしっかり特定し解決を図る必要があります。今日から年度末まではこれに当て…

学習指導、進路指導、探究活動で作るスパイラル

学習指導と進路指導という二本柱をしっかり立てれば成立したのがこれまでの指導計画でしたが、次期学習指導で加わる探究活動を組み合わせるとなると、単純にもう一本の柱を立てれば済む話ではありません。学習、進路、探究という三領域が「並列」していては、互いの関連が希薄になりますし、ただでさえ「教育の強じん化」で、思考力・判断力・表現力を高めるための活動を組み込むとなると、3年間/6年間で指導に当てられる時間の…

指導方法の効果測定#3 ポートフォリオの記録を利用

補習に参加した生徒としなかった生徒、ある課題に真剣に取り組んだ生徒と仕上げ切らずに形だけ整えて提出しただけの生徒。残念ではありますが、せっかく指導場面を用意しても、有効に利用してくれた生徒とそうでない生徒とがいるものです。これらの生徒を一緒くたにして、集団としての成績や行動などの変化を見ても、その課題や指導がどのくらいの効果をあげたか判断がつきません。両者を分けてデータを分析することが、次につなが…

指導方法の効果測定#2 定性的な指導目標の場合

教育活動の効果を測定すべきものは、テストの点で数値化できるタイプの目標だけではありません。協働性、多様性、主体性といった第三の学力要素に含まれるものの獲得を目指した指導もルーブリックなど様々な評価方法を組み合わせて多面的にその効果を測定する必要があります。効果測定なしには、指導方法の妥当性にも自信が持てず、取捨選択の判断がつきません。続けていいものかどうか確かな手応えがないまま生徒を巻き込んで進め…

指導方法の効果測定#1 平均値の変化だけでは…

新しい学力観に沿った学ばせ方への転換を図ろうとするとき、最初に考えるべきことは、「どのような方法で」ではなく、「何を目指して」であり、「どうやって目標の達成を検証するか」もまた指導方法の議論に先行して決めておくべきことだと思います。新しい道具やシステムが導入されれば、それらを使ってできることは増えますが、目標の達成にどれだけ寄与するかを視点にきちんと取捨選択をしないと、道具を使うことが自己目的化し…

指導方法の効果測定 #INDEX

別稿「勘に頼らず、データに偏り過ぎず」でも書いた通り、新しい学力観に沿って学ばせ方の更新を測る必要がある中、新たに採り入れた手法はきちんと効果を測定し、成果を検証していく必要があります。教育資源の最適配分は学校経営の重要課題ですが、その判断を勘に頼るわけにもいきません。エビデンスに基づいた判断が求められます。また、効果測定は、理解者と賛同者を増やすためでもあります。どれほど強い信念を持って取り組ん…

大学入学共通テストで求められる読解力

週末に大学入学共通テストの試行調査(プレテスト)が行われました。新聞などで報道が出ていますが、出題内容や記述問題の採点基準は、早めに目を通しておきたいところです。求められる学力観の変化を捉えて教室での学ばせ方の転換を図るのに早すぎるということはありません。 大学入学共通テスト平成30年度試行調査_問題、正解等 私自身、まだ一部の問題しか解き終えていませんが、膨大なテクストを素早く読み取り、情報を集…

ポートフォリオの円滑な導入と効果的な活用に向けて

高大接続改革に向けてポートフォリオの導入が始まっています。プラットフォームは様々な事業者や機関が提供しているものの、使う側である高校では運用方法について試行錯誤が続いている段階のようです。大学がどんなデータを求めてくるかはっきりしないので運用方法の検討を進められずにいるとの声も方々で聞かれます。しかしながら、ポートフォリオは学習者の自己認識を深めさせて主体的に学ばせることを目的に考案されたツールで…

学校広報におけるSNSの利用

Twitterを学校広報に利用する学校は着実に増えていますが、使い方は、各学校でまちまちです。緊急連絡用に在校生向けに限った運用をしている学校もあれば、生徒募集活動をメインにしている学校もある一方で、地域の方や保護者を含めたステークホルダーとの良好な関係を結ぶ意図が感じられる運用も見かけます。何を目的に(≒誰をターゲットに)SNSを活用するかは、学校の広報戦略しだいですが、目的に照らして好ましい内…

5分間アウトプットの費用対効果

学力の向上や自分の成長や進歩を実感するには、 という2つの要素に加えて、 が欠かせません。学習目標の把握には「解くべき課題」が必要であり、活動を自己目的化しないためには「目標の認識」が不可欠という因果関係から、これら3項目は互いに強固な相関で結ばれています。 表の画像をクリックすると元の記事を参照いただけます。 振り返りのためのアウトプットで申し上げた通り、インプットに不備や不足があっても、理解し…

苦手意識を抑えて、伸びている実感を持たせる

授業を受ける中で「学力や技能の向上」「自分の成長や進歩」を実感できている生徒は、高い確率でその科目に新たな興味や関心を見出していくというデータがあります。逆に、伸びている実感が得られなければ、その科目を学び続ける意欲を維持するのは容易ではありません。教室の中で「興味が生まれる瞬間」を体験させることができる授業、学びの成果や伸びている実感を持てる授業こそが、実現を目指すべき「良い授業」の姿の一つだと…

理解している≠正解できる

理解しているかどうかと正解できるかどうかは、必ずしもイコールではありません。理解していることであっても眼前の課題と結び付けられずに正解に至れないこともありますし、ある問いに正解できたとしても問われていることをきちんと理解できている保証はないということです。 ❏ 理解している、かつ正解できることが目指す状態 答えられなかった後で説明を聞いて「ああ、そうか」と言っている生徒もいれば、選択式問題や語句補…

板書に残すもの(後編)

前編では、「生徒のノートに何を残させるか」という視点で、黒板に書き出すべきものが何かを考えてみました。後編である本稿では、学びの場で板書がどのような機能を持つかを、 という4つの軸で整理し、それぞれの機能を最大限に活かすための工夫や着眼点を中心に「板書に残すもの」を考えてみたいと思います。 本稿は2015/10/29に公開した記事を全面リライトしたものです。 ❏ 書き終えた板書を辿り直すことで深め…

板書に残すもの(前編)

黒板に書き残されたものを分類してその割合を観察してみると、教え方の特徴が見えてくることがあります。発問や口頭説明を経て最終的に導かれた「答え」や「結論」だけがノートに残っていたり、書き終えた後に立ち戻る機会がまったくない事柄ばかりが書かれていたりするようなら、授業のデザインそのものを改める必要があるかもしれません。 本稿は2015/10/28に公開した記事を全面リライトしたものです。 ❏ 導き出さ…

到達目標に加えて取り組み方もしっかり提示

どの教科・科目でも学習の目標を生徒と共有しているかどうかは学びの成果を大きく左右します。授業の目的や取り組み方について十分に理解させてから学びの本題に入ることにより、生徒は、学力の向上や自分の進歩といった学びの成果をより確かに実感できるようになります。 ❏ 学習目標の明示は学びが成果を結ぶ大前提 下表は、学習効果のクラス別集計値を目的変数、目標理解の同集計値を説明変数においた回帰分析の結果です。 …

平成30年度全国学力・学習状況調査

昨日、国立教育政策研究所から「平成30年度全国学力・学習状況調査の結果」が発表されました。報告書(概要)を読んでみると、中学校の国語では、 目的に応じて文章を読む際などに、情報を整理して内容を的確に捉えることに課題がある。 文の成分の順序や照応、構成を考えて適切な文を書くことに課題がある。 中学校の数学では、 事象を数学的に解釈し,問題解決の方法を数学的に説明することに課題がある。 数学的な結果を…