ゴールを決めて最短距離?#INDEX

社会の変化が加速する時代にあって、様々な研究者が予測していたことが現実に近づいていることを実感します。曰く、 2011年に米国の小学校に入学した子供の65%は大学卒業時に今はない職業に就くだろう。(ニューヨーク市立大学キャシー・デビットソン教授) 今後10~20年程度で、米国の総雇用者の47%の仕事が自動化される可能性が高い。(オックスフォード大学マイケル・A・オズボーン教授) 将来の夢を早くから…

ゴールを決めて最短距離?(その2)

知らないことや経験したことのないことが山ほどあり、認知の網を十分に張れていない高校生に、脇見や寄り道をせずに「10年後、自分が何をやっているか」を考えてまっすぐゴールを目指せ、というのはあまりにも酷。選択肢を見せる前に正解を選べと言っているようなものです。前稿で繰り返し使った「偶然との出会い」を生徒が持てるよう、社会との関わりや、学ぶべきことの所在を探れる機会の整備こそ先決です。職業調べや学部・学…

ゴールを決めて最短距離?(その1)

将来なりたい仕事を見つけ、そのためにはどんな学部・学科で学ぶのが最善かを逆算して考えるという、広く行われてきた進路決定の方法は今後ますます難しくなるように思います。ゴールとして目指していた仕事が10年、20年先にも存続している保証はありません。ゴールだけを見つめてそこに到達する努力を続けたあげく、辿り着いてみたら目指していたものは既に価値を失い、存在しなくなっていることだって十分にあり得ます。最短…

非言語情報を言語化する(続き)

大学入学共通テストで求められる読解力は、これまで教室で養われてきたものとはちょっと違うものになりそうです。読み取りの対象は文章として提示された(言語化された)ものだけでなく、表やグラフで示されたデータ、図表でモデル化された考え方、風刺画などに描き出されたメッセージや思想などをどれだけ取り込めるかが問われます。読み取ったことをもとに考えるにも、そこで考えたことを第三者に伝えるべく表現するにも、非言語…

授業改善をより確実にするためのデータの見方

授業評価アンケートの集計結果は、個々の項目の評価値を別々に眺めるよりも、「目的変数」を設定した上で、それとの関連の中で個々の数値を解釈する方が、授業改善に向けた改善課題を捉えやすくなります。授業評価アンケートの集計が終わったらで書いた通り、授業評価アンケートが担うのは「生徒の学びに対する意識」の把握であり、最も大切なのは「授業を受けて学力の伸長や自分の進化を実感できるか」という問いにどれだけの生徒…

スマホの校内持ち込み解禁の報道を読んで

公立の小中学校での携帯電話やスマートフォンの学校への持ち込みを原則禁止とする従来の指針を見直すことになったとの報道がありました。子どもの携帯・スマホの所有率が上がったことや、緊急時の連絡に役立つことなどが見直しの理由に挙げられています。 内閣府による調査(2017年度)では、小学生の55.5%、中学生の66.7%、高校生の97.1%がスマホか携帯のいずれかを所有しているとのことですので、学校への持…

探究活動を通して養う"ファクトフルネス"

過日、日経BPから「ファクトフルネス~あなたの“常識”は20年前で止まっている !?」という書籍が発刊されました。そのイントロダクションに掲載された13問のクイズを解いてみて、思い込みを乗り越えデータを基に世界を正しく見る習慣の大切さを改めて思い知らされました。この大切さに気付くのに年齢制限はないでしょうが、自らの進路を考えたり、社会にどう関わるかを探ろうとするときまでに気づけるかどうかは大切だと…

選定理由の言語化を~探究活動の成果発表会

探究活動や課題研究には代表者による成果発表がつきものですが、代表者や発表作品を選定した理由はきちんと言語化してレジュメや作品に添えて表示したいものです。発表や作品に触れた生徒に「なぜ選定されたのか」を知らしめることは、探究活動の目指すべきあり方を示すことに外ならず、それ自体が生徒に対するとても重要な指導だと思います。 ❏ 合理的な理由なしに代表作品を選ぶことで生じる問題 発表会や展示されているその…

卒業生アンケートで教育活動の点検を

ここ数年、お手伝いする機会が増えてきているのが「卒業生を対象に行うアンケート」です。学校生活を終える生徒に自分の成長を振り返ってもらうと同時に在学期間を通した様々な場面での指導を評価してもらうことで、学校の教育活動の成果を測り、更なる改善に向けた課題を形成しようという目的で行われています。 2017/01/31 公開の記事をアップデートしました。 ❏ 卒業生からの評価で、手応えの確認と次への課題形…

授業評価アンケートにおける目的変数は学力向上感

模擬試験の成績などでも観測できる結果学力(知識・技能、思考力・判断力・表現力)の伸びと、授業評価アンケートなどの集計に現れる学習者側での伸びの実感(学力向上感)とは別物で、両者が一致しないこともしばしばですが、進路希望の実現を目指す意欲と行動を継続できるかどうかは、前者より後者にかかっているようです。学んだことに新たな興味や関心が芽生えるかどうかも、実際の成績より当人の学力伸長感に左右されることが…

学習評価は多様なツールを組み合わせて多面的・総合的に

学習指導が所期の成果を上げているかどうか正しく評価するには、学習の成果として形成された知識・技能、思考力・判断力・表現力を測定する「テスト」や、活動そのものをルーブリックなどの基準に当てはめて行う「パフォーマンス評価」に加えて、学習者の認識そのものを把握するための「アンケート調査」や「面談調査」なども欠かせません。 2014/10/27 公開の記事をアップデートしました。 ❏ テストが測るのは解内…

大学入学共通テストの試行調査の結果から(まとめ)

共通一次やセンター試験の出題には、できるだけ高校現場の邪魔をしないようにとの配慮が感じられましたが、2年後に迫る新テストは一転して、大学の教育の在り方のイメージのもと「これからの高校教育はこうあるべき」との方向性を明確に示そうとしています。 これまで幾度もチャレンジしてきた高等教育と中等教育の改革により確実な効果を生み出そうと、大学教育と高校教育の接点である大学入試に手を入れたこと自体にも強い覚悟…

理解したことをきちんと覚えることの先に

いよいよ2年後に迫った新テストは、これまでの2回に亘る試行テストを経て、出題の方向性がはっきりと見えてきました。共通一次試験やセンターテストは、高校現場での教育をできるだけ邪魔しないようにという配慮のようなものが見えていましたが、新テストで、「今後の高校教育はこうあるべきだ」というメッセージを強く発信しています。 第2回試行テストに合わせ公表された平成30年度試行調査(プレテスト)問題作成における…

高大接続改革入試初年度生を迎えて9か月

新しい年を迎えて一週間が経ち、今日が始業式という学校も多いかと思います。昨年4月に高大接続改革入試初年度生となる新入生を迎えて既に9か月が経過したことになりますが、新しい学力観に沿った学ばせ方の転換はどこまで進んできたでしょうか。本年度の成果をきちんとたな卸しして次年度以降に継承するとともに、新しい取り組みの中に見出された課題をしっかり特定し解決を図る必要があります。今日から年度末まではこれに当て…

学習指導、進路指導、探究活動で作るスパイラル

学習指導と進路指導という二本柱をしっかり立てれば成立したのがこれまでの指導計画でしたが、次期学習指導で加わる探究活動を組み合わせるとなると、単純にもう一本の柱を立てれば済む話ではありません。学習、進路、探究という三領域が「並列」していては、互いの関連が希薄になりますし、ただでさえ「教育の強じん化」で、思考力・判断力・表現力を高めるための活動を組み込むとなると、3年間/6年間で指導に当てられる時間の…

大学入学共通テストで求められる読解力

週末に大学入学共通テストの試行調査(プレテスト)が行われました。新聞などで報道が出ていますが、出題内容や記述問題の採点基準は、早めに目を通しておきたいところです。求められる学力観の変化を捉えて教室での学ばせ方の転換を図るのに早すぎるということはありません。 大学入学共通テスト平成30年度試行調査_問題、正解等 私自身、まだ一部の問題しか解き終えていませんが、膨大なテクストを素早く読み取り、情報を集…

ポートフォリオの円滑な導入と効果的な活用に向けて

高大接続改革に向けてポートフォリオの導入が始まっています。プラットフォームは様々な事業者や機関が提供しているものの、使う側である高校では運用方法について試行錯誤が続いている段階のようです。大学がどんなデータを求めてくるかはっきりしないので運用方法の検討を進められずにいるとの声も方々で聞かれます。しかしながら、ポートフォリオは学習者の自己認識を深めさせて主体的に学ばせることを目的に考案されたツールで…

学校広報におけるSNSの利用

Twitterを学校広報に利用する学校は着実に増えていますが、使い方は、各学校でまちまちです。緊急連絡用に在校生向けに限った運用をしている学校もあれば、生徒募集活動をメインにしている学校もある一方で、地域の方や保護者を含めたステークホルダーとの良好な関係を結ぶ意図が感じられる運用も見かけます。何を目的に(≒誰をターゲットに)SNSを活用するかは、学校の広報戦略しだいですが、目的に照らして好ましい内…

苦手意識を抑えて、伸びている実感を持たせる

授業を受ける中で「学力や技能の向上」「自分の成長や進歩」を実感できている生徒は、高い確率でその科目に新たな興味や関心を見出していくというデータがあります。逆に、伸びている実感が得られなければ、その科目を学び続ける意欲を維持するのは容易ではありません。教室の中で「興味が生まれる瞬間」を体験させることができる授業、学びの成果や伸びている実感を持てる授業こそが、実現を目指すべき「良い授業」の姿の一つだと…

理解している≠正解できる

理解しているかどうかと正解できるかどうかは、必ずしもイコールではありません。理解していることであっても眼前の課題と結び付けられずに正解に至れないこともありますし、ある問いに正解できたとしても問われていることをきちんと理解できている保証はないということです。 ❏ 理解している、かつ正解できることが目指す状態 答えられなかった後で説明を聞いて「ああ、そうか」と言っている生徒もいれば、選択式問題や語句補…