問答・対話、発言、活動

答案のシェアや発表で相互啓発を正しく働かせる

生徒に考えさせたり調べさせたりしたことを、答案やレポートとしてシェアしたり、発表を行わせたりするときには、できることならすべての生徒に「成果発表の機会」を与えたいもの。 生徒の答案をシェアして作る学び(相互啓発) プレゼンテーション/成果発表を機につくる成長の場 それぞれの生徒が考えたこと/気づいたことを介した相互啓発はクラス全体に大きな学びをもたらしますし、頑張ったことを認めてもらえることも「繰…

多様な意見と正しい理解(対話をどう収束させるか)

思考力や調査のスキルを身につけさせるためには、問いを投げかけて考えさせたり、お題を与えて調べさせたりすることが欠かせません。やらせないことには、その活動が必要とする能力・スキルは育ちませんし、生徒一人ひとりがどんな能力・スキルを獲得したかを観察し評価するにも、そうした活動の場を整えることは不可欠です。考えさせた結果や調べてきたことをシェアさせ、生徒同士で話し合いをさせれば、生徒の学びはより深く豊か…

ワークショップで狙うべき「効果」とその進め方

対話的な学びを実現すべく、授業内の学習活動にグループワークを採り入れるケースは増えていますが、多くの場合、特に教科学習指導では、メンバーの間での「知識のシェア(教え合い)、気づきの交換」により単元の内容理解を深めることが主たる目的になっているかと思います。一方、「話し合い」には、答えが容易に出ない(≒正解が一つに決まらない)問題に各メンバーが「当事者」として関り、納得解を導き出したり、合意を形成し…

失敗を積極的に経験させる#INDEX

生徒に限らず、人は失敗をしながら学ぶのだと思います。既にできるようになっていることしかやらなければ、失敗のリスクは小さいでしょうが、そこに大きな成長は見込めないはずです。達成感も希薄でしょう。今できることの少し上に挑んでこそ、それをクリアするのに現状の自分に足りないものに気づけます。既に跳べる段数の跳び箱を繰り返しても飛べているだけに「これで良し」と思い込んでしまうかもしれません。何かに挑戦して最…

失敗を積極的に経験させる(その2)

失敗を積極的に経験させるといっても、誰しもわざわざ失敗などしたくないものです。前稿に触れたような「失敗を重ねて自己効力感を弱め、学びが消極的なものになるのを抑える工夫」を凝らしても、それだけでは失敗のリスクを冒してまで積極的に挑戦する姿勢は生まれません。ものごとに積極的にトライする姿勢を生徒に取らせるには、失敗への不安を上回る強い動機を持たせるための仕掛けを講じる必要があります。 2015/01/…

失敗を積極的に経験させる(その1)

何かにトライして上手くいかないことは、確かに楽しい体験ではないでしょうが、失敗してこそ学ぶものがあることもまた事実。すでに出来るようになっていることだけ繰り返していては、もう一段上を目指すのに足りないものがあっても、それに気づく機会すら持てません。失敗を恐れて尻込みをしていては、重ねるべき経験をやり過ごし、進歩にもブレーキがかかります。辿りつけるはずだったゴールは遠くのままでしょうし、周囲を見渡し…

学びを軸にICT活用を考える#3 「対話」の場面

ICTを活用すべきシーンには、前々稿の「伝達」、前稿の「調査」に加えて「対話の場面」があります。「対話的な学び」に期待されるところの大きさは、ここで改めて申し上げるまでもありませんが、生徒が互いに顔を突き合わせて行うものだけが対話ではありません。対面以外の環境で実現する対話的な学びだってあり得ます。他の生徒が作り上げた「答え」を見て得た気づきをもとに、改めて自分の答えを作り直してみることもまた、間…

プレゼンテーション力より質問力

探究活動などに限らず、日々の授業の中でも生徒がプレゼンテーションに取り組む機会が増えています。小学校からの蓄積もあってか、中高生のプレゼン力は確かに高まっていると感じますが、プレゼン後の質疑応答では、ほとんど質問が出ないか、たまに質問が出ても散発的でそこから議論に展開するような場面はめったに見かけません。プレゼン力だけでなく、「質問力」を高めることに注力した指導の設計が必要ではないかと感じています…

生徒が解法を考える機会(解に至る工程を自力で辿る)

講義座学系の教科で「授業を通じて学力の向上や自分の進歩を実感できるか(学習効果)」に対し大きな寄与度を持つ項目の一つに「習ったことを使って課題解決に取り組む機会(活用機会)」があります。しかしながら、習ったことを使って課題解決に取り組む機会を整えている度合いは、個々の授業で「かなりまちまち」というのが現実の様子。教科による違い(有利・不利)もありますが、データを見る限り、先生方の「学ばせ方」で生じ…

互恵意識で結ぶ学びのコミュニティ

一人ひとりが意欲をもって学び、生徒が互いを支え合う、互恵意識で結ばれた学びのコミュニティを作り上げることは、ホームルームの担任に限らず、各教科の授業担当者としても切なる目標の一つだと思います。新学期スタート後の数週間は、好ましい学びのコミュニティを作れるかどうかを決める大切な期間です。どんな手立てと見通しでコミュニティ作りを進めていくかしっかり戦略を立ててから新年度を迎えましょう。互恵という言葉が…

グループワークで作る学びへの積極姿勢

授業評価アンケートの自由記述意見を読んでいると、グループワークを多く経験する中で、協働での学びに貢献する「責任」を感じた、「役割をきちんと果たさなければ」との思いを強くした、といった記述に出会うことが少なくありません。グループワークは、個人の発想を超えたところに解を見出すことを目的に、集団知/分散知の活用や対話による気づきの交換を図るために採り入れる活動ですが、協働を経験する中で、個々の学習者とし…

提出物は丁寧に添削して返すのがベスト?

日々の学習指導の中では生徒に様々な提出物を課しますが、それらをどう取り扱うのがベストなのか、正解は中々見つかりません。丁寧に添削して返却することが思考力や表現力を高める上で本当に効果を挙げているのか、最善手が他にないかは疑ってみる必要があるように感じます。丁寧に答案に目を通し、先生が「添削」してあげれば、生徒はその答案をより良いものに仕上げ直せるでしょうが、先生に助けを求められない場面で、きちんと…

対話により思考の拡張を図り、観察の窓を開く

授業内に生徒が活動する場を作る目的は、解くべき課題を与えて発動させた思考を「対話を通じた知識や発想の交換」で拡張させることに加えて、生徒の頭の中で何が起きているかを把握するための「観察の窓」を開くことにあります。沈思黙考という言葉もありますが、一人の頭の中だけで考え得ることには限界があります。それ超えていくためには対話を通じた思考の拡張が欠かせません。また、生徒一人ひとりの思考を言語化させてみない…

自力で学ぶ力を育むのに重要な、最初に選ぶ”対話の相手”

授業中に問題演習を行っているとき、生徒に「わからないことがあったら手を挙げ(て質問し)なさい」と声をかけるのは教室でよく目にする光景です。明示されていませんが、質問する相手は「演習の様子を観察している先生」が意図されています。生徒の疑問にきちんと答えるのはもちろん先生方の大事な仕事ですが、不明解消の方策を学ばせる/学習者として自立に向かわせるなら、最初に問いかけさせるべき「相手」は別にいると思いま…

コミュニケーション・ツールとしてのICT

臨時休校や分散登校が続くで、ICTの利用が一気に進んだように見受けられます。校内のWi-Fiも整備が加速しそうですので、利用環境は今後ますます改善していくものと思われます。タブレットやスマホを使って小テストやアンケート、意見集約などを行う機会も増えています。ICTを用いた小テストは回答した瞬間に採点が完了し結果を表示できるため生徒の理解度がリアルタイムで把握できます。賛否が分かれる問題で生徒の意見…

動画で授業を完結しない~授業を構成するパーツとして

新型コロナによる臨時休校が長引く中、生徒の学びを可能な限り保証しようと教室での対面授業に代わる指導法が試されています。YouTubeでの授業動画の配信や zoomでの遠隔ライブ授業も拡充の一途です。様々な方法が試されたことでそれぞれの方法の強みや弱みも明らかになってきました。深く確かな学びを実現するには、様々なツールを組み合わせ、各々の利点を活かした授業構成が最も合理的なアプローチです。特に、利用…

リモート学習で「答えが一つに決まらない問題」を扱う

答えが一つに決まらない問題は、生徒が社会に出て多々直面するものであり、教室の中でもそれらへのアプローチを学ばせる必要があるのは明らかです。解内在型の問いがメインだった従来の教科学習では、立場によって賛否が分かれる問題や解法が未確立の問題を扱うのはどちらかと言えばレアでしたが、今後は教室で扱うケースも増えていくはずです。様々な見方で問題の把握を試み、原因や解決策を考えていくことになりますが、そこで欠…

対面以外の環境で実現する対話的な学び

対話的な学びの必要性は広く認識されるようになってきました。学びの中で対話を増やすことの目的は活動性を高めて生徒を退屈させたり居眠りさせたりしないことでないのは言うまでもありません。対話の拡充を図ることで目的とするのは、 などであり、いずれも対話以外に実現の方法はなさそうです。非常事態宣言が延長され休校が続く中、対話的な学びには大きな支障が生じています。休校が解除された後でも分割登校でクラス全体での…

授業内での活動を通した達成感・充足感

思考力・判断力・表現力を養うために主体的、対話的で深い学びの実現が求められていますが、思考とは、解くべき課題があってはじめて発動し、対話を通じて着想や知識を交換することで拡張・深化が図られるもの。表現力を磨くためにも、考えたところを相手に伝える活動は欠かせません。観察の窓も、生徒を活動させることではじめて開かれます。討論や練習、作業などの活動を通じて多くの生徒が充足感を得ているクラスほど、学力向上…

アクティビティと学習効果

授業内の活動を通して参加意識や充足感を得られることと、そこでの学習を通じて学力向上や自分の進歩を実感できることとは、単純にイコールではないようです。以下のグラフ(散布図)は、生徒による授業評価アンケートのデータを元に、授業内での活動に生徒が得る充足感と、授業を通じて実感する学力向上や自分の進歩(学習効果)との相関を探ったものです。縦軸・横軸に配した数値は、5択で得た生徒の回答を得点化したもの。横軸…