失敗を積極的に経験させる#INDEX

生徒に限らず、人は失敗をしながら学ぶのだと思います。既にできるようになっていることしかやらなければ、失敗のリスクは小さいでしょうが、そこに大きな成長は見込めないはずです。達成感も希薄でしょう。
今できることの少し上に挑んでこそ、それをクリアするのに現状の自分に足りないものに気づけます。既に跳べる段数の跳び箱を繰り返しても飛べているだけに「これで良し」と思い込んでしまうかもしれません。
何かに挑戦して最初はうまくいかなかったとしても、振り返りを通して改めるべき点をきちんと把握できれば、再度のトライで成功することもしばしばです。自力で課題をクリアできた体験は、生徒に自信をもたらしますし、再トライの過程では、知識や技能の不足が補われ、能力・資質の獲得や向上も図られているはずです。
失敗を重ねて自己効力感を弱めさせては、学びに対する積極的な姿勢は損なわれるばかりですが、こうした悪い方向への流れは、指導に当たる先生方の工夫と配慮で断ち切ることができます。(→その1)
失敗を恐れず、ものごとに積極的にチャレンジするには、失敗への不安を上回る強い動機が必要ですが、その仕掛けにも様々なものが考えられます。講じるのはもちろん先生方にほかなりません。(→その2)

失敗を積極的に経験させる(その1)

断ち切るべきは「失敗→自信喪失→消極性」の流れ
発言させる生徒を選びだす前にしっかりと観察
失敗の中にも拾い上げるべき点はあり得る
次に進む前にきちんと失敗をリカバーさせる

失敗を積極的に経験させる(その2)

動機のないところで圧力だけかけても…
学習活動に「自分の役割」を持たせてみる
生徒一人ひとりが「自分事」として捉えられる課題
失敗から学ぶことの価値を学ばせる
失敗させない配慮が、失敗を否定的に捉えさせる

❏ 失敗からのリカバーする方法を学ばせる

失敗を恐れる気持ちは、失敗からリカバーする/立ち上がる方法を学んで身につけていくに従い、徐々に小さくなるのではないでしょうか。
高校生のとき、スキー教室に連れて行かれ、生まれて初めて立つゲレンデ(といっても練習用の広場みたいなもの)におっかなびっくり。転べば痛い思いもしますし、立ち上がるのにも七転八倒です。転ぶ怖さが先に立って体はよけいに上手く動いてくれません。
ところが、インストラクターの先生の教えで痛くない転び方がわかり、ちょっとしたコツですっと立ち上がれることを知ったら、転ぶことへの怖さが消えていき、少しずつですが、スキーが楽しくなってきたのを思い出します。
同じことは、日々の学習にも言えます。生徒に失敗をさせないことに腐心するより、きちんと先生方の目が届く安全なところで、上手に失敗をさせて、そこからのリカバリーの方法をしっかりと学ばせていくことにこそ、より多くの意識を向けるべきだと思います。
入学時点で既に苦手意識が固まっている生徒もいるでしょうが、教室での失敗は恐れるようなものではないことを学習させていきましょう。
別稿「勉強を好きにさせる学ばせ方」でご紹介したように、失敗の原因を明らかにしてそれをひとつ一つクリアしていけば、失敗こそが成長のチャンスであるとの認識も生まれてくるのではないでしょうか。

❏ 過年度の答案・レポートなどから失敗を的確に予想

生徒がどんな失敗をするか予め想定できていれば、失敗から立ち上がれずに諦めようとしている生徒を目の前に有効な手立てが打てずに、生徒が自己効力感を失っていくのを放置してしまうリスクも減るはずです。
的確な予想には前年度の生徒の答案やレポートなどが貴重な資料になりますし、普段から生徒の様子をしっかり観察することで、どんな様子のときに躓きが生じているかしっかり想像できるようになりたいところ。

一番避けたいのは、生徒が躓いているのを気づかずにいることです。
また、転んだ時の手助けは、先生だけに期待されていることではありません。生徒の躓きが予想されるポイントでは、生徒同士の教え合い・学び合いも積極的に活用するようにしましょう。

生徒がお互いを助ける習慣と姿勢を備えていれば、先生の助けが届くまで自席で打ちひしがれている生徒もそうそう出てこないはずです。
■関連記事:

  1. 積極的に学ぶ姿勢(記事まとめ)
  2. 振り返りを経てこそ次への課題形成
  3. メタ認知、適応的学習力

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一