評価、効果測定・成果検証

指導目標と指導方法が変わったら定期考査の問題も

教科学習指導に限ったことではありませんが、「目標とするところ」と「目標に到達するための方法や計画」の間には高い整合性が必要です。両者の間のズレを放置しては、目標が達成される見込みも立ちません。同時に、指導がどこまで成果を得たかを測定する評価方法も、学習目標にマッチしたものである必要があります。目標までの距離を正確に測れないことには、どうやって接近するか作戦も立てられないからです。新課程への移行で教…

効果測定は、理解者と賛同者を増やすため

以前の記事「 効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)」 をお読みいただいた先生から、「効果測定や成果検証の必要性は十分にわかっているが、作業が増えることに負担感もあり、どうしても二の足を踏んでしまう」とのご感想を頂戴しました。確かに、指導の効果測定を行うには相応の手間がかかります。「足し算だけのビルド&ビルドから抜け出そう」との文脈なのに、そこに無駄な作業を新たに作るようでは、何を目指…

教育目標から自己点検に用いる評価規準への書き出し

建学の精神や教育理念のもとで各学校は教育目標を定め、その達成のために教育活動を行っていますが、学校評価アンケートなどで生徒に「教育目標に掲げられた『目指すべき人物像』に近づけているか/近づけそうか」と聞いてみると、なかなか力強い答えが返ってきません。教育目標は「ただ掲げているもの」ではないはずですし、その達成には先生方のみならず、生徒自身にもコミットメントが期待されるところではないでしょうか。たい…

正答率の予測ができれば授業設計も最適化

正答率を正しく予想できるということは、問題が要求する様々な学力に照らした「生徒の状況把握」が正確に行えているということです。教科学習指導は、目標学力と生徒の現況学力との差を埋めるための行為であり、正答率の予測精度(=現況学力を正しく把握しているか)は、指導設計の妥当性に大きく影響を与えます。様々な場面で実際に予測を行ってみて、ご自身の予測力を常に点検するとともに、精度の向上を図る努力も怠らないよう…

カリキュラム・マネジメントの実行&検証フェイズ

カリキュラム・マネジメントという言葉が広く使われるようになってだいぶ経ちますが、マネジメントとは言うまでもなく「目標を達成する/成果を上げる」ためのものであり、計画、実行、検証、対処(いわゆるPDCA)で構成される活動です。カリキュラムを通して形成しようとしている学力が変化した以上、計画フェイズに当たるカリキュラムの作成には従来と違った発想が求められるのは、前稿で申し上げた通りですが、実行や検証の…

日々のチェックで授業デザインのブラッシュアップ

臨時休校、分散登校、短縮授業と、授業日数・指導時間の確保を困難にする要因がズラリと並ぶ中、日々の授業をより効率的で密度の高いものにするには教室の対面授業で行う学習活動を精選する必要があります。 ターゲットとなる問いを設定することは本時の主眼や指導の目標を明らかにするとともに、個人で出来ることと教室で行うべきことの選別にも有益であるというのが、昨日の記事の主旨でした。 そうしてデザインした授業の一つ…

新しい評価の実行可能性を高めるための工夫

新しい学力観への転換が図られる中で、学習指導の方法の工夫と開発が進んできました。新たな指導法を開発・発見すると、すぐに教室で試してみたくなりますが、ぐっと立ち止まって「評価はどうする?」と自問してみましょう。ここに来て、学習評価の改善も本格化な取り組みを始めた学校も少なからず見受けられるようになってきました。学習の「結果」と「プロセス」の双方について「到達点」と「変化量」を視点に把握する必要がある…

最初の答えと作り直した答えの差分=学びの成果

何らかの課題や問いを与えて生徒に取り組ませるとき、生徒が最初に作った答え(=単元やテーマを学ぶ前の段階で考え出せたこと)を保存しておき、それを学び終えて仕上げた答えと比べてみると、両者の違いに着目することで学びの成果を確認・可視化できるようになります。たとえ、答えに行きつかなかったとしても、書きかけの答案や題意を図に起こそうとしたときの痕跡もあるはずです。それをノートやワークシートから消してしまわ…

授業評価は多面的に

学習評価は多面的に行う必要があります。仮に成績が伸びていたとしても言われたことをただこなした結果であれば、先生が手を離した途端に学びを止めてしまうかもしれませんし、伸びている実感を欠いた生徒はその科目を学び続ける意欲を失いつつある可能性もあります。正しい学びの場を創出できているか、授業を中心とする教科学習指導がきちんと成果をあげているかを知る上で、チェックすべきことがらは多岐に亘ります。以下はその…

学校の教育力を伝える新たなモノサシ

学校の裁量が拡大され、各地で特色ある教育活動が展開されるようになりました。単位制や総合学科は言うまでもなく、普通科でもコース制を取ったり、独自の教育プログラムを整備したりと様々な価値を打ち出そうとしています。それなのに、”外野”からは、やれ普通科は画一的だ、生徒の意欲が高まる内容になっていないといった批判が届きます。そうした批判をうち消せないでいることの背景には、各校が打ち…

先端研究で得られた知見を活かして授業改善

先週、「授業に集中してる? 生徒の脳、活動量をセンサーで計測」という記事を朝日新聞で見つけました。東京大学と横須賀の三浦学苑高校が協働で行なっている実証実験です。脳の司令塔と言われる前頭前野の活動量を調べるセンサーを生徒のおでこに付けて、授業中に生徒の脳がどれだけ活発に働いているかをリアルタイムに把握するとのことです。 ❏ 脳の活動量がリアルタイムに測定できることの恩恵 先生の話を聞いているとき、…

選定理由の言語化を~探究活動の成果発表会

探究活動や課題研究には代表者による成果発表がつきものですが、代表者や発表作品を選定した理由はきちんと言語化してレジュメや作品に添えて表示したいものです。発表や作品に触れた生徒に「なぜ選定されたのか」を知らしめることは、探究活動の目指すべきあり方を示すことに外ならず、それ自体が生徒に対するとても重要な指導だと思います。 ❏ 合理的な理由なしに代表作品を選ぶことで生じる問題 発表会や展示されているその…

高大接続改革入試初年度生を迎えて9か月

新しい年を迎えて一週間が経ち、今日が始業式という学校も多いかと思います。昨年4月に高大接続改革入試初年度生となる新入生を迎えて既に9か月が経過したことになりますが、新しい学力観に沿った学ばせ方の転換はどこまで進んできたでしょうか。本年度の成果をきちんとたな卸しして次年度以降に継承するとともに、新しい取り組みの中に見出された課題をしっかり特定し解決を図る必要があります。今日から年度末まではこれに当て…

指導方法の効果測定#3 ポートフォリオの記録を利用

補習に参加した生徒としなかった生徒、ある課題に真剣に取り組んだ生徒と仕上げ切らずに形だけ整えて提出しただけの生徒。残念ではありますが、せっかく指導場面を用意しても、有効に利用してくれた生徒とそうでない生徒とがいるものです。これらの生徒を一緒くたにして、集団としての成績や行動などの変化を見ても、その課題や指導がどのくらいの効果をあげたか判断がつきません。両者を分けてデータを分析することが、次につなが…

指導方法の効果測定#2 定性的な指導目標の場合

教育活動の効果を測定すべきものは、テストの点で数値化できるタイプの目標だけではありません。協働性、多様性、主体性といった第三の学力要素に含まれるものの獲得を目指した指導もルーブリックなど様々な評価方法を組み合わせて多面的にその効果を測定する必要があります。効果測定なしには、指導方法の妥当性にも自信が持てず、取捨選択の判断がつきません。続けていいものかどうか確かな手応えがないまま生徒を巻き込んで進め…

指導方法の効果測定#1 平均値の変化だけでは…

新しい学力観に沿った学ばせ方への転換を図ろうとするとき、最初に考えるべきことは、「どのような方法で」ではなく、「何を目指して」であり、「どうやって目標の達成を検証するか」もまた指導方法の議論に先行して決めておくべきことだと思います。新しい道具やシステムが導入されれば、それらを使ってできることは増えますが、目標の達成にどれだけ寄与するかを視点にきちんと取捨選択をしないと、道具を使うことが自己目的化し…

指導方法の効果測定 #INDEX

別稿「勘に頼らず、データに偏り過ぎず」でも書いた通り、新しい学力観に沿って学ばせ方の更新を測る必要がある中、新たに採り入れた手法はきちんと効果を測定し、成果を検証していく必要があります。教育資源の最適配分は学校経営の重要課題ですが、その判断を勘に頼るわけにもいきません。エビデンスに基づいた判断が求められます。また、効果測定は、理解者と賛同者を増やすためでもあります。どれほど強い信念を持って取り組ん…

散布図と残差から個々の生徒の課題を探る

別稿「入学試験での成績と定期考査のパフォーマンス」で触れた、入試結果と定期考査成績との相関を調べる方法、学び方の転換などに問題を抱える生徒を抽出する「残差」を導出する方法をご紹介します。 ❏ 計算式を設定しておけば、データを取り込むだけ 下図は、ある学校で実際に作成したものですが、12行目以降にクラス、出席番号、生徒氏名を、D列以降に得点が入力されています。入試成績と考査成績のデータシートから、V…

組織的授業改善の土台: データを使った効果測定

効果測定を重ねながら、優良実践の抽出と共有を継続的に行っていけばそれぞれの先生方が持っておられた強みの集合体として、共通項を一定以上に含む「本校の授業のありかた」の具体的な姿が徐々に表れてくるのではないでしょうか。授業改善に向けた協働の中で、先生方が互いの実践から学び、指導効果の高い指導手法を共有していけば、学ばせ方・教え方における担当者による差は自ずと縮小に向かうはずです。これまで取り組んでなお…

生徒にYESと答えてもらいたい質問

指導目標の達成により大きく近づいた指導(=付加価値の大きな指導)を特定して共有を進めることで、組織的な授業改善が進みます。先生方一人ひとりが、より良い指導を目指して試行錯誤を繰り返すことは大切ですが、その段階に止まっていては、限りある教育リソースを浪費するばかりではないでしょうか。 ❏ 結果学力を測るモノサシの精度を高める 結果学力については、昨日までの記事などにも書いた通り、テストの結果を用いて…