評価、効果測定・成果検証

授業評価は多面的に

学習評価は多面的に行う必要があります。仮に成績が伸びていたとしても言われたことをただこなした結果であれば、先生が手を離した途端に学びを止めてしまうかもしれませんし、伸びている実感を欠いた生徒はその科目を学び続ける意欲を失いつつある可能性もあります。正しい学びの場を創出できているか、授業を中心とする教科学習指導がきちんと成果をあげているかを知る上で、チェックすべきことがらは多岐に亘ります。以下はその…

効果測定とスクラップ&ビルド(教育資源の最適配分)

高大接続改革と次期学習指導要領への対応の中で様々な新しい教育活動が採り入れられていますが、これまで作り上げてきた教育活動に「足し算」していくだけでは、限りある教育リソースが枯渇するのは火を見るより明らかです。以前から行われていることや新しく取り入れてみたことは一つひとつきちんと効果測定を行い、効果のないもの/費用対効果に劣るものを取り止める「引き算」の発想も必要です。残すものと取り止めるものの選別…

学校の教育力を伝える新たなモノサシ

学校の裁量が拡大され、各地で特色ある教育活動が展開されるようになりました。単位制や総合学科は言うまでもなく、普通科でもコース制を取ったり、独自の教育プログラムを整備したりと様々な価値を打ち出そうとしています。それなのに、”外野”からは、やれ普通科は画一的だ、生徒の意欲が高まる内容になっていないといった批判が届きます。そうした批判をうち消せないでいることの背景には、各校が打ち…

先端研究で得られた知見を活かして授業改善

先週、「授業に集中してる? 生徒の脳、活動量をセンサーで計測」という記事を朝日新聞で見つけました。東京大学と横須賀の三浦学苑高校が協働で行なっている実証実験です。脳の司令塔と言われる前頭前野の活動量を調べるセンサーを生徒のおでこに付けて、授業中に生徒の脳がどれだけ活発に働いているかをリアルタイムに把握するとのことです。 ❏ 脳の活動量がリアルタイムに測定できることの恩恵 先生の話を聞いているとき、…

選定理由の言語化を~探究活動の成果発表会

探究活動や課題研究には代表者による成果発表がつきものですが、代表者や発表作品を選定した理由はきちんと言語化してレジュメや作品に添えて表示したいものです。発表や作品に触れた生徒に「なぜ選定されたのか」を知らしめることは、探究活動の目指すべきあり方を示すことに外ならず、それ自体が生徒に対するとても重要な指導だと思います。 ❏ 合理的な理由なしに代表作品を選ぶことで生じる問題 発表会や展示されているその…

高大接続改革入試初年度生を迎えて9か月

新しい年を迎えて一週間が経ち、今日が始業式という学校も多いかと思います。昨年4月に高大接続改革入試初年度生となる新入生を迎えて既に9か月が経過したことになりますが、新しい学力観に沿った学ばせ方の転換はどこまで進んできたでしょうか。本年度の成果をきちんとたな卸しして次年度以降に継承するとともに、新しい取り組みの中に見出された課題をしっかり特定し解決を図る必要があります。今日から年度末まではこれに当て…

指導方法の効果測定#3 ポートフォリオの記録を利用

補習に参加した生徒としなかった生徒、ある課題に真剣に取り組んだ生徒と仕上げ切らずに形だけ整えて提出しただけの生徒。残念ではありますが、せっかく指導場面を用意しても、有効に利用してくれた生徒とそうでない生徒とがいるものです。これらの生徒を一緒くたにして、集団としての成績や行動などの変化を見ても、その課題や指導がどのくらいの効果をあげたか判断がつきません。両者を分けてデータを分析することが、次につなが…

指導方法の効果測定#2 定性的な指導目標の場合

教育活動の効果を測定すべきものは、テストの点で数値化できるタイプの目標だけではありません。協働性、多様性、主体性といった第三の学力要素に含まれるものの獲得を目指した指導もルーブリックなど様々な評価方法を組み合わせて多面的にその効果を測定する必要があります。効果測定なしには、指導方法の妥当性にも自信が持てず、取捨選択の判断がつきません。続けていいものかどうか確かな手応えがないまま生徒を巻き込んで進め…

指導方法の効果測定#1 平均値の変化だけでは…

新しい学力観に沿った学ばせ方への転換を図ろうとするとき、最初に考えるべきことは、「どのような方法で」ではなく、「何を目指して」であり、「どうやって目標の達成を検証するか」もまた指導方法の議論に先行して決めておくべきことだと思います。新しい道具やシステムが導入されれば、それらを使ってできることは増えますが、目標の達成にどれだけ寄与するかを視点にきちんと取捨選択をしないと、道具を使うことが自己目的化し…

指導方法の効果測定 #INDEX

別稿「勘に頼らず、データに偏り過ぎず」でも書いた通り、新しい学力観に沿って学ばせ方の更新を測る必要がある中、新たに採り入れた手法はきちんと効果を測定し、成果を検証していく必要があります。教育資源の最適配分は学校経営の重要課題ですが、その判断を勘に頼るわけにもいきません。エビデンスに基づいた判断が求められます。また、効果測定は、理解者と賛同者を増やすためでもあります。どれほど強い信念を持って取り組ん…

選考基準は妥当だったのか~追跡調査に基づく検証

入学試験で志願者の合否を決めるときもあれば、指定校推薦の内部選考もありますし、それ以外にも大会などへの出場メンバーを決めるときや、成果発表会の代表者選考などもあり、学校には生徒の選考を行う機会はかなりの数に上ります。 もし選考基準が妥当なものでなければ、 機会を与えられるべき生徒が選考から漏れてしまう 意欲や資質に欠けるメンバーが含まれ、周囲に悪影響が及ぶ といった、様々な問題が生じることになりま…

散布図と残差から個々の生徒の課題を探る

別稿「入学試験での成績と定期考査のパフォーマンス」で触れた、入試結果と定期考査成績との相関を調べる方法、学び方の転換などに問題を抱える生徒を抽出する「残差」を導出する方法をご紹介します。 ❏ 計算式を設定しておけば、データを取り込むだけ 下図は、ある学校で実際に作成したものですが、12行目以降にクラス、出席番号、生徒氏名を、D列以降に得点が入力されています。入試成績と考査成績のデータシートから、V…

組織的授業改善の土台: データを使った効果測定

効果測定を重ねながら、優良実践の抽出と共有を継続的に行っていけばそれぞれの先生方が持っておられた強みの集合体として、共通項を一定以上に含む「本校の授業のありかた」の具体的な姿が徐々に表れてくるのではないでしょうか。授業改善に向けた協働の中で、先生方が互いの実践から学び、指導効果の高い指導手法を共有していけば、学ばせ方・教え方における担当者による差は自ずと縮小に向かうはずです。これまで取り組んでなお…

生徒にYESと答えてもらいたい質問

指導目標の達成により大きく近づいた指導(=付加価値の大きな指導)を特定して共有を進めることで、組織的な授業改善が進みます。先生方一人ひとりが、より良い指導を目指して試行錯誤を繰り返すことは大切ですが、その段階に止まっていては、限りある教育リソースを浪費するばかりではないでしょうか。 ❏ 結果学力を測るモノサシの精度を高める 結果学力については、昨日までの記事などにも書いた通り、テストの結果を用いて…

箱ひげ図をどう読むか、エクセルでの作り方

学習指導の効果測定には、模試や外部検定のデータを用いて分布の変化を捉える必要があるのは昨日の記事で申し上げた通りです。一般的に利用されている平均点の推移で捉える方法では、層別の動きが捉えられませんし、上下への動きが相殺して平均値の変動は小さなものに集約されてしまうこともあります。 追記:Excel 2016から箱ひげ図の作成機能が実装されています。使い方は「箱ひげ図を作成する」(Officeのサポ…

ルーブリック評価の作成と運用

ポートフォリオと並び、次期学習指導要領で導入が検討されている評価ツールの一つが「ルーブリック」です。基本形は、観点ごとに段階的な到達状況を配置したマトリクスに各々の規準を書き込んだものであり、目標準拠評価(絶対評価)の一つです。あまり馴染みのないせいか、導入を終えて本格的な運用に踏み込んだ学校はまだ少数派。今からスタートして実運用を経てブラッシュアップしておけば、2020年には他校への大きなアドバ…

ルーブリック評価の導入はなぜ必要なのか

高大接続改革とその先の本丸である次期学習指導要領に向けて、学力の三要素をキーワードに、新しい学力観に沿った学ばせ方への転換が急速に進んでいます。各地で行われている研修会やセミナーでも、新課程の中身(学習内容)を研究するもの、AL、協働、反転といった指導方法をキーワードに含むものがとても多くなりました。その一方で、「評価方法の改革」 は動き出しが遅いような気がします。インターネットで「ポートフォリオ…

評価方法の再整備~高大接続答申から

昨年12月に公表された、いわゆる高大接続答申。ご覧になられたと思いますが、「選抜性の高低にかかわらず、学力については、アドミッション・ポリシーに基づき、学力の三要素を踏まえた総合的な評価を行うことが重要」と打ち出しています。 大学入学者選抜改革の全体像(イメージ)[資料 p.39] ❏ 学力の三要素 上記の答申では、入学選抜で評価すべき「学力の三要素」を、 「知識・技能」  「思考力・判断力・表現…