立春までもう少しですが、まだしばらく寒さが続きそうです。先生方におかれましては入試業務や受験生指導などでご多忙を極める毎日と拝察いたしますが、くれぐれもご自愛いただくとともに、そろそろ新年度を迎える準備もイメージしておかなければならない時期になりました。
新しいことを計画している学校ならその準備もあろうかと思いますが、それ以外のところにもやるべきことは少なくありません。生活、学習、進路の各領域に見落としを作らないように準備を進めていきましょう。
2017/02/03 公開の記事を再アップデートしました。
❏ まずはタスクの書き出し、優先順位を決める
年度末から新学期にかけてやるべきことをリストアップし、それぞれの重要度を判断するところまでは、既に進んでいるかと思います。
優先順位の高いものから、カレンダーに期限と所要日数を落とし込むことで、タスクとリソースの量を見比べながら、当期に片づけるべきものと、次期に繰り越すものの線引きを明確にしていきましょう。
この「仕訳」とスケジューリングを怠ったまま、勢いに任せて目の前の仕事を片付けていくと、優先度の高いものが先送りになりかねません。
新年度まで残すところ約60日。物事を計画的に進めて行かないと時間切れで十分な準備ができないまま、4月を迎えてしまいます。
先生方は、たいていの場合、分掌、学年、教科という3つの立場で仕事を抱えています。ご自身が直接担当する業務だけでなく、組織としての仕事の進み具合にも目を配っていきたいところです。気づいたところは共有していきましょう。
少し視点が外れますが、学校評価アンケートの結果などをみていると、各々の教育活動の状況(充実度や合理性)を尋ねた質問に、否定的に答える先生方の割合が、年度が進んでも一向に減らないことがあります。
もしかしたら、先生方がそれぞれ見出している問題点がきちんと共有されていないことが、改善に向けた課題形成を不十分なものにし、その結果、具体的な改善行動を計画に起こせていないのかもしれません。
❏ 次に何をすべきかは、今の生徒の状況から考える
指導は「現況と目標との差分を埋めるために行うもの」ですから、まずは現時点での生徒の状況を改めて正確に把握しておく必要があります。
状況把握には、観察で行うものと、データを見て行うものがあります。
前者は、基本的には学年末考査までの授業の中にしかその機会がありません。春休みに補習や講習を予定していたとしても、全員参加ではないはずです。年度内に観察しきれない部分は、新年度への「宿題」です。授業開きやオリエンテーションは観察をメインとする場にしましょう。
データを使って行う状況把握では、考査や模試の結果(答案も含む)やレポート、ポートフォリオなどが材料になるはずです。まずはそれらに目を通す機会の確保が先決ですが、そこで把握した課題に対処するための工数と時期も考慮しておかなければなりません。
春休みの宿題に取り組ませることで対処する場合、補うべき部分を抱える生徒とそうでない生徒でタスクを分ける必要もあろうかと思います。
次学年に進んでから関連領域を学ぶときに復習機会を作る手もありますし、対象者を選び出して学び直しをさせる必要もあるかもしれません。
❏ 補習を計画するときに踏まえておきたいこと
補習は、他の活動に充てる時間を圧迫しますので、基本的には最後の手段に取っておきたいものですが、その形を選択せざるを得ないのであれば、相応の準備や調整が必要になります。
補習の枠をどこかに設ける以上、分掌・学年・教科、さらには部活顧問などの理解を得る必要があるはず。起案はできるだけ早く行いたいものです。可能なら、年間指導計画にも組み込んでおきましょう。
既習事項の理解や習熟に不足がある生徒と、補習に参加させて不足を補わせるべき生徒は、必ずしもイコールではありません。個々のニーズを見極めて、必要性を判断する必要があります。
学び直しの機会を作るのは、あくまでも、「その生徒が次のステップに進んだ時に必要な土台を整え直す」ためであり、今後の学びや受験などに影響を及ぼさない生徒にまで範囲を広げないようにしましょう。
別稿「知識をどこまで拡張するかは個々のニーズに合わせて」で書いたことと共通する発想です。
❏ 学習方策は身についたか、苦手意識を持っていないか
次に進んだときに必要なことという点では、所謂「知識・技能」 だけを見ても十分とは言えません。
例えば、予習で課されるタスクを的確にこなせない生徒(=学習方策が十分に確立していない生徒)だっているはずです。
辞書や参考書を上手に使えない、自力で教科書や資料を読んで理解できない/理解しようとしない生徒をそのままにして、次の学年での学習に進んでは、生徒本人は当然、指導を担当する先生も大変です。
可能であれば年度末までに、授業時間内で生徒が自力で学びに取り組む様子を観察する機会を持って、生徒がどのように勉強しているか(予習や復習に取り組めているか)を確かめておきたいところです。
新年度を迎えて行う授業開きや学習オリエンテーションで何を伝えるかを考える/選び出すにも、「現時点における生徒の状況」が前提です。
授業開きなどで伝えようと思っていたことの多くを、既に多くの生徒が満たしているようならわざわざその時間を取るのも無駄ですし、自分のスタイルを確立できている生徒には却ってマイナスになるかも。
その一方で、「もう出来ているはずだから、敢えて言わずとも良し」と思っていたことを多くの生徒が満たせてないこともあります。「現実と想像のギャップ」を把握するにも、改めての観察機会は必要です。
❏ 新入生オリエンテーションで、学習経験を尋ねておく
今いる生徒は、学ぶ姿を観察することで現況を把握することができますが、今度入学してくる生徒については別のアプローチが必要です。
入試の答案を見たり、内申書や出願書類に目を通せばわかる部分もありますが、それだけで十分とは思えません。
中学でどんな学習や体験をしてきたか確かめないことには、先生方が用意している高校での学びが「ただのやり直し」になってしまうかもしれません。生徒に既視感(デジャブ)を覚えさせるだけかも…。
学習方策の獲得状況や学ぶときの姿勢などは、生徒本人に聞いてみたところで正確な答えはあまり期待できませんので、新学期が始まってからの教室での観察が勝負ということになります。
併せて、「どんな学びを経験してきたか/どんな活動に取り組んできたか」の把握も必要ですが、これは、本人に聞いてみるしかありません。
入学準備のために事前登校日があろうかと思いますが、そのときにアンケートを用意しておき、「ここまでは身につけてきてほしい」「こういう体験はしているだろうか」と思うことを尋ねるようにしましょう。
日々の学び(各教科)だけでなく、総合的な学習の時間や体験学習などで経験してきた/身に付けているはずのことがらのそれぞれについて、
「ちゃんとできる(と思う)/十分にこなせる」
「やったことはある/やり方は教わったことがある」
「経験したことがない/まったく想像できない」
がどう分布しているかを把握しておくと、オリエンテーションで伝えること、初期の指導で力を入れるべきことの選び出しが容易になります。
新入生の側でも、こうした事柄を問われることで自己認識を新たにし、高校での学びへの準備を意識するきっかけになるはずです。
新学期準備に関する記事を集めてみました。
新学期を迎える準備(まとめページ)
教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一