学びを軸にICT活用を考える#2 「調査」の場面

前稿では、ICTの活用シーンのうち「伝達」を目的とする場面について考えるところをまとめました。本日は、必要な情報を(信ぴょう性を確かめながら)集める「調査」のフェイズについて考えます。
学びを進めながら、情報を集め、知に編む作業はICTを活用することで拡張が容易。もっと言えば、ICTなしには出来ることが限定されてしまいます。日々拡大するインターネットという「超巨大図書館」を上手に/正しく活用させて情報スキルの獲得を図りましょう。
情報スキルは、言語・数量の両スキルと並び、21世紀型能力の「基礎力」を構成する要素。別稿の通り、その獲得にはすべての教科がコミットすべきであり、そのためにも積極的なICTの活用は不可欠です。

2015/10/15 公開の記事をアップデートしました。

❏ 目的に沿った資料を探させ、情報スキルを養う

目的(目の前にある課題の解決など)に沿って、必要な情報を集めるために資料を探すという活動を生徒自身に体験させることは、その方法と姿勢を身につけさせるのに欠かせないのは言うまでもありません。
必要な資料を先生が事前に用意して、プリントにして配ったり、電子的に配布したりすれば、授業は円滑に進むかもしれませんが、如上の学びの場を「不用意な肩代わり」で奪うことにもなりかねません。
資料を探し出すことそのものも、学習活動の一環として、3年間/6年間の指導計画の中にしっかりと組み込みたいものです。
例えば、授業の中で、単元内容に沿った社説を先生が用意して生徒に読ませる機会があったとしましょう。
それだけでも、教科書の内容を超えたところに学びを広げられますし、資料(社説)の中から情報をピックアップして整理する練習にもなりますが、資料を探すことを生徒は経験していません。
裏付けとなるサポートデータや、反対の/異なる意見を探させてみるのであれば、授業の流れを崩さずに、より深い思考や、広い視野に立った判断を促すことにもつなげていけるのではないでしょうか。

・サポートデータを見つけさせる

如上の「社説を読ませる場面」なら、そこに書かれていることを裏付ける/サポートする資料やデータを探させてみるのも好適です。
生徒に「情報の信ぴょう性を評価する力」や「矛盾を見つけて対処する力」(PISAが測定する「読解力」)を経験の中で身につけさせ、信頼できるソースかどうかの判別を学ばせるチャンスになりそうです。
安易にググって、信ぴょう性も疑わしいコピペサイトに行き着き、その記述を鵜呑みにするのでは困ります。パッと目に入ってきた自分に都合の良い情報だけを集めるという「ある種の本能」を克服させ、デマに踊らされず、正しい選択ができる生徒に育てるのも先生方のお仕事です。
公的機関が発表している一次データなども紹介しつつ、信頼できる情報の探し方を学ばせていきましょう。

・反対意見や別のアプローチを探させる

サポートデータを探していると、資料に書かれていることと矛盾するものや、別の捉え方をしているものを見つけたりすることもあります。
多様な意見や解決策、物事の見方/捉え方があることを知るのに良いきっかけになりますが、こうした学びをさらに積極的に膨らませるために敢えて異なる立場からの反論や主張、問題への別のアプローチを探させてみるのも良いのではないでしょうか。
新聞の社説でも、その立場により各紙がそれぞれの主張をしますし、教科書に書かれていることでも別の解釈があったりします。最初に目にしたものを鵜呑みにするのではなく、「本当なのか」と問題意識を持ち、事実であることを確かめていく態度を養うことも大切です。
生徒が見つけた情報をシェアすれば、クラス全体の「知の地平」を広げられますし、その後の学びにも展開できます。
矛盾するところを見つけたときにどう対処するかを、実地の経験の中で学ばせていくにも、ICTを活用した「学びの拡張」は重要です。
対立意見を先生が用意し、資料として配ってあげることもできますが、それでは、卒業後に何らかの問題を前に、判断材料を揃える必要が生じたとき、生徒はどうすれば良いかわからず、立ち止まるばかりです。

❏ 生徒が辿り着く情報ソースに当たりをつけておく

言うまでもありませんが、いずれの場面でも、先生ご自身が授業準備の段階で、生徒が行きつくであろうソースに当たりをつけ、ある程度まで目を通しておくことが肝要です。
これを怠ると、授業がどう展開するか想定できなくなってしまうことが多々ありますし、適切な情報ソースを見つけられないで困っている生徒に助け舟を出すこともできません。
こうした活動は、ひと昔前なら、学校図書館を使うぐらいでしたので、司書の先生に関連書籍をピックアップしてもらえば、如上の準備もある程度は円滑に進みましたが、ICTを活用するとなると話は別です。
生徒がやりそうな検索方法を試し、どんなサイト/ページがリストアップされるか確認した上で、授業をどう展開していくか、あらかじめ考えておきましょう。

❏ 情報ソースへの正しいアプローチも学ばせたい

生徒が身につけている/常態としている「ネットでの情報の探し方」には一定の類型があるでしょうが、想定外の探し方をする生徒もいます。
実際に情報を検索している場面を観察してみないと、生徒たちがどんなアプローチをしているかも把握できませんし、誤った/危険を招きかねないやり方をしている生徒を見つけて改めさせる機も逃します。
インターネットという膨張し続ける超巨大図書館を正しく利用する方法を学ばせるのは、「情報」の授業だけではありません。各教科のすべての授業の中で、テーマやジャンルに応じた方法を学ばせましょう。

また、集めた情報(テクストやデータ)を整理し、知に編み、必要に応じて他者に伝えるにも、ICTを活用させる必要があるはずです。まとめたものを先生に提出するのだって「他者への伝達」の一つです。
集めた情報にラベルを付けて、それをキーにソート(分類)したり、整理した結果をプレゼン資料に起こしたりするにも、ICTを日常の道具として使いこなせた方が生産性が上がるのは言うまでもありません。
その3(「対話」の場面)に続く。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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