高校生にとっての探究活動

高校生にとって課題研究などの探究活動は、新たな知を生成する方法を学ぶ場でもあり、また大学に進んで学んでみたいことを見つけ、さらにはその先に社会との接点を見出す進路意識形成にも繋がります。
このように考えると、高校の3年間の中のどこかに、こうした活動を組み込む必要があるのではないでしょうか。探究を軸に各教科の学びを繋いだり、進路希望を形成する指導と探究活動の一体化を図ることを、本気で考えなければいけないように思います。
技術の加速度的な進歩が社会の変革を「激流」 に変えていきます。20年~30年という短い期間で半数を超える多くの仕事が人工知能などに取って代わられるということは、人が果たす役割が変わるということ。
これまでに生み出され蓄積されてきた知識だけでは解決できない課題が増えるということを意味します。習ったことをきちんと理解し覚えることは今後も不要にはならないでしょうが、新たな知を生み出す方法を学び身につけていることが、生きていくためにより大きな意味を持つようになるのは自明です。
高校では、総合的な学習の時間を、「総合的な探究の時間」に変える方針が打ち出されていますが、呼び方が変わるだけではないはずです。探究活動の意義と、指導を進めていくときの型(フレーム)や、それに応じた評価の必要について現段階で考えるところをまとめてみました。

PPDACサイクルを用いた課題研究(その1)

調べ学習と探究活動とでは目的が違う
探究活動に用いるフレームワークを学ぶ必要性
最初の一歩は、疑問を「問い」に起こすこと
「当たり前のこと」 をスルーしないことが大事
問いを起こしたら、調査の計画に

PPDACサイクルを用いた課題研究(その2)

データの収集と整理
分析に向けた準備
定量的に比較考量できる形に変換する
仮説を立てるのはここまで来てから
結論を導く前に、仮説を検証
方策や手順に習熟するまではグループ内で支え合い

探究型学習(課題研究等)の成果をどう測るか

探究方策の獲得に焦点を当てた評価を
教える側で評価観点と評価基準を共有しておく
生徒自身もあらかじめ評価方法を知らしめる
最終結果ではなく中途段階で各フェイズの評価を
仕上がったレポートやプレゼンでの評価だけでは…
探究活動の結果が、自分の将来と向き合うことに繫がれば
何かを明らかにする目的は、より良い選択に向かうこと
継続的な活動評価で探究前後の変化を把握

■関連記事:
探究活動や課題研究と成果発表会

課題研究や探究活動の成果発表会は、次の学年に多くのものを引き継ぐ教育機会です。考察を経て残った未解決の課題は次学年の生徒の研究テーマになり得ますし、研究・考察に用いた優れた手法は、倣うべきものとして同級生や後輩たちに伝えたいものです。自分自身が行った探究は、進路意識(=何を学びたいのか、学んだことを通じて社会にどう関わりたいか)の芽生えや深化に繋がりますが、他者の成果に触れて啓発される意識もあるはずです。

探究型学習を使った進路指導

探究型学習を通して、興味を持てる学問・研究や社会の取り組みを見つけ、そこから具体的な進路希望を作っていく生徒がいます。職業をターゲットにして逆算的に作ったルートに乗せる指導に限界が見える中、キャリア教育を補完する、あるいはその一部を置き換えるものとして、探究型学習の可能性は大きく広がっているように思われます。

『TOK(知の理論)を解読する』 を読んで

変化を続ける社会の中で、新たな知を生成することはどんな場面でも必要になると思います。世界を変えるようなイノベーションもあるでしょうが、日々の生活や身近なコミュニティの中で次々に現れる課題にも、過去の成功体験(解き方)を当てはめるだけでは用をなすとは限りません。そんなときに、答えの導き方や物事の新たな捉え方を作り出す方法を学んでいるかどうかは、個人やコミュニティの存続さえ左右します。

教科固有の知識を学ぶ中で

社会の変化が加速し、新たな知見が生み出されるスピードが格段に上がる中、勉強して覚えた知識がわずかな期間で通用しなくなることも増えてくるかもしれませんが、勉強する中で身につけた「学び方」 や「考え方」 は場面を変えても役立つもの。そう考えると、教科固有の知識や技能を学ぶことは、それ自体が「目的」ではなく、学び方・考え方を身につけるための「手段」でもあると捉えた方が、今の時代に馴染むのではないでしょうか。

学びの重なりを上手に利用

科目の新設などを受け次期教育課程に各科目をどう配置して教育目標の達成を図るかも大いに悩みどころ。枠は増えずにピースが増えるわけですから、重なりをどう設計するかが肝になります。各教育活動の効果測定をきちんと行いスクラップ&ビルドを大胆に進める必要もありますが、削れないものは削れません。教科の学び、探究活動、進路指導とが相互にどのような役割を引き受け合うべきか、俯瞰して見直すべき時期です。

追記: 探究型学習は、初期の段階では一人で進めるより、グループで取り組ませた方が良さそうです。
生徒にとっては馴染みの薄い、初めてトライする経験ですから、気づきの相互補完や知識や発想の持ち寄りという協働が、トライを成功に導いて、より面白い成果につながるのではないでしょうか。
協働性を高める最善の方法は、その楽しさに気づかせることだと思いますが、皆で知恵を持ち寄れば、色んなアイデアが出てきて、役立つだけでなく楽しさもアップすることを、経験させて「学習」させるのが一番の早道かと思います。
グループワークの中で、探究の方策を学び、型を身につけたら、仕上げの学年では個々人が自分の興味を突き詰める探究に移行すれば、これから先に学ぶことやそれらを学ぶことへの自分の理由が作れるはずです。
個人論文に取り組むときも、それぞれの生徒の探究活動を互いに分断するのではなく、互いの研究に触れる機会を維持するのが好適です。協働や他者との関係の中で、自分の思考の限界を超えられることを十分に学ばせることが、高等教育機関での研究やそこでのコミュニティ作りの大切さに気付かせることになるからです。

 

 

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

 

 

 

 

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探究型学習(課題研究等)の成果をどう測るかExcerpt: 課題研究などの探究型学習に限りませんが、何かに取り組ませたら、きちんと評価をする必要があります。できるようになったことをたな卸することで生徒に自らの成長を自覚させるとともに、足りなかったものに気づかせて次はどうすれば良いか展望を立てさせることがその目的です。
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