講義・座学系の授業評価項目

生徒による授業評価アンケートが目的とするところは、改めて申し上げるまでもなく「より良い授業の実現」にほかなりません。
この目的を達成する上で欠かせない「課題形成」と「改善行動の効果測定」の2つがアンケートによって提供される機能です。
良い授業とは何か、その構成要素は何かは、常に問い続けなければならないことですが、授業評価アンケートの評価項目/質問設計を考えるのは、その問いに答えを作り出していく工程でもあります。

2016/04/21 公開の記事を再アップデートしました。

❏ 学力を伸ばし、興味を引き出す授業の実現を目指して

学ばせる方法には様々なものがありえますが、どんな授業でも「目的」とするのは「生徒一人ひとりが学力を伸ばし、学んだことの先に興味・関心を見つけること」にあると考えます。
授業を通して「学力の向上や自分の進歩」を学習者が感じ取ったところにこそ新たな興味が生まれることは、下図のデータが示しています。


学習評価(授業評価)は、テストや課題、ルーブリックを用いた行動評価、ポートフォリオに現れる生徒の成長など、様々なツールを用いて多面的・総合的に行う必要があるのは言うまでもありません。
これ以外にも「生徒に尋ねてみないと判らないところ」があり、それを探るにはインタビューやアンケートを用いますが、前者は手間もかかる上、結果の定量化が難しく、アンケートの活用は不可欠です。
アンケートは、主たる評価項目である「目的変数」と、それに対して有意な寄与が確認されている「説明変数」で質問を構成しますが、授業評価では「学力・技能の向上実感」を主たる項目とするのが好適です。

❏ 学力・技能の向上、自分の成長を左右する様々な項目

これまでに各地の学校で実施いただいたデータを解析する中で、評価項目「学力・技能の向上、自分の成長」に有意な寄与が確かめられた(=重回帰分析で有意な偏回帰係数が観測された)項目群は、

  • 知識・理解の獲得を確実なものにするための伝達スキル
  • 生徒に取り組ませる学習活動の配列による授業デザイン

の2領域で構成されています。それらを配した質問設計は下表に示す通りです。今後も様々な質問設計を試しながら、アップデートを重ねて参りますが、現時点ではこれがベストと判断し、ご提供しております。
なお、データの解析でわかってきたことは、当ブログでも随時お伝えしていきます。こちらにまとめページをご用意いたしましたので、お時間の許すときにご高覧ください。


評価項目と質問文

【板書や資料】 板書やプリントは見やすく整理され、後で見てもわかりやすい。
【指示と説明】 先生の説明はよくわかり、指示にとまどうこともない。
【理解確認】 先生は、生徒の理解を確かめながら授業を進めてくれる。
【目標理解】 先生は、達成すべき目標やポイントをはっきりと示してくれる。
【活用機会】 習ったことをもとに考える機会が、課題などで整っている。
【対話協働】 話し合いなどの協働で、気づきや学びの深まりが得られる。(対話的な学び、深い学びの実現)
【学習効果】 授業を受けて、学力の向上や自分の進歩を実感できる。
【難易度】 授業内容や課題の難易度はあなたにとって、{難しすぎる~易しすぎる}
【学習方策】 私は、この科目の学び方や取り組み方が身についたと思う。(方法の獲得は学習者への自立の第一歩)
【目的意識】 私は、自分なりの課題や目的を持って日々の授業に臨んでいる。(学ぶことへの自分の理由は主体性の源)


これらの質問文は、授業評価アンケート以外にも、授業観察や相互参観の場面でも頻繁に言及し、「校是たる授業像」を明確にして、常に校内での共有を図っておく必要があろうかと思います。
授業を観察・評価するときの観点を設定する際にも、「学力向上と興味発現に資するかどうか」で、観点の合理性・妥当性を判断しましょう。
なお、新課程への移行で、新しい学力観に沿った学ばせ方への転換が図られる中、新たな項目を加える都合上、以前のバージョンで設定していた以下の質問群は設計から外しました。該当記事は残してありますので、お時間の許すときにリンク先にてご参照ください。

新課程への対応に際して入れ替えた旧項目

【話し方】 先生の言葉は、いつもはっきりと聞き取ることができる。
【授業内活動】 討論や練習、作業などの活動を通じて充足感を得ることは、{とてもある~まったくない}
【意識姿勢】 この科目は、あなたにとって、{とても得意~かなり苦手}

 



■ご参考記事:

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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