どんなクラスでも学力差は存在します。たとえ、習熟度別にクラスを分けて展開授業を行っても学力差は残りますし、時間の経過ともに差が再び拡大していくのは多くの先生方が経験していることだと思います。
学力差を小さくするのは容易でないとしても、学力差による悪影響を小さく抑えることはできます。ある程度の学力差があった方がクラス全体の学習成果の総量は大きくなる可能性を示唆するデータもあります。
採るべき対策には以下の2つがあります。双方を組み合わせれば、習熟度などでクラスを分けざるを得ないところまで学力差による悪影響を膨らませてしまうケースはかなり減らせるのではないでしょうか。
- 「学力差による悪影響を抑える技術」を確立して駆使すること
- 「学力差を利用してしまう場面」を授業に取り込んでしまうこと
学力差が大きくなり過ぎてどうにもならない、クラスを分けざるを得ないという状況も現実にはあるかもしれませんが、その時も分割時点での結果学力の差よりも、目標(志望)の違いや学ぶことへの自分の理由の強さの違いを基準にした方が上手く行くことが多いようです。
2015/01/29 公開の記事を再アップデートしました。
分割した後のクラスで起きる、学力・学欲の再拡大
集団を固定しないこと&進度差はつけないこと
成績が振るわない生徒にこそ課題解決型学習
ある程度の学力差は、学習成果の総量を増やす
均質な集団では、交換する発想や知識に乏しい
学力差の解消より、学びの土台を揃えること
教室に入る前に持たせる、既習事項を学び直す機会
まとまった学び直しが必要なときは自主学習会
既習内容の理解と定着を確認する様々な機会
導入フェイズでは、発問を重ねて土台を再点検
早く完答できた生徒を先生役に
専門家である先生がベストティーチャーとは限らない
教えることを通した言語化と学びの深化
余力を残す生徒に挑ませる任意課題を用意
挑戦課題に取り組んだ生徒間で働かせたい相互啓発
上位生が自分で進める間に、遅れている生徒のケア
わからずに止まっている時間が差を広げる
スモールステップで進め、不明の発生を確実に捉える
躓きの大きさによって対処法を変える
タスクの分割で「観察とリカバーの機会」を確保
参照型副教材を頻繁に活用する習慣
個別にケアする間に、他の生徒の活動を止めない
指名した生徒に答えを板書させるときも
昔から馴染んだ方法も、効果と効率を疑ってみる
不用意な“待て”が、伸びるチャンスを奪う
先生が肩代わりしては、できることは増えない
アップデートに際しての追記:
学力差が知識量だけで生じるなら、習ったことをどれだけ覚えているかを測定するテストの結果を使ってクラスを分ければよいのですが、そうではありません。思考力、判断力、表現力も正しく測定し、点数に換算できるものでなければプレースメントテストとしては失格です。
学力差には、結果学力としての「生きて働く知識・技能」の量と質に加え、その科目を学ぶことへの自分の理由(=学習意欲)の強さの影響もあれば、学び方(=学習方策)を身につけているかどうかの違いも含まれるはずです。
学ぶことへの自分の理由は、その科目が受験に必要かどうかという「状況」が与えるものだけではありません。(cf. 学ぶことへの自分の理由を持たせる~新単元等の導入指導)
頭に浮かんだ疑問を解き明かしたい、不明を解消したいという欲求こそが学びの根源的な理由であり、疑問を持たせ、不明に気づかせる働きかけにより、その時々で強くもなれば、弱くもなってしまうもの。
そうした働きかけをしないまま、ある生徒やクラスについて「学ぶ意欲が弱い」と決めつけるべきではないと思います。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一