月: 2023年8月

2学期を目の前に控えて

記録的な猛暑が続いた(まだ続く?)夏でした。それぞれの夏休みを過ごした生徒の、大きく成長した教室での姿を想像しております。8月も残すところ、今日を入れて2日です。既に2学期が始まっている学校も多いようですが、1学期に重ねたご指導の成果を土台に、実りの大きな学びの秋としたいものです。 以下は、2年前にリライトした記事です。学校それぞれに優先課題があろうかと存じますが、この機に改めて取り組みの順序を整…

正しい選択を重ねられる生徒に育てる

どんな場面でも生徒を指導をするときに最終的に目指すのは、「正しい選択を重ねられる生徒に育てる」ことだと思います。これは進路指導に限らず、生活や学習の場面についても言えることだと考えます。正しい選択が行えるようになるには、幾つかの要件を満たす必要がありますが、そのうち最たるものは以下のようなところでしょうか。 1では、必要な情報は何かを特定し、それを効果的に集める力(土台となるのは「読んだり、聞いた…

生徒は「振り返り」を効果的に行えているか

課題や活動に取り組むたびに、そこまでの成果や過程を振り返ることの第一義は、「より良いパフォーマンスを得るのに何をどうするべきか」を生徒一人ひとりが見つけ出すことです。より良い取り組み方を考え出して、それを実践すれば、次の機会で「より納得できる結果」が得られ、科目への自己効力感も高まります。しかしながら、生徒による授業評価アンケートの集計データを見ていると、こうしたメカニズムが十分に機能していない可…

協働場面における個々の生徒の評価をどう行うか

協働で課題解決に生徒が取り組んでいる場面での「個々の生徒の評価」はどうすべきかとのご相談をいただくことが少なくありません。最終的に導き出された答えや発表の内容を、評価基準に当てはめて採点すれば、グループとしての成果(どこまで理解が進み、知識を得たか。思考をどこまで深めたか。表現は効果的で適切かなど)は測れますが、個々のメンバーについての評価には馴染みません。メンバーの組み合わせが変われば、「成果」…

対話の前後に取り組ませる個人ワーク

授業評価アンケートの集計結果を見ていると、教室での対話的な学びはますます充実してきたように感じます。「話し合いなどの協働で、気づきや学びの深まりが得られるか(対話協働)」を尋ねた項目で、回答の9割以上を積極的な肯定が占めるケースもかなり増えています。しかしながら、対話協働の換算得点が上昇しても「授業を受けて学力の向上や自分の進歩を実感できるか(学習効果)」への肯定的回答が占める割合の向上に直結する…

記憶に格納する知識、外部参照する知識 #INDEX

新課程への移行に際し、「学習べき内容は削減せず、その理解の質を高めること」が強く打ちだされていました。従来と同じ指導時間の枠に、思考・判断・表現の各要素を織り込み、主体性・多様性・協働性を身につける場を設けながらも、学習内容は減らさないということです。新課程移行後も、学ばせることの多さが足枷となってか、新しい学力観が求める学ばせ方(=各単元の内容を学ぶ中で、様々な能力や資質の獲得を図る)への転換が…

記憶に格納する知識、外部参照する知識(その2)

脱ゆとり路線を維持しつつ、主体的、対話的で深い学びを実現し、思考力・判断力・表現力とともに主体性・多様性・協働性を獲得させるという課題に、これ以上授業時間を増やす余地がないという状況下で挑むには、「何をどこで学ばせるのか」を戦略的に判断する必要があります。 といった対策を組み合わせることになりますが、3. を実現するカギのひとつが、「記憶に格納する知識と外部参照する知識の線引き」です。 2016/…

記憶に格納する知識、外部参照する知識(その1)

教育の強靭(じん)化に向けてと題する文部科学大臣メッセージが発信されたのは平成28年(2016年)5月のこと。各方面からの「討論や発表などを増やすことが結果的に覚える知識量の減少につながる」という懸念に対して「脱ゆとり」路線の再確認を行う必要がありました。そこでは、「人工知能(AI)の進化など情報化・グローバル化が急激に進展する不透明な時代をたくましく、しなやかに生きていく人材を育てる」という主旨…

夏期休業等のお知らせ

残暑お見舞い申し上げます。連日の猛暑の中、先生方におかれましては、補習や講習、部活動に行事の引率に加え、2学期の準備にもご多忙の日々かと存じます。くれぐれも御身大切にお過ごしください。明日からの盆休みが過ぎれば、2学期も間近です。以下は、以前に起こした記事ですが、何かのご参考になれば光栄に存じます。 さて、夏季休業のお知らせです。当オフィスでは8月11日(金)から16日(水)まで営業をお休みさせて…

参照型教材を徹底して使い倒す#INDEX

教科書の配列に沿って各単元を学んでいくのと、副教材を使って別ルートで知識の拡充を図るのを並行させるのは好適な戦略とは言えません。主教材を軸に学びを進め、わからないこと/知らないことに出会うたびに参照型教材のページを開かせ、生徒が自力で必要な知識と理解を得るようにさせることが大切です。学期が進むにつれて、参照型教材が使い込まれ、書き込みが増えてきたら、生徒はその科目の知識と理解とともに、学び方を身に…

参照型教材を徹底して使い倒す(その5)

問いを起点に理解の軸を形成、知識拡充はその後で 演習(拡張)期、受験(仕上げ)期を待たずに、導入期のうちに基本事項を網羅的に学ばせることには、前稿までの考察の通り、あまり大きなメリットはなさそうです。必要な知識を最初に仕込み切ってしまうという戦略には、「教えられたこと」と「覚えたこと」のギャップを拡大し、生徒にゴールを遠くに感じさせてしまうリスクの方が大きいのではないでしょうか。 2015/10/…

参照型教材を徹底して使い倒す(その4)

ステージごとの学習者特性の違いを踏まえて 学習はその場で完結するものではありません。次のステップに進むための準備(レディネス)を整えることも重要な指導目標の一つです。既習単元の知識がその先の内容を理解するための前提になることは当然ですが、ある単元を学ぶことで身につけた学び方もまた、次以降の単元を学んでいくときの重要な土台になります。不明点があるとき、先生が教えてくれるのを待つのではなく、参照型教材…

参照型教材を徹底して使い倒す(その3)

導入期から仕上げ期に向かう流れで考える「使い方」 前の記事では、参照型教材(いわゆる参考書だけでなく用語集や例文集も含まれます))を常に手元に置かせ、頻繁に使わせることで得られるメリットを考えました。文章を読んだり問題を解いたりしながら、機会ある度にページを開いて使い倒してきた参照型教材は、いつしか生徒にとって「学習を進めるときの大きな拠り所」になっているはずです。使いながら書き込まれたメモは、以…

参照型教材を徹底して使い倒す(その2)

不明を前にしたら手元の教材を参照する習慣を 前稿(その1)では、課題解決に使う場面を十分に経験させないまま、知識の拡充を図ったり、体系的な理解を形成しようとするアプローチのリスクと、コスパの低さについて考えるところをまとめました。生徒にとっての自分事となり得る課題を用意し、それに立ち向かわせる中で、知識の獲得と理解の形成を図っていく、所謂PBL型(課題解決型学習)の授業/学ばせ方への転換を図る中で…

参照型教材を徹底して使い倒す(その1)

記銘のための反復は、課題解決に活用する中で 例えば古典の授業では、まとまりのある文章を題材にした読解指導に入る前に、文法をひと通り勉強させるという手順を採ることがあります。ある程度の体系的な文法理解を作ってからでないと読解に入ってからも躓きが多くてスムーズに進めないという思いからの選択でしょう。英語でも、主教材と切り離して単語集や例文集を個々に覚えさせていくのは「普通」ですし、概説書をひと通り学び…