ワークショップ「面白い授業とは」

先日、都内のある学校をお訪ねして、ちょっと変わったワークショップを行ってきました。タイトルは「面白い授業とは何か」です。
このタイトルに正攻法で答えを探そうとすると、早々に発想が行き詰ってしまうことが少なくありません。ワークショップの冒頭で参加者の皆さんに考えていただいたのは、「面白くない授業」です。

❏ まずは、「面白くない授業」を思い浮かべる

短時間のうちに、実に色々なご意見が続々と出てきました。

  • じっと座っているだけの“修行”のような50分
  • もう少しで答えが出そうなときに先生が答えを言ってしまう
  • 与えられる課題は、いつも自分の思いとずれている
  • 発表しても、ちゃんとしたコメントも返らず、放置されたまま
  • 指示されたことを黙々とこなすだけのベルトコンベア型
  • 結論がでないで、いつも「次回に続く」

先生方ご自身に、中学、高校、大学と受けてきた授業を思い浮かべて頂くと発言は急増。笑いと、ちょっとの恨みが混ざったような答えが、これでもかというほど出てきます。ときには「創作」も入り混じり、大いに盛り上がっていました。
ちなみに、グループワークの様子を見ていて、「授業」を「会議」に置き換えてもそのまま通じるなぁ、と変なところで感心していたことは内緒です。

❏ みんなで一緒にやるから頭も回る

一人で悶々と考えていても、なかなか発想は膨らみません。グループ内の先生や、他のグループでの議論を耳にすることで、自分のうちにある記憶が呼びさまされます。
また、周囲の先生方が必死に考えている中で、脳も活性化するのでしょう。空間を共有して、同じタスクに皆で一斉に取り掛かることは集中力を持続させ、感覚の鋭敏化にも通じます。
こうした意見があらかた出揃ったら、KJ法で、「面白くない授業」の類型化を図ります。机上用のホワイトボードに付箋を貼り込んだり、罫線や枠線を引いたりしながら整理していきます。この段階では、様々な経験や発想から出たアイデアが、整理するに値するだけのボリュームを伴って、すでに目の前に展開されているはずです。

❏ 類型化の次は、構成要素の分解へ

ひと通りの整理が終わったところで、「面白くない授業」のパターンを一つひとつ取り上げながら、そこに含まれる構成要素を切り出していくことで、その正体を突き止めていきます。
例えば、「じっと座っているだけの修行のような授業」なら、「聞く」「写す」以外に、生徒の活動が授業設計に含まれていない、ということですよね。
「分かる」も「理解する」も、その漢字表記には、「分ける」「解す(ほぐす)」が含まれています。「わかる」は「分ける」です。
ワークショップを通じて解明しようとしていることも、まずは問題の切り分けをしないと、対処法や改善策を考える糸口が得られません。そのための手順がこのフェイズの目的です。

❏ 分解した結果に基づき、改善策を考える

ここまでくれば、改善策、すなわち「面白い授業への接近方法」は、手を伸ばせば届くところに来ています。
先の例なら、「聞く」「写す」以外の活動を組み入れれば良いわけで、「話す」「書く」「読む」という言語活動や、参照手段を与えられた状態で何かを調べてみる機会を用意することなどは、多くの先生がすぐに思い浮かべておられました。
「採点したら60点程度のサンプル答案を元に、答案の改善策をグループで協議させる」というアイデアが出てくるのにも、それほど時間はかかりませんでした。これは応用できる場面も多そうです。
その他、どんな「解」が作られたかは、敢えてここでは書きません。
ワークショップの前半、ほぼすべてのグループが挙げた、「答えが出そうなのに、考え尽くす前に答えが言われてしまう授業は嫌だ」、というご意見を尊重させていただきます。



さて、皆様はどのような答えを導かれるのでしょうか。
自分の学校でもやってみたいという方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談下さい。
お見積りのご依頼も「お問い合わせメールフォーム」にて承ります。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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