生徒に求める行動に、時期を追った段階性と同時期における整合性が求められるのは、中間、期末の定期考査問題も同様です。年度内に実施された教科内のすべての定期考査問題をずらりと並べて点検するのが理想ですが、全部を一度に扱うのは大変です。
まずは、学年末考査だけに対象を絞ってしまいましょう。比較点検を実施することそのものが、優先すべき事柄です。
❏ テスト問題は、入口学力と出口目標学力を結んだ線上に
連続性の起点と終点は、入学試験(入選)と目標大学の入試問題です。これをつないだ線上に、すべての考査が配置できて等間隔に並ぶのが理想です。
意図的に重点強化期間を設定しているケースは別ですが、はっきりした意図がないまま、ある時期に間隔が狭くなっていたら問題です。別の時期に間隔が広がっている(=負荷が大きくなっている)はずであり、当該期間に未習熟・未到達の発生リスクが大きくなってしまいます。
入選と受験を結んだ線上に考査問題を正しく配置(イメージ)
点検の着眼点は、題材文の長さ、記述・論述量、応用問題・初見材料の占める比率、思考要素の大小などです。
2年生までは教えたことをそのまま覚えておけばよかったのに、3年生になったら突然、実力問題がドンと出題されるようになるのでは、戸惑いも生じるほか、変化に対応できずに進路希望の実現を諦める生徒も出てきてしまいます。
負荷を急に大きくしないためにも、入学時から卒業時までの連続性・段階性にきちんと配慮しておくことが必要であり、マトリクス点検はそのために行うものです。
❏ あとがきに代えて
本稿でご提案したことは、必要かつ有為なものですが、同時にこれまでの学校現場ではあまり馴染みがなかったものかもしれません。
公式な取り組みとして、学校全体でいきなり導入するには、軋轢のほか、ノウハウの不足の問題も顕在化する可能性があります。ワークショップの運営にあまり慣れていない学校も少なからず見られます。
まずは、気心の知れた仲間(他校でも構いません)で集まるなど、カジュアルな場での試行を幾度か重ね、手応えが確認できてから本格的な導入を検討するのが好適です。
試行期間のうちは、シラバスや学習の手引きなどの成果品に結びつけることにはあまり拘らず、「普段の授業の見直し機会」くらいに位置付けてしまうことをお奨めします。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一