学ぶ理由/自立した学習者

教室の中で「興味が生まれる瞬間」を体験させる

自分が何に興味を持つか、実際にやってみる/経験してみるまでわからないもの。体験の中に興味が生まれます。全く興味のなかったことにチャレンジせざるを得ない状況におかれ、仕方なくやってみたら面白く、すっかりはまってしまったという経験をお持ちの方も少なくないかと。教室/学校は、生徒の意思に拘わらず、指導計画に基づいて様々なことを生徒に経験させることができる数少ない場です。すべての教科の学習を繋げば、世の中…

認知の網の広げ方~5教科7科目をきちんと学ばせる

前稿「5教科7科目に挑ませることの意味」では、学ぶ科目を早くから絞らせず広くしっかり学ばせることの意味を「認知の網を広く偏りなく張らせること」と「各科目の内容を学ぶことを手段に獲得した能力・資質を汎用性の高い、より有益なものにすること」の2つに求めました。とは言え、生徒にとって多くの科目を学ぶのは負担に感じるところも大きく、「直接的な必要性がないと思える科目」の勉強はつい手を抜いてしまいがち。担当…

5教科7科目に挑ませることの意味

国立大を「一般選抜」で志す受験生は、原則として5教科7科目(25年からは「情報」が加わり6教科8科目?)を勉強しなければなりませんが、それ以外の生徒(大学に進学しない生徒も含めて)にも、出来るだけ多くの科目を最後までしっかり勉強してもらいたいと考えます。進路希望実現のための要件を満たすだけなら、必要最小限の科目に絞って勉強する方が「得点力向上のコストパフォーマンス」は高くなるかもしれませんが、こと…

学び方における守破離

生徒から「説明はわかりやすい」「とても面倒見が良い」「訊けば何でも答えてくれる」と言われて悪い気はしませんが、「自ら学び続けられる生徒を育てる」という目的に照らすと、如上の評価を受けたときの心地よさに胡坐をかいてばかりはいられない気がします。もしかしたら、学習者としての自立にブレーキをかけているかもしれません。頼りになる先生が目の前にいるときは良いですが、やがては手放し巣立たせる生徒です。一人にな…

メタ認知、適応的学習力

これまでの取り組みやその成果を振り返って、より良いパフォーマンスを得る/より良い自分に近づくのに何をすべきかを見出せるようになることは、持続的な成長にも、学習者としての自立にも欠かせません。21世紀型能力では、「思考力」を構成する要素のひとつに「自分の問題の解き方や学び方を振り返るメタ認知、そこから次に学ぶべきことを探す適応的学習力等」が挙げられていますが、生活、学習、進路の各領域での教育活動を通…

ノートを取らせて学習スキルを確かめる

教室を覗いてみると、同じ授業なのに生徒のノートの取り方は実に様々です。おざなりなノートの取り方に「あとで復習するときにわかるのかな?」と心配になることもあれば、先生の板書は綺麗に写し取っていても、それ以外まったく書き込まれていない(=本人の思考の痕跡が見て取れない)ノートも少なからず見かけます。その一方、同じ教室にはしっかりと整理されたノートに、散在していた情報をきちんと集め、構造化している生徒も…

探究活動・課題研究と手段科目としての英語学習

夏休みの宿題では昔からの「定番」になっているものの一つに、英語のサイドリーダーがありますが、「時間の余裕があるときに、まとまった量の英文を読むこと」の意義は、学力観や学習指導を通して目指すところが変わってくる中で、以前とは捉え方を変えるべきかもしれません。そもそも、生徒の夏休みは、体験学習や課題研究/探究活動、大学訪問と様々なコンテンツやイベントが積み込まれる中で、「時間の余裕」があるものではなく…

やりきらずに放置してきたことを仕上げさせる

夏休みを迎える前に生徒に投げかけたいことは色々とあるでしょうが、その一つは「1学期中にやり残してきたことを、夏休みの間にきちんと仕上げ直すこと」だと思います。単語集の暗記でも、先生がせっかく小テストまで用意してくれてペースを作ってくれたのに、補習を免れるためにその場限りの詰め込みで乗り切っただけでろくに記憶に残っていないことや、自分で立てた受験勉強にも遅延が生じまくっていることも少なくないはずです…

次に進んだときの学習をイメージ

各単元の学習目標は、当該学習内容を理解させることに加えて、学びのステージが次に進んだときに備えて、基礎的な理解や学びの方策などを身につけさせておくことにもあります。学習内容が高度化していく中で、学習方策の獲得が遅れて「生徒が個人の学習活動でできること」が相対的に減っていくようでは、教室でしかできない学びを充実させることもできなくなってしまいます。また、学びが進んでいくと、不明や躓きが起きる箇所も生…

教え込むより、調べさせて気づかせる

教科固有の知識や理解を効率良く形成したい場面では、調べさせたり、考えさせて気づかせたりすることより、教えるという方法をつい選択しがちですが、それでは生徒が自力で物事を理解したり、何かを解き明かしたりする力を養う機会を奪ってしまうことになりかねません。下図を見ると、横軸と縦軸の値が等しくなるところに引いた基準線(赤い破線)の上側に位置する授業はごく少数であることから「指示や説明がわかりにくければ、学…

学習方策は課題解決を通して身につく

ある単元を学ばせるときに「不明を残さずに理解させること」だけを目的とするなら、先生が丁寧に教えてあげればそれで十分かもしれませんし、ある問いに正解を導くことだけを目指すのであれば、手順をきちんと示してあげることで、当座の目的は達することができると思います。しかしながら、このアプローチでは「学び方を学ばせる」という要素が欠落する可能性が大です。「先生が丁寧に教えてくれさえすれば理解できる」という段階…

主体的・対話的で深い学びをデータから考える

主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、生徒が自ら(=主体的に)学びに取り組むための学習活動/アクティビティを用意し、課題解決に向けた協働の中での生徒同士の話し合い(対話)を増やすなど、先生方は日々の授業に工夫を重ねておられることと拝察いたします。そうした工夫を積み重ねる中でこそ、指導改善の成果は定期的に/しっかりと確かめていく必要があろうかと思います。生徒が対話に参加する場面をどれだけ作り出した…

定期考査の失敗を繰り返させない~リベンジ自習会

そろそろ中間考査の時期です。新学期を迎えてからここまでに生徒が学習の正しい方法と習慣を身につけることができたか、この機にしっかり確認しましょう。特に1年生は、生活環境も学習内容も大きく変化した中で、学びのスタイルを上手くアジャストできたかが試されます。年度が替わって初めての定期考査にきちんと結果を出せた生徒はひとまずこれまでのやり方で構わないと思いますが、成績下位に止まった生徒や前年度に比べて不振…

振り返りを経てこそ次への課題形成

様々な学びを重ねる中で、より良いパフォーマンスを得る/目標の達成に近づくには、がむしゃらに頑張るだけでは足りないものがあるはず。根性だけの無策で壁に跳ね返されていては、頑張る意欲も維持できず、自信を失って対象に近づくことすら避けたくなってしまいそうです。これに対して、どこに力を入れ、何をすればよいのか、自分の課題が明確になれば、後は課題を一つひとつクリアしていくだけ。多少の遠回りや足踏みはあっても…

指示を的確にこなす生徒~それだけで良いのか?

どの生徒のノートもしっかり板書を書き写しているし、予習も完璧に行われており答え合わせだけで十分。生徒を指名しても期待通りの答えがきっちり戻ってくる。一見すると「これまでの指導の成果」のように見えなくもありませんが、どこかに違和感を覚えます。もちろん、ちゃんとノートを取れない、予習もしない、答えさせれば的外れというのでは、これまでの指導のあり方を反省しなければならないでしょうが、指示を的確にこなす姿…

高校生のタスク管理&スケジューリング

生徒にもやるべきことが山ほどあります。日々の勉強に加え、部活動や生徒会活動、家事や家業にアルバイトなど、タスクの多様さは社会人を上回るかもしれません。時間を効率的に使い、手持ちの時間の中にやるべきことをきちんと配列できるようになってもらいたいところです。多彩なタスクの中で、生徒が自分を成長させ、未来を拓く力を身につけていくのに必要なことを後回しにさせないよう、しっかりとタスク管理とスケジューリング…

グループワークで作る学びへの積極姿勢

授業評価アンケートの自由記述意見を読んでいると、グループワークを多く経験する中で、協働での学びに貢献する「責任」を感じた、「役割をきちんと果たさなければ」との思いを強くした、といった記述に出会うことが少なくありません。グループワークは、個人の発想を超えたところに解を見出すことを目的に、集団知/分散知の活用や対話による気づきの交換を図るために採り入れる活動ですが、協働を経験する中で、個々の学習者とし…

プレゼンテーション/成果発表を機につくる成長の場

探究活動を始めとして生徒が自分(たち)が取り組んできたことの成果を発表する機会は以前に比べて多くなっています。日々の授業の中でも個人/グループで調べ学習や討論を行った結果をプレゼンテーションにまとめるのは既に「ごく普通の光景」になったように思います。プレゼンテーションの準備に取り組む工程での試行錯誤や努力そのものに加え、発表の場を通して得る直接/間接のフィードバックは、生徒にとって他に代えがたい成…

イノベーションをもたらす認知の網と偶然との出会い

新しく見聞きしたことを理解するというのは、もともと持っていた知識と新しく入ってきた情報の接点が作られることを意味します。新たな情報が放り込まれたところの周辺に、既に蓄えられていた知識が待ち受けていないと、情報は接点を得ることなく素通りしていきます。既に知っていること/理解していることは、新しい情報を拾い上げるための「認知の網」として機能します。「網」が張られていない/穴が開いている領域では、たとえ…

教え方と学び方のマッチング

生徒はそれぞれの学習履歴の中で学び方を身につけてきています。その一方で、先生方もそれぞれの教え方をお持ちです。進学や年度の切り替わり等で生徒と先生の組み合わせが変わったことを機に、ときとしてこの「学び方」と「学ばせ方」のミスマッチが生じることがあります。教え方と学ばせ方のマッチングが失われると、学ぶ側での戸惑いなどが生じて、生徒本来のポテンシャルが十分に発揮されず、成績の伸び悩みという形でその影響…