学ぶ理由/自立した学習者

受験期を迎えるために春から進める準備

最終学年の夏を過ぎて「受験期」を迎えると様々な目的と課題を持った生徒が一つの教室で机を並べる状態になります。個々の生徒の力を最大限に伸ばすには、選択的な課題付与などを通じた「学びの個別化」への対応も大切ですが、それと同時に、生徒が互いの頑張りを支え合う学びのコミュニティも維持しなければなりません。新学期もまだ始まっていないこの時期に何で?との反応も想像いたしますが、新年度の初日から、秋からの教室を…

"本校は何を目指すのか?"という問いへの答えを共有

日々の教育活動の中で生じた課題の解決を図ろうとするとき、あるいは新課程の対応などで従来のやり方を変更しようとするときに気をつけなければならないのは、部分を最適化しようとして全体のバランスを崩さないようにすることです。全体のバランスを保つには、個々の教育機会の指導目標の上位に、学校の教育目的がしっかり据えれられていることが何よりも重要です。大きな変革を迎え、あちらこちらに修正の手を入れていく前に、 …

年末に行わせる「4月からの学びの振り返り」

期末試験の時期を迎えました。答案返却日には、生徒はここまでの期間に重ねてきた学びの成果を、点数というひとつの指標に照らして確認することになります。考査が終わった解放感もあるでしょうが、ここできちんと振り返りをさせることが先の歩みを大きくさせます。思ったほど成績が振るわなかった生徒もいるでしょう。「まあ、仕方ないよね」と開き直られても一歩も前に進みませんし、悪い点数を前に落ち込んでいるだけでも同じで…

最終局面での進路指導~出願校選定から卒業まで

いよいよ受験期本番が間近に迫りました。ここから先、生徒一人ひとりの状況を把握しつつ、その頑張りを支えるため、指導にはきめ細かな配慮が必要になりますし、出願をはじめとする重大な選択も続きます。この最終局面での指導に明確な見通しと戦略をもち、しっかり準備して臨めるかどうかは、生徒の未来に小さからぬ影響を及ぼすはずです。冬休みに入れば、先生方の間での情報交換や目線合わせの機会は持てなくなります。年末の忙…

大学に進んでから燃え尽きさせないために

進路希望の実現に向けて頑張ってきた生徒には、進学先でも新たな夢の実現に充実した日々を過ごしてほしいところですが、様々な統計を見ると、学業不振や学校生活への適応で苦しんでいる学生も少なくないようです。こうした問題に対して、大学に送り出すまでに高校の中で打っておくべき対策もあるように感じます。 2017/03/30 公開の記事を再アップデートしました。 ❏ 学業不振や学業への無関心が中途退学の主因 古…

現2年、現1年に対する、進級を見据えたゼロ学期指導

別稿「ゼロ学期を迎えるに当たり~指導計画作りへの下準備」では、新年度を迎えるために行う教員組織内の業務に焦点を当てましたが、もう一つ忘れてはいけないのは、進級を控える生徒(現2年、現1年)に対する「新年度に向けた準備を整えさせる指導」です。春を迎えて最上級生となる現2年生は、来年度の履修科目選択の希望を提出したことで「受験生」になる第一歩を踏み出したことになります。ここで歩を止めさせず、二歩め、三…

情報を集めて編む作業で知識獲得の方法を学ぶ(その2)

知識の獲得は、思考力や判断力の土台作りですので、どの教科を学ばせるときにも力を抜くことはできませんが、生徒自身が必要に応じて情報を集めて知に編めるようにすることも学習指導の重要な役割です。昨日の記事(その1)では、授業の導入フェイズや学び終えてからの知識拡充の場面で課すべき「手元にある教材から必要な情報を拾い上げ、知に編み、蓄えるタスク」をご紹介し、生徒が自力で知識を獲得できるように導く方法につい…

情報を集めて編む作業で知識獲得の方法を学ぶ(その1)

生徒に一定の知識や理解を獲得させようとするときに、昔から最もよく用いられているのは「話して聞かせてわからせる」という方法かと思われますが、単元固有の知識・理解を獲得すると同時に、それらを獲得する方法を身につけさせることにも十分に意識を向けたいところです。学校を卒業した後も、科学技術の進歩や社会の変化によって新たな知識や理解を積み重ねていく必要がなくなることはありません。必要なことは自力で調べ、きち…

"正解を言って欲しい"と言う生徒

生徒や学生にアンケートで授業への感想を尋ねてみると「正解をちゃんと言ってもらいたい」という声がちらほらと混じります。先生は意図をもって敢えて正解を示していないのが傍からも明らかな場合にもです。ここから垣間見える問題は、「答えは与えられるものではなく、自分で作るもの」という発想をしっかり持っている生徒・学生ばかりではないということではないでしょうか。 2018/04/11 公開の記事を再アップデート…

科目を学ぶことへの目的意識/学ぶ理由

主体的、対話的な深い学びを構成する要素のうち、「主体性」にはその科目を学ぶことへの自分の理由を持っているかどうかが含まれます。学習方策が獲得できなければ学びは依存的に、学ぶ理由がなければ受動的になり、いずれも主体的な学びとは言えません。 ■関連記事: 目的意識をもって学びに取り組んでいるか前稿で取り上げた科目の学び方や取り組み方の獲得に加えて、振り返りを通じて見出した自分の課題や、科目を学ぶことの…

科目の学び方や取り組み方の獲得

主体的に学んでいると言えるには、生徒本人が「学ぶことへの自分の理由」を持っていることに加え、自ら学び進められるだけの学習方策を獲得している必要があります。誰かに教えてもらわなければ勉強が進められない状態はどこかで脱したいもの。自ら学び続けられる生徒を育てることは、数ある指導目標の中でも最も重要なものの一つです。 ■関連記事: 学習方策の獲得はどこまで進んでいるか【学習方策】 私は、この科目の学び方…

授業を受けて実感する学力の向上や自分の進歩

当オフィスが監修する授業評価アンケートでは、「授業を受けて学力や技能の向上を実感できるか」という質問を「目的変数」に、それに対して有意な寄与がデータで確認されている項目群(目標理解や活用機会など)を説明変数に配することで質問を組んでいます。 授業評価アンケートの目的変数は「学力向上感」 日々の授業を通じて学力向上や自分の進歩を実感する生徒は、高い確率でその科目への興味や関心を深めるというデータ(下…

できることはどんどんやらせる~生徒の邪魔をしない

先生が先回り/肩代わりせずとも、生徒にやらせてみればできることはどんどんやらせるべきだと思います。現時点では少しばかり生徒の手に余るようなことでも、「できるようになってもらいたいこと」なら、トライさせることなしに、出来るようになるチャンスを奪ってしまうようなことは、努々慎みたいところ。教科書や参考書に書かれていることだって生徒に自力で読ませれば理解できるはずですし、もしできない生徒がいたとしたら、…

模試や考査の事後学習~間違え直しだけでは不十分

模試の結果や考査の答案を返却するとき、間違え直しや解き直しを指示することも少なくないと思います。出来なかったところを復習を通じて埋めて知識・理解の補完を図るだけでは、他の部分に不足が残ります。配布された「解答と解説」を読んで「なるほど」と納得しても、それだけでは自力で題意を理解する力、解法を考え出す力が身につくかは疑問です。解法も示されたものを覚えるだけなら「知識」に過ぎません。また、「事前のテス…

学ぶことへの自分の理由(後編)

当ブログでは「学ぶことへの自分の理由」という表現をあちこちで使っていますが、「自分」の反対は言うまでもなく「他人」です。先生方が入念に起こした学習指導計画も、生徒にしてみれば他人が考えるところに基づくもの。いわば「他人の理由」で作られたものであり、そこに「学ぶことへの自分の理由」を持てるとは限りません。内発的な動機(知りたい、解明したい、できるようになりたいといった欲求=自分の理由)から生まれた学…

学ぶことへの自分の理由(前編)

授業評価アンケートで以下の2つの質問への回答を数値化して相関係数を算出してみるとその結果は0.48に止まりました。ある程度の相関ではありますが、特別に強固なものというわけでもありません。 【目標提示】 この授業の目的や取り組み方について、先生から事前に具体的な説明があった。(先生方からの働き掛け) 【目的意識】 あなたは、自分なりの課題や目的意識をもってこの授業に取り組んでいる。(生徒の側での学び…

自ら学び続けられる生徒を育てる

科学の進歩や社会の変化で、新しい知識がどんどん生み出され、古いものは更新されていきます。学び続けていかなければ、正しい判断を重ねていく(=よりよく生きる)ことを、古い知識・常識が妨げます。卒業後にも自ら学び続けていけるように生徒を育てる/導くことは、各教科に固有の知識・技能を身につけさせたり、進路希望を実現させたりすることに劣らず、最優先して取り組むべきことだと思います。誰の周囲にも解決すべき問題…

学ぶことへの自分の理由を持たせる~新単元等の導入指導

どの教科、科目、単元でも言えることですが、生徒が「それらを学ぶことへの自分の理由」を持っていないことには、「深く確かな学び」を実現するための必須要素である「主体的な学び」は期待できません。能動的・積極的な学びには、目的意識と学びの方策の2つが必要です。目的意識をもって学びに取り組んでいるか、学習方策の獲得はどこまで進んでいるかによって、取り組みもその成果も違ったものになります。新年度に始まる新たな…

できない? やらない? やらせてない?

本来ならば生徒自身に挑ませて完遂を求めるべきことを、先生が不用意に先回り/肩代わりしてしまうと、生徒は自力でできるようにならなければいけないことをいつまで経ってもできないままだったりします。学習者としての自立を促すためにも、主体性の及ぶ範囲を膨らませるためにも、生徒にやらせずに先生が肩代わりしていたことがないか、これまでの授業をどこかで振り返ってみる必要がありそうです。 生徒にはできないと思い込ん…

学習型問題への対応力を養う

2020年の高大接続改革の前後から「学習型問題」をよく見かけるようになりました。教科書では扱われていない、つまり生徒がそれまで学んだことがない事柄についての説明や資料を読ませ、そこで得た理解を土台に問いに答えさせたり、意見を述べさせたりするものです。以前はごく一部の大学に出題が限られましたので、個別指導でも対応ができましたが、出題が一般化してくるとなると、授業のあり方や3年/6年を通した指導計画に…