カリキュラム・年間指導計画

学校が目指すものをグランドデザインで提示する

過日の記事「現小6に示すべき、新課程を見据えた学校の戦略」に書いた通り、新学習指導要領への切り替えは現小6が中3になるときです。生徒募集を通じて入学前の生徒と交わした約束は、その生徒が卒業するまで有効な”契約”ですから、しっかり練り込んで実行可能性を担保した教育計画を作り上げておく必要があります。高等学校でも、2022年を見据えて学校がどんな態勢を取り、新しい時代の教育に転…

機械翻訳がここまで進歩すると…

連休中にスマホを新調したついでに、Google翻訳アプリをインストールしてみました。久しぶりに使ってみると、音声認識の性能も各段に改善されていますし、翻訳の精度も初期のバージョンとは雲泥の差です。 ❏ 英語を学ぶことに新たな意味と動機が必要かも もはや、生活レベルなら十分に実用的であり、英語学習に膨大な時間を投じるよりも、アプリの使い方を覚えた方が合理的という意見がでてきても不可解で…

進路の手引きは冊子よりもファイリング形式で

進路の手引きは立派な冊子に整えられて年度当初に生徒に配布していることが多いようですが、思い切って冊子の印刷と配布を止めませんか。進路指導計画に沿って、その都度必要な資料を配布し、生徒自身の手でファイリングさせる形に切り替えてみることをご提案いたします。 ❏ 冊子形式が抱える問題点 冊子に1年間(あるいは3年間)で必要な情報をまとめておくと、必要なときにいつでも情報に当たれるというメリットはあります…

行動を起こしてこそ、見えてくる景色がある

新しい年を迎えると目標や抱負があれこれと浮かんできますが、考えているだけでは立ち止まっているのと一緒です。ひとつひとつを形にしようと行動してみてこそ、それまで見えなかった景色が目の前に広がり、そこに新しい目標/やるべきことも見えてくるように思います。 散歩していても場所を移すごとに新しい景色が目に飛び込んでくるのと似ています。立ち止まっていても曲がり角の先はわかりませんよね。 さて、前振りはこのく…

英語4技能と大学入試対策

高大接続改革で否が応でも注目を集める2020年以降の大学入試では、思考力・判断力・表現力がさらに高い次元で求められます。学ぶべきものは減らさず、その中で主体的、対話的な深い学びを実現するという方針は2016年に打ち出された”教育の強靭化に向けて“で示された通りです。英語ではさらに、読む・聞く・話す・書くの4技能をバランスよく高めることも求められます。どちらか一方だけでも十分…

英語は手段科目:学びの重ね塗りで運用力の向上を

英語はこれまでのところ、国語や数学、理科、社会と同等のポジションを与えられており、英語という教科(正確には科目)の力を身につけること自体が目的とされてきたように思います。しかしながら、これから先の時代では「英語は様々な事柄を扱うときに情報のインプット/アウトプットを担う道具・手段に過ぎない」という捉え方が主流になっていくのではないでしょうか。そういえば、「英語で飯を食う」という言い回しを見聞きする…

高大接続改革に備えて考査問題も新しいスタイルに

2018年の春に高校に迎え入れる生徒は、2020年の高大接続改革入試に初めて挑む学年です。1年生のうちから新しい学力観に沿った教え方/学ばせ方に切り替えないと、3年後の進路実現に際して後手を踏むリスクが高くなりそうです。指導方法については主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、各地で実に様々な取り組みがなされていますが、もう一つ忘れてはいけないのが考査問題のあり方です。 ❏ 理解したことをもとに自…

シラバスの起草・更新に際して#INDEX

シラバス(年間授業計画)は、単体で機能させようとするのではなく、グランドデザインを最上位に据え、到達目標一覧、学習の手引きと補完させ合うことで、使いやすく本来の目的を果たし得るものになります。様々な学校で如上の書面群を拝見しましたが、互いの関連付けが曖昧なままにされているものも少なくありません。時には、記載内容が競合を起こしているケースすら見受けられます。各科目の指導を通じて達成を目指す目標は、学…

シラバスの起草・更新に際して(その4)

十分な検討と協議を経て、3年/6年間を見渡したグランドデザイン、科目・教科ごとの到達目標、学び方を生徒に伝える手引きの3つが調ったら、いよいよ年間授業計画を書面に起こして最終的な仕上げです。 ❏ 年間授業計画の起草は、約束事を確認する機会 年間授業計画は、授業の進め方や指導法についての約束ごとを明文化して、授業に様々な立場から関わるすべての当事者(先生、生徒、学校、保護者)が互いに確認・共有するた…

シラバスの起草・更新に際して(その3)

年間授業計画を起草・改訂するときに欠かせない前段階であるグランドデザインの描出と学年✕教科ごとの検証可能な到達目標の設定が完了したら、次に取り掛かるのは、それらを達成するための方法の立案です。学年✕教科ごと到達目標を、どの教材を、どの時期に、どう使って達成を図るかを考え、総指導時間の中に配置していきます。その中で、授業時数に収まり切れないものをどう扱うかという検討も必要になります。 ❏ 副教材の取…

シラバスの起草・更新に際して(その2)

シラバスや年間授業計画を書き起こしたり、改定したりするときのスタートは、前稿でもふれた「3年/6年を見渡したグランドデザインを描くこと」ですが、グランドデザインができたからといって、すぐに各科目で起草に進むのは早計です。指導や学習の方法・手順を考える前には、学年・学期といった時期ごとの到達目標と、達成検証の手段を決定する必要があります。 ❏ 教科✕時期ごとに、目指すべき到達状態を規定する 指導計画…

シラバスの起草・更新に際して(その1)

シラバスや年間授業計画は、学校によって構成や内容がまちまちです。使う場面を想定して、学校独自のフォーマットが確立されたケースも見られますが、どちらかというと記述の約束ごとが曖昧なまま各科目で起草や更新を重ねる中、いつの間にか整合が取れなくなっているケースが多いように見受けられます。 多大な手間をかけても作成しなければならないものなら、「誰がどう使うのか」 をしっかり考えた作りにしたいもの。何のため…

ルーブリック評価の導入はなぜ必要なのか

高大接続改革とその先の本丸である次期学習指導要領に向けて、学力の三要素をキーワードに、新しい学力観に沿った学ばせ方への転換が急速に進んでいます。各地で行われている研修会やセミナーでも、新課程の中身(学習内容)を研究するもの、AL、協働、反転といった指導方法をキーワードに含むものがとても多くなりました。その一方で、「評価方法の改革」 は動き出しが遅いような気がします。インターネットで「ポートフォリオ…

マトリクス点検で指導主眼を適正配置

マトリクス点検とは「生徒に求めている学習方法」「評価基準」「テスト問題を通して試そうとしている学力」などを、教科・科目を縦軸に、学年・学期を横軸に、ずらりと並べてみて、段階性や整合性を点検してみようという試みを指す造語です。入学から卒業までを左から右に、教科・科目を上下に、それぞれの時期×科目で「学習活動において生徒に求めるもの」を配列してみることで、指導主眼の適正配置を実現しようというのが狙うと…

マトリクス点検で指導主眼を適正配置(その9)

生徒に求める行動に、時期を追った段階性と同時期における整合性が求められるのは、中間、期末の定期考査問題も同様です。年度内に実施された教科内のすべての定期考査問題をずらりと並べて点検するのが理想ですが、全部を一度に扱うのは大変です。まずは、学年末考査だけに対象を絞ってしまいましょう。比較点検を実施することそのものが、優先すべき事柄です。 ❏ テスト問題は、入口学力と出口目標学力を結んだ線上に 連続性…

マトリクス点検で指導主眼を適正配置(その8)

観点毎の段階評価(S~C)を生徒自身に行わせ、記録に残させることも、積極的な学習姿勢を引き出す上で有効です。自分が頑張ってきた足跡を目にすれば、これまでの努力を投げ出すのがもったいなく感じるようになります。 ❏ 評価基準は生徒自身による振り返りに利用 ノートに貼り込める小さなサイズで作成したチェックリスト用紙を予め配っておき、予習、授業、復習のサイクルが一巡した段階で、自己点検をさせて結果をノート…

マトリクス点検で指導主眼を適正配置(その7)

学習の手引きやシラバス、あるいはオリエンテーションで配布する資料には、評価方法や評価基準が明示されているはず。まったく言及されていないようなら、加筆が必要です。特にシラバスに評価に関する記載がないと、シラバスたる要件を満たしていないことになってしまいます。 ❏ 評価基準も、学習の成果を踏まて段階的に引き上げる どのように評価されるかを十分に理解すれば、生徒はそれに応じた行動をとるようになります。中…

マトリクス点検で指導主眼を適正配置(その6)

中高一貫校では、中学と高校、前期課程と後期課程との間で、過剰なギャップや大きすぎる重なりが見つかることが少なくありません。このあたりにも注意が必要です。 ❏ 上下左右と見比べながら、修正案を書き込んでいく シラバスに記載されたことと付箋に書き出して、模造紙の上に張り出していくことで、「あれっ?」と思う機会も少なくないはずです。学年ごとに、また科目ごとに起草してきたものを、付箋で分解し、模造紙の上に…

マトリクス点検で指導主眼を適正配置(その5)

マトリクス点検を具体的に進めていきましょう。各学年、各学期にどのような予・復習を求めているかを確認できるよう、オリエンテーションで配ったプリントや、学習の手引きのコピーを事前に集めておいてください。模造紙と大きめの付箋も用意しておいてください。 ❏ まずは、教科の中で段階性と整合性を 模造紙には、左から右へと学年・学期を書き込んでおきます。付箋には学習の手引きなどに書かれていることを項目ごとに転記…

マトリクス点検で指導主眼を適正配置(その4)

予習方法が学年教科を跨いで異なるのは、授業の進め方は各学年教科の方針によって違うから当然だというロジックには、十分な妥当性と合理性が備わっているでしょうか。様々な工夫や試行錯誤を重ねる中で、成績を伸ばし多くの進路希望を実現させた学年のやり方に倣い、それをベースに改善と更新を繰り返していけば、学校としての方向性や指導像は自ずと共有されるはずです。前学年のやり方を十分に知ろうとせずに、一から試行錯誤を…