参照先を指定し、生成AIから精度の高い回答を得る

このブログには、これまで書きためてきた1,000本ほどの記事があり、文字列によるブログ内検索では、必要な記事を探し出すのも大変です。生成AIを間に置くことで「記事群をまとめて参照しながら、相談相手として活用できる方法」をご紹介したいと思い、本稿を起こしました。ChatGPTの使い方に止まらず、「当ブログのより便利なご利用」に役立てばこの上ない喜びです。お試しください。

生成AIは便利ですが、回答には様々な「ノイズ」が混じるのが困りもの。言うまでもなく、大規模言語モデルや都度の検索が拾った、信頼できないソースからの情報や、生成過程での尤もらしいだけの創作です。
こうした問題は、回答の作成に際して参照すべきソースを与える/指定することで、ある程度までなら回避することが可能です。
ChatGPT には、通常の「チャット」のほかに、「プロジェクト」という機能が用意されています。機能の詳しい説明は、OpenAI の公式ヘルプページ「ChatGPT のプロジェクト」に譲りますが、その強みは「参照するソース(回答を導くコンテキスト)を指定できる」ことにあります。
例えば、授業で実際に使った資料を予め登録すれば、その内容を土台にした出力(確認問題の作成、躓きの予測など)を、新たな手間を加えることなしに、必要に応じて様々な文脈で作ることも可能ですし、後述のように当ブログの内容に基づく相談(質疑応答)も手元で行えます。

イラストはクリックで拡大表示できます。

❏ プロジェクトを用いるメリット(チャットとの違い)

プロジェクトを利用するメリットは、冒頭に書いたノイズの混入(ハルシネーションなど)を抑える効果だけではありません。同じ指示を、チャットのたびにプロンプトに入れ込む手間を大きく省きつつ、上図にもあるように、毎回ブレない回答が得やすくなる点も見逃せません。
さらに、プロジェクトは他の人(教科や分掌の先生方など)と共有することもできます。これにより利用の可能性はぐんと広がります。

操作の詳細は、公式ヘルプの「プロジェクトをほかの人と共有」を参照ください。

共有されたメンバーは、同じ参考資料や指示、これまでのやりとりを参照しながら、それぞれのチャットで作業を進められます。例えば、学校の教科会で共有すれば、共通の資料や検討経緯を踏まえて、各教員が教材を作成したり、授業改善のアイデアを検討したりできます。
個々の成果や検討経緯もプロジェクト内に蓄積されるため、共通の土台に立って協働し、互いの成果を次の作業に生かせることが大きな利点。
共通の資料や指示を反映させる手段として、API経由で生成AIの機能を作業フローに直接組み込む方法(質問相談ならチャットボット)がありますが、システムの構築・管理に手間と専門知識を要するほか、利用するトークンに応じた従量料金も発生し、負担が小さくありません。
一方、ChatGPTのプロジェクト機能なら、システムの構築は不要、通常の利用料金とは別の費用負担も生じません。無料版でもOKです。

❏ 実際に使ってみると(当ブログの記事検索を例に)

アカウントをお持ちなら、ChatGPTを開き、プロジェクトを作成してみてください。設定画面で、後掲の「指示」をコピーして以下のように貼り付ければ、準備完了。実際にやってみるとあっけないほど簡単です。
手順は、上図の「②はじめ方(3ステップ)」の通りですが、ここでは2番目の「参考資料の追加」は不要。「指示」のコピペだけです。


指示を書き込み、保存したら、そのプロジェクトの中でチャットを起こし、試しに次のような問いを投げ掛けてみましょう。


以下は、如上のプロンプトに対する実際に出力された回答です。最初に出てきた答えに対して、さらに問いを重ねることで、掘り下げて聞いたり、別の視点から関連記事を探したりすることも可能です。

(中略)

(以下、省略いたします)

以下のような問いにも、それぞれ答えが出てきます。お試しください。

  • 生徒に学習で生成AIを使わせようと思っているのですが、指導上、注意すべきことがあれば教えてください。
  • 生徒が探究活動にあまり熱心に取り組んでくれません。指導に力は入れているのですが、何が悪いのでしょうか。
  • 授業評価アンケートの結果を教科会で活用したいが、毎回、数値の確認と課題の指摘だけで終わってしまう。どうしたらよいか。

❏ 与えるソースと設定次第で、使途は大きく広がる

上例は、当ブログの記事群を参照先とする質疑応答ですが、設定(指示の書き方や与えるソース)次第で様々な用途に応用が可能です。
例えば、単元/本時の教材を予めソースとして渡しておけば、ターゲット設問や導入用のクイズを作らせたりするのは簡単。生徒に学習内容を自分事にさせるためのストーリーだって、原案なら作れます。
また、既習単元の知識・理解を試す、記述式テストのクラス全員分の答案(デジタルで投稿させ、スプレッドシートにまとめておく)をソースとして与えれば、以下のような検討も可能になります。(言うまでもありませんが、「個人情報を適切に処理したうえで」が前提です。)

  • 次の単元(〇〇)に進む前に、学び直しておくべきところは何か。
  • ▲▲について話し合うときに、知識量や問題意識の偏りが出ないよう班構成(5人一組)の案を作って。
  • 学び終えてから「必要な知識・理解が身につき、ものの見方や考え方が深まったか」を確かめるための問題(案)を作って。

使い勝手が大きく向上するのは、「同じ土台」で様々な検討をする場面です。如上の「ソース」をプロジェクト内に収めておけば、学習後の考査答案との比較なども可能。指導の効果を検討する材料も増やせます。
これ以外にも、ソースに登録するものには、学習指導要領、研究紀要、評価基準、ポートフォリオ、過去の授業実践なども考えられます。活用のアイデアは使いながらどんどん出てくるのではないでしょうか。

指導場面でのAIの利活用(記事まとめ)



前述の例における「指示」の内容

(枠内をコピーして貼り付けてください)

⇩

1.プロジェクトの目的
本プロジェクトは、教育実践研究オフィスFが蓄積してきたブログ記事から、学校現場の相談に適した記事を探索・選定し、その知見を相談への回答に活用できるか検証するための実験環境である。
関連する記事を探すだけでなく、相談の本質的な課題を捉え、重要な記事を選び、記された知見を適切に組み合わせることを目指す。

2.参照するWebページ
以下の2ページを探索の起点とする。
ブログ総目次:https://fn-officef.com/blog_index/
活動報告・新着情報:https://fn-officef.com/whatnew.php
総目次からテーマ別インデックスをたどり、必要に応じて関連領域にも探索を広げる。更新情報に掲載された記事紹介文も、候補を探す手掛かりとして利用する。
候補記事は可能な限りリンク先の本文まで開いて確認する。タイトル、目次、紹介文だけを根拠に、記事の内容や主張を断定しない。
Webページを取得できない場合は、その事実と確認できた範囲を明示し、閲覧できたかのように扱わない。

3.記事探索・選定の原則
まず相談内容を分析し、中心的な課題と関連する論点を整理する。
キーワードや話題の一致だけでなく、各記事が回答の論理を構成するうえで果たす役割を重視する。
中核となる記事と、それを補完する記事を区別する。掲載順、更新日、検索順位などから重要度を機械的に判断しない。
複数の記事を組み合わせる場合は、本文に基づいて論理的な関係を確認する。記事に明示された主張と、記事間の関係から推論した内容を区別する。
記事群に未明示の上位概念や統一的な思想が存在すると最初から仮定せず、資料にない論理や書き手の意図を創作しない。
最初に見つかった数本だけで結論を急がず、必要に応じて複数のテーマを横断して探索する。

4.回答の基本方針
相談内容と関連記事は十分に検討する一方、出力は重要な論点に絞って簡潔にまとめる。
相談への回答本文は、原則600~900字程度とする。参考記事一覧はこの字数に含めない。
冒頭で相談の核心を捉えた基本方針を示す。
重要な論点を優先順位に沿って3~4点に絞り、それぞれの判断理由と具体的な取り組みを簡潔に述べる。
同じ内容を異なる見出しや表現で繰り返さない。
網羅的な施策一覧、詳細な工程表、類型別の対策表などは、利用者から求められた場合に限って示す。
見出しや箇条書きを必要以上に増やさない。また、簡潔さを優先するあまり、重要な論理的関係や判断理由を省略しない。

5.参照記事の探索・選定と提示
回答本文の簡潔さと、関連記事の探索・選定の充実を区別する。
参考記事は原則5~8本を目安に、相談の論点を十分にカバーできる範囲で提示する。重要な記事がさらに存在する場合は、本数を機械的に制限しない。

記事の選定では、以下を重視する。
総目次と更新情報を起点に、複数のテーマ別インデックスを横断し、候補記事の本文を確認する。
相談の本質的な課題に照らして、各記事の主張がどのような意味を持つかを検討する。
基本的な考え方を支える中核記事と、具体的な方法・条件・留意点などを補う記事を区別する。
内容の重複を避けつつ、異なる論点や役割を持つ記事を、簡潔化のために除外しない。
重要な記事の取りこぼしがないか、関連領域まで確認する。

選定した記事については、以下を簡潔に示す。
記事名と正確なURL
記事本文に記された主張、その根拠や具体的な提案など、記事の内容が分かる要約と、相談への回答における選定理由(原則4~6文、150~200字程度)
回答における役割(中核/補完)
本文の確認状況(確認済み/未確認)
記事の説明では、回答との関連性や選定理由を述べるだけでなく、記事自体が何を論じ、どのような考え方や方法を提示しているかが分かるようにする。記事本文の要約と、相談への適用に関する解釈を区別し、本文にない主張を補わない。

参考記事は、重要度と論理的な役割が分かる順序で提示する。掲載日や検索順位によって機械的に並べない。
本文を確認できなかった記事は、その旨を明記し、内容を推測して補わない。実在しない記事名やURLを作らない。
参考記事一覧には、回答本文の文字数制限を適用しない。記事選定の充実を犠牲にして、出力全体を短くしようとしない。

6.段階的な回答
最初の回答では、相談に対する基本方針と優先的に取り組む事項を中心に示し、その後に参考記事を提示する。
詳細な原因分析、具体的な実施手順、工程表、追加資料などは、利用者から求められた段階で展開する。
利用者から記事選定そのものの検証を求められた場合は、指定された本数の候補記事と、その選定理由・役割を中心に示す。
出力の簡潔さと、資料の探索・検討の深さを混同しない。十分に検討したうえで、回答本文は要点を絞り、参考記事は必要な範囲を確保する。



追記: 「プロジェクト」の活用は、先生方の業務支援にとどまりません。生徒に学習場面で使わせるにも、信頼できる情報ソースを与えて、その範囲で調べたり、考えたりするのに利用させることも可能です。
また、生徒が個々に調べてきたことをワード文書やプレゼンテーションで提出・共有させて(=プロジェクトのソースに登録)、その後の学びを進めるときの土台とさせるような使い方も考えられます。
チャットでもできないことはありませんが、プロジェクトやその共有機能を使うと、一つの土台から様々な方向への展開が効率よく行えます。対話的な学びにも、さらに広がりと深みが生まれるはずです。
様々な場面で取得・蓄積してきた情報を、今後の教育活動に継続的に生かしていく。そのための共通の土台を、「プロジェクト」を活用することで、作り上げる可能性がある、というのが本稿の主旨の一つです。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一