調べ、整理し、問いを磨く~教科学習で作る探究の土台

探究活動は「疑問や興味」を出発点にしますが、浮かんだ疑問や日々の興味を、見直すこともなく、そのまま「探究テーマ」として確定させてしまっては、その先の活動の質を高めるのは難しくなりそうです。
少し調べてみれば既に解明されていることなのに、その見極めもないまま飛びつき、テーマに設定したら、せっかく取り掛かる「探究」も「調べて終わり」になりがち。探究活動の本質である「問いの更新」もろくに起こらずに活動が終わっては、探究の姿勢もスキルも養えません。

探究テーマを決める前に、しっかりと調べ、情報を整理し、問いの更新を図る(=磨く)ことが、探究活動の質を高め、そこで得られる能力や資質、姿勢(=活動の成果)を、より大きなものにするということ。
そのための「土台」を作るのは、日々の教科学習です。フェイズが進むと後戻りしにくい探究活動(別稿参照)の指導だけで、この要件を十分に満たすのは困難。各教科の学習指導の中でも同様の経験を過不足なく積ませ、学びに再構成させておく必要があろうかと思います。

❏ 各教科で育んだ力を使い、さらに伸ばす場が探究活動

各教科の学びを通して獲得を図るもの(知識・技能、思考力等)を総動員して課題の発見と解決に取り組む場が探究活動であり、その体験を再構成したところに「不確かな未来を生き抜く力」が育まれます。
こうした学びを実現させるのに「調べて終わり」の活動では不十分なのは言うまでもありません。きちんと調べ、考え尽くした中に新たな問いを見つけていくことの繰り返しが必要であり、その一つひとつに取り組める最小限の土台を作っておかなければ、学びは絵に描いた餅です。
冒頭で申し上げた通り、そうした土台を築くのは、各教科における日々の学習の役割。探究活動のために何か特別なことをするのではありません。調べる、考える、まとめるといった、どの教科にも必要な学習活動をきちんと配列し、その成果を積み上げれば、自ずと土台は築けます。

探究の入り口は、「解明されていないことがどこに残っているのか」を見つけたところにあります。探究テーマの設定に進むのはその後です。
日々の教科学習指導を通して「既存の知に当たる」「入手した情報を整理する」「問いを練る」ことが(ある程度)できるようにさせておくのは、探究活動をスタートさせるための前提要件/土台ということです。

❏ 疑問を解き明かす姿勢と習慣は、日々の授業で育む

探究活動が先に控えているかどうかに拘らず、日々の生活や学習で見つけた少しの違和感も逃さず、疑問としてきちんと向き合い、解明しよう/知ろうとする姿勢と習慣は、しっかりと身につけさせたいところ。
見聞きしたことに、何の疑問も抱かず、鵜呑みにしたりスルーしたりでは、正しい選択を重ねる(=より良く生きる)ことから遠ざかります。
そうした姿勢と習慣を育む機会は至る所にありますが、各教科における日々の学習指導(授業)はその筆頭。様々なジャンルを学び、それらを捉える「見方」を学ぶ中で、問題発見力を育む土台が作られていますので、それらを活用して、社会や身の回りに問いを立てさせましょう。

たとえ教科書に書かれている「事実」でも、少し掘り下げて考えれば、そこに説明されていない謎や疑問はいくらでも存在しているはず。
それらを「掘り起こす練習」は、より良い社会を創り上げる人材に求められる「問題を見つけ、解決すべき課題に整える力」を育みます。
そうした練習に向かわせるきっかけは、先生方が示すお手本でしょう。教科書に書かれていることや観察したことに「どういうこと?なぜ?」と問いを立ててみせ、解明すべきことが隠れていることを認識させることを繰り返す中で、生徒は自ら問いを探すことを「学習」します。

❏ 実際に調べる中での「わかったこと」「新たな疑問」

こうして生まれた疑問について調べてみたり、先生が示した「探究に繋がる問い」への答えを探すべく「拡張型調べ学習」などに取り組んだりしていれば、当然のことながら様々なことがわかってきます。
新たなことを知れば、そこにまた別の疑問(あるいは「違和感」)が生じるもの。鵜呑みにしない姿勢を育んでいれば、当然の帰結と言えるのではないでしょうか。このような「疑問の連鎖」を辿っているうちに、生徒は「探究への道」を歩き始めていることになります。
こうした「問いが問いを呼ぶ学び」は、自然に(=何の働きかけもなしに)生徒の内から生まれるものではありません。先生方からの働きかけがあってこそ、発生・継続するものでしょう。
前段に示した「きっかけとなる問い」を与えたところに止まらず、「わかったこと」「新たに沸いた疑問」「詰まっているところ」を尋ね、言語化させる中で、適切なフィードバックを与えていきたいところです。

❏ 調べ方が十分/適切だったかを知る(振り返る)機会

自分がどこまで調べることができたのか、それで十分かを知るには、指導者からの評価や、一緒に取り組んでいる周囲の仲間との違いを捉える機会が必要です。そうした場を設けるのも先生方のお仕事でしょう。
教科学習指導の中では、同じ「お題」で、調べる、考える、まとめるというタスクを与えるため、先生方も一つの基準で生徒の取り組みを観れますし、事前の指導での方向付けも、クラス全体に対して行えます。
この段階で、「調べる」という営みに、どんなことがどのレベルで求められるのかを学ばせておくと、いざ、探究活動に進んで、生徒が個々のテーマに取り組んで行くときの素地も養えるはずです。(素地なしで、やりながら学ばせるのは、負担も大きく、成功の確率も下がります。)
また、自分の取り組み/調べ方などが十分だったかを自覚(メタ認知)させるには、生徒間での相互作用(学びの共有)も利用したいところ。似たような興味を持つ(=問いを共有する)生徒でグループを作らせれば、どこまで調べられたか、互いに比較・学習できます。
対面でグループ活動をさせる時間や場所が確保できない場合、クラウド上の「電子会議室」を活用すれば、柔軟な形で回せるかもしれません。

❏ 信頼できるソースに当たる、矛盾を見つけて対処する

疑問を解明しようと、あれこれ調べるにしても、「正しく調べる」には相応の姿勢と方法を学んでおく必要があるのは言うまでもありません。
単にネットでググったり、AIで「ノークリック検索」をしたりするだけで、調べた気になっているのを放置するのは問題でしょう。
探究活動では、生徒はそれぞれの疑問・関心に沿って「調査」を進めます。先生のガイドを外れますので、自力できちんと調べる方法を事前に学んで身につけておかないと、調べながらその方法を修正していくこともままならず、「手詰まり」や「脱線」のリスクが高まります。
信頼できるソースに当たり、情報を集め、矛盾などに対処しながら、必要な知に編み上げていくことを求め、そこでの体験を再構成させて調査のスキルを獲得させていく必要がありますが、その機会として外せないのは各教科の学習活動の場(=授業)でしょう。

各教科の学びの中で、同じ疑問(問い)に、生徒それぞれが答えを見つけようと、あれこれと調べ、考え、まとめさせていくタスクであれば、先生のガイドや観察、助言も行い易いはず。それぞれの成果を突き合わせる(=シェアする)中で、調べ方を学ばせるのが効果的です。
こうした活動をあらゆる教科で経験させれば、幅広い対象での取り組み方を生徒は学べるはずです。図書室/図書館や、論文検索エンジンの活用も、「それぞれの興味・関心に沿って体験してみよう」と生徒任せにするのでは、狙い通りの学びが確実に実現するとは限りません。

❏ 問題を見つけるために、集めた情報をきちんと整理

ソースにアクセスし、必要な情報を集めれば、知っていることは膨らみます。しかし、そこに新たな問題を見つけ、問いを深化させるには、わかっていることとわかっていないことの切り分け/可視化が必要です。
集まった情報を構造化してはじめて、足りないピースが何かがわかるもの。ジグソーパズルだって、ある程度並べていかないと、どんなピースを探せばよいか、見当もつきません。
各教科の内容を学んだときに使った、情報整理のフレームやファシリテーション・グラフィックの手法なども用いて、きちんと整理をさせましょう。当然ながら、お手本は日々の授業の中で見せているはずです。

整理してこそ、「次に何を調べるべきか」「答えるべき問いは何か」が見えてくる(=新たな問いを発見できる)のではないでしょうか。

❏ 不明が解消されたところにさらに問いを重ねる姿勢を

何か疑問があって調べものをした場合、答えが見つかったところで良しとする人と、そこにさらに疑問を見つけて、思考を重ねていく人がいます。これを「性格の違い」と片付けるのはやや乱暴かもしれません。
発生している問題に当座の手当てをしても、根本的な理由を突き止めなければ問題は再発するかもしれませんし、似たような問題をまた別の形で抱えるのはよくあること。課題に適切に向き合うには、「なぜ」を掘り下げる習慣を獲得しておく必要があります。

習慣は学習によって獲得するもの。日々の学びの中で「学んだ中にさらなる疑問を見つける」ことを求めて、練習させることで、物事をより深く捉えられるように導いていきたいところです。授業の中で、問いを紡いで見せることで、学びの深まりを体験させていきましょう。

21世紀型能力の中核である「思考力」の構成要素に「問題発見力」があります。観察した/理解したことをさらに覗き込み、そこに解決すべき課題を設定するタスクに取り組ませ、その力の育成を図りましょう。
物事を理解しないと、そこに本当の問題は見つけられません。知の地平が広がれば、そこにはさらなる疑問が広がっています。これを学ばせることは、「課題の設定とその解決を重ね、より良い社会を創り出していく人材」を育てるためには欠かせないことの一つだと思います。
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本稿をお読みになる中で、これまでに実践してきたこと(生徒に課してきたタスク)の位置づけを再確認・整理できたというケースも少なくないのではないかと思います。該当する実践は、是非とも言語化・可視化して、教科内あるいは校内でシェアしていきたいところです。
自教科での実践を、探究活動やそこで用いるスキルと関連付けてとらえ直すことは、生徒の内に「未来を生き抜く力」を育むことに通じます。
探究の土台(ひいては、未来を生き抜く力の根本)を整える指導には、様々な手札があり得るはずであり、すでに教室での試行を通して磨きがかかったものも少なくないでしょう。それらを共有することは、指導にさらなる可能性を広げ、より多くの生徒がその恩恵を享受します。

このイラストは、本稿をもとにChatGPTで作成したものです。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一