マトリクス点検で指導主眼を適正配置(その3)

新入生に対して、あるいは学期が切り替わるごとに、学習方法や教材への取り組み方などを伝える「オリエンテーション」が多くの学校で行われています。また、それらを実地に経験させて学ばせる「勉強合宿」も広く行われ、もはや特別な行事ではありません。
オリエンテーションの内容、特に予習・復習の方法や授業への取り組み方は、学年教科の判断や考えに任されているのが一般的なようです。

❏ 学年をまたぎ、成果と反省を踏まえた更新を

すべての学年が、同時並行して新学期準備に当たるため、他学年まで目を配るのは容易ではありません。また、教科会や教科主任の役割や職分の規定があいまいで、他学年に口や手を出すのに躊躇せざるを得ないとの声も少なからず耳にします。
前年度に配付したものをベースに更新や修正を図っているというケースは思いのほか少なく、その時ごとに学年教科担当が相談し合って新たに作るというパターンもかなりの割合で見られます。
そもそも昨年度のものが保管されておらず参照不能という学校も実際にありました。
各地の学校でヒアリングを行ったところ、ご自身の担当学年以外でどのような指示がなされているか把握していないというケースが多数です。
平成24年12月に教科会と教科主任の設置が制度化された東京都でも、状況がドラスティックに改善されたとは言えない状況にあるようです。
この結果、生じているのは、昨年度までの“成果や反省”が今年の指導に生かしきれていないという問題です。「前年を超える」「少なくとも同じ轍は踏まない」というのは組織が行う仕事において、業種を問わず果たされるべき責任のひとつです。
良いもの(=成果をあげたもの)を着実に引き継ぎ、悪いもの(=成果が上がらない/上がらなくなったもの)を改めていくという改善サイクルを確固たるものにするには、如上のやり方には根本的な問題が含まれているのではないでしょうか。

❏ まずは、ずらりと並べて比較してみましょう

試しに、勤務校の所属教科で、各学年の生徒に示していた“予・復習の方法”を全部そろえた上で、並べて比較してみてはいかがでしょうか。
生徒に配付した書面が残っていない、あるいは作成されていないという場合には、お手間で恐縮ですが、各学年教科にお願いして生徒に伝えた内容をメモに書き起こしてもらいましょう。
並べて比べてみると、生徒の成長や学力形成と逆行するかのうように、2年生に対する要求が1年生に対するものより初歩的なものになっていることもあります。
1年生、3年生の予習方法と2年生のものとで、生徒に求めていることが互いに矛盾していた学校もありました。
段階的に要求内容が更新され、結果として入学から間もない頃と卒業の間際とで全く違うことを求めることがあってもかまいませんが、逆行や矛盾はいただけません。
その4に続く

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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