総合学習/探究活動における「知識の活用」

各教科の学習指導において「評価」を行うのは「生徒一人ひとりの学びをより良いものにする」ためであるのは言うまでもありませんが、これは探究活動や進路指導においても同じだと思います。
獲得すべき知識や技能(=各単元に固有の知識など)がきちんと身についていなければ、それを補う機会を与える必要がありますし、知識や技能を「生きて働かせる(=活用する)」ことができていないようなら、できるようにさせなければなりません。そうした指導の必要を見落とさないために行うのが「評価」でしょう。
問題を見つけて、解決策を考え出す力(問題発見力、問題解決力)や、より良い結果を得るために何をどう学ぶべきか見つける力(メタ認知・適応的学習力)などについても評価が必要なのは、同じ理由です。

❏ 探究活動の中で「生きて働かせる」べき知識・技能

総合的な探究の時間(総合学習、探究活動)で活用すべき知識や技能は、ざっくりと大別すると以下の3つになるのではないでしょうか。

  1. 他教科の授業等で学んだことがら(単元固有の知識や技能)
  2. 探究活動の進め方/取り組み方に関する知識(探究の方策)
  3. 探究を進める過程で新たに得た知見や情報(中途までの成果)

1.については、普段自分が担当している教科以外で、生徒がどんなことを学んできたかをある程度まで知っておかないと、きちんと活用しているか(その前提として獲得しているか)も見て取れません。
探究活動の指導に当たる先生は、生徒が履修している/履修した科目群について、教科書(少なくとも目次や索引)やシラバスに目を通して、単元や学習項目の配列をある程度まで把握しておきたいところです。

ときには、各科目の担当先生に「何をどこまで生徒は学んでいるか」を尋ねてみたり、簡潔に伝えてもらう場を持つのも好適かと思います。
2.については、探究活動の「テキスト」やオリエンテーションで配布した「進め方の手引き」などに記載されているものがベースになると思います。(こうした資料が整っていないなら、その整備は急務です)
探究活動の指導をしながら、生徒に説明や指示をしたり、如上の資料に補足したりしたことも、ここで言う「探究の方策」に含まれます。

3.は、先生方から伝えた/教えたことではなく、生徒が個々の活動の中で資料を読んだり、人の話を聞いたりして、得た知識や情報です。
それらをただ記録して列記しただけでは、「生きて働かせた」ことにはなりません。知ったこと、理解したことを、どうまとめて構成しているか、その土台の上にどれだけ思考を積み上げたかに着目しましょう。
参照した資料の名称だけを記録させておくのではなく、そこから何を読み取ったか、要約も残させておくと、どんな知識をどうやって獲得し、それをどう活用したか、トレースして評価するのも容易になります。

❏ 活用すべき知識・技能としての「探究方策」

探究活動を進める中の各フェイズにおいて、生徒に伝え/教えて、活用を求めている知識(探究方策)には様々なものがあると思います。
探究のテーマを考えるときに、調べたことを整理したり、アイデアを膨らませたりする方法も、実地に試して学ぶ場を設けているはずです。

生徒はそれらをきちんと自分のテーマ作りに活かせているでしょうか。決まったテーマを申告させるだけでなく、そのプロセスを観察できる場を設けて、生徒がどう取り組んでいるかしっかり見守りましょう。
リサーチクエスチョンを立てるときは、対象となる事物やデータ、資料を精査し、その中に「解決すべき問題」を見出していくはずですが、その工程もきちんと踏めているか観察が必要です。

もともと興味があったことをテーマに、「答えありきの調べ学習」でお茶を濁させては、探究活動の目的の一つである「探究スキルの獲得と習熟」は遠のくばかりです。(cf. 知りたいから始める探究テーマ選び
仮説を立てて検証するフェイズでは、数学や情報を始めとする他教科で学んだこと(統計など)も活用するでしょうし、成果をまとめるときも様々な場で学んだ「情報デザイン」の知識や技能を活かすはずです。

❏ 学んだ「探究方策」をきちんと活用できたか振り返り

探究方策の獲得を確かなものにして、その活用への習熟も図るには、単に「しっかり教え込む」「練習の場を充実させる」だけでは不足です。
実際に活用してみた結果を生徒に振り返らせ、より良いパフォーマンス/結果を得るのにどうすれば良いか、手持ちの知識や身に付けた技能をどう活用する(生きて働かせる)かを考えさせる必要があります。
こうした指導を通じて目指すのは、「解法が確立していない新たな問題を目の前にしたときに、どう行動を重ねて行けばよいか、自力で考え出す力」(≒適応的学習力)を養うことにほかなりません。
中高生に体験させる総合学習/探究活動を、「その場限り」のものでなく、卒業後の人生をより良く生きるための土台にしてこそ、多大な時間とエネルギーを投じた甲斐があるというものではないでしょうか。
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探究課題の解決を通して育成を目指すものには、「学びに向かう力、人間性等」(21世紀型能力で言えば、社会参画力や自律的活動力、持続可能な未来への責任などの「実践力」)も含まれます。
各生徒が探究活動に取り組む中で得た知識や気づきは、「学んだことを通じて自分が社会と持つ接点」を見つける起点になります。あれこれと調べたり、考えたりしてわかったことを、自分の未来や進路を考えるときに「活用」する場は、探究活動と進路指導を一体で設計してこそ作り出せるのだと思います。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一