具体的なタスクを通して、作法を学ばせる(探究活動)

各地の学校で探究活動や課題研究の成果発表会を拝見していると、自らの興味を掘り下げ、リサーチクエスチョンを立て、きちんと探究のプロセスを踏んで答えを導いた後に、自分の生き方・あり方まで踏み込めているものも多々見かけますが、そうでないものも少なからず…。
先行研究を拾い上げ、そこに書かれていたことを繋ぎ合わせただけに見えるものもあります。高校で体験する探究活動は「どんな研究成果が得られたか」より「各プロセスをきちんと踏む中で、その方法や守るべき決まり事(作法)を学べたかどうか」で成果を評価すべきでしょう。
探究活動を通して学んだ「探究の方策」は、その後の人生の中でも様々な場面で活用され、問題を解決したり、より良い選択を重ねるのに役立てられるもの。きちんと活動に取り組ませ、身に付けさせましょう。

❏ 具体的なタスクと他領域での指導との重なりの利用

研究の成果から窺い知れる「ここまでの取り組み」に違いを生んでいるのは、個々の生徒の資質や意欲における差だけではありません。
活動への生徒の取り組みは、探究活動のプログラムがどう組み立てられているか(=指導の設計)に左右される部分の方が大きいはずです。
別稿でも書いた通り、“探究活動の作法”を学ぶ機会は整っているかは、教える側が常に意識すべきことであり、各フェイズの活動で必ずクリアしなければならない基準を、タスクとともに設けているでしょうか。
例えば、生徒の論文やポスターに表示されている参考文献が、http:// で始まるものばかりだとしたら、「信頼できるソースを選ぶ」という基準すら、きちんと理解して守れていなかったのかもしれません。
こんな事態を避けるには、先行文献を参照するフェイズでの必須タスクに、CiNiiなどの論文情報検索サービスの使用を課すのも一手でしょう。
進路指導の学部・学科調べに、学問探究という入り口も作っておけば、如上のタスクと重なるところも作れますので、既存のプログラムに「足し算」するだけの場合より、効率的に時間を使わせることもできます。
指導時間の限られる「総合的な探究の時間」だけですべてを完結させるのではなく、教科学習指導や進路指導との重なりを上手に使うことで、探究活動に取り組ませることのねらいを達成していきましょう。

❏ 先行研究の調査は、探究の方策を理解させる好機

様々な先行研究に当たれば、同じリサーチクエスチョンに異なる答えを導いているものに触れることも少なくないはずです。ここで言う「先行研究」には、当然ながら先輩学年の成果品も含んで良いと思います。

同種のテーマについて複数の先行研究にあたり、それぞれのアプローチ(調査の規模、仮説の立て方、検証方法、まとめ方など)を比較、整理してみるタスクは、探究の方策を学ぶ入り口として好適です。
例えば、検証方法ひとつをとっても、まったく異なる結果/結論を導きだしている2つ以上の研究を比べてみる中で、誤謬に繋がる危険要素がどこにあるかを実地に学ぶ機会を生徒は持てるはずです。
サンプルサイズ(実験回数や回答者数)が小さすぎる、実験の方法がでたらめ(想定外の要素からの影響を制御できない、仮説ありきで検証方法が恣意的)といった問題も、教えられただけではピンと来ないもの。
生徒が自分の目で見て、考えて、気づいてこそ、こうした「作法」に関する知識も、生きて働くものになると思います。

きちんとした研究論文から、正しい作法を学ばせるときも、「モデルを見せてルールを教える」というアプローチだけでは、要点を抽出できない(=学ぶべきことを正しく学べない)生徒もいるはずです。
先生方からの問い掛けで、見方をガイドしたり、生徒同士の話し合いの中で、気づきを交換させたりして、学びをサポートしましょう。

❏ 近いテーマで研究を行う生徒で先行研究の情報交換

前段の活動に時間を取るのは容易ではありませんが、様々な研究/探究成果に当たれば、参考文献を探したり、リサーチクエスチョンを立てたりするヒントも得られ、「作法を学ぶ」以外の副産物も期待できます。
学年全体で探究活動を行っていれば、似たようなテーマに取り組む生徒は少なくありません。そうした生徒を、どこかのタイミングで集めて、それぞれが調べた先行研究についての情報交換をさせてみましょう。
それまでに各自が当たった先行研究について、それらがどんなリサーチクエスチョンを立て、どんな結論を導き、どのように実験を行ったかなどを、簡単なプレゼンテーションにまとめさせる形でしょうか。
場さえ作れば、それまでに進めておかなければならない準備を生徒は認識します。発表/相互プレゼンに備えて、きちんと先行文献を探して目を通すでしょうし、焦点を持った取り組みを見せてくれるはずです。
それぞれが調べたことに触れて、気づきも膨らみます。探究の入り口で生徒が戸惑い、立ち止まるのを防ぐには、こうした活動が有益です。
情報交換を終えたら、その先の研究をどう進めていくかの展望を発表させ、生徒同士で互いに質問させても面白いように思います。

❏ 中間発表では、互いに質問することをタスクに

別稿「プレゼンテーション力より質問力」でも書きましたが、発表を聴いて質問をすること、他人からの質問に答えることはとても大事です。
前者は、批判的・論理的思考力を鍛える好機となり、後者はそれまでの自分が見落としていたことへの気づきを与えてくれます。
ぶっつけ本番の「成果発表会」では、なかなか質問が思い浮かばない/まとまらないのか、発言そのものが会場から生まれなかったりします。参観者が多ければ、一人ひとりが質問をする機会も限られます。
中間発表は、同じようなテーマに取り組んでいる生徒を再び集めた「グループワーク形式」に切り替えてみるのも好適です。
人数が多すぎる問題も解消できますし、それぞれが似たテーマに取り組んできただけに、「認知の網」も厚く密なものになっているため、質問のやり取りも活性化が期待できると思います。
事前に各自のハンドアウトを交換させておけば、質問のための「予習」もできるため、ツッコミもより鋭いものになりそうです。
言うまでもありませんが、日々の教科学習指導の中で「問いを立てさせる質問をさせる」というタスクに慣れさせておかないと、トレーニング不足で「質問をする/質問に答える力」が不足します。
最終の成果発表は、活動の締めくくりとして重要であり、自分とはまったく違うテーマでの研究に触れて、社会をより広い視野でとらえ直す機会にもなりますので、学校/学年全体で行うのが好適ですが、中間発表は、探究活動をより良いものにするための点検と学びの機会。
そこでどんなタスクを課し、それを通じて得たものを踏まえて、その後の探究を進めさせるかを意識の真ん中に置いた運用を心掛けましょう。
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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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