学びの個別最適化/複線化、拡張(まとめページ)

学びの個別化、複線的ハードル、学びの拡張といった考え方に通底するのは、教室を学びのコミュニティとして十分に機能させることと、個々の生徒の特性やニーズに応じた学びを実現することの両立です。
教室には、学力差や希望進路の違いが必ず存在しますが、それらに対応する術を「個別指導」に頼ると、集団で学んでこそ得られる効用(対話的な学び、協働性や多様性の涵養など)を失わせることになります。
クラス全体で共有する「必達の学習内容」を基盤にしつつ、課題の難易度や取り組み方を複線化し、さらに必要に応じて学習内容の拡張を、授業デザインとカリキュラム策定の両面で図る必要があると考えます。
当ブログでは、以下の記事などで、それぞれの場面、観点で考えるところを書き起こしてきました。それらを俯瞰すべく、まとめてみました。

クラス内で生じた学力・学欲差への対処法(全5編)

クラスには必ず学力差や学習意欲の差が生じます。これを単純な習熟度別編成や個別対応だけで解決しようとすると、学びの活力を弱めかねません。前提知識を整える工夫や課題設計、教え合いの関係づくり、小さなステップでの理解確認などを通して、差を前提にしながら学習成果を高める授業を作っっていく必要があります。
ある程度の学力差は、学びを活性化する
本時の学びの前提となる知識を事前に整える
生徒同士の教え合い、手空きを埋める任意課題
タスクの分割、参照型教材の頻繁な利用
不用意に学びを止めると差が拡大&伸びを失う

学びの個別最適化の問題点と教室での対応

多様性の包摂を実現する手段として学びの個別最適化が進められていますが、闇雲に進めると対話的な学びや協働性、多様性を学ぶ機会が弱まりかねません。共通課題で必達の学習成果と協働性を確保した上で、選択課題や自分の問いづくりを通して個々のニーズや関心に沿った学びを実現する方法を考えます。

ひとつの課題から複線的なハードルを作る

クラス内の学力差がある教室では、ひとつの課題ですべての生徒のニーズを満たすことは困難です。同じターゲット設問でも、解答形式やガイドの強さを変えた複数の課題を用意することで、生徒は自分の実力や関心に応じて挑戦するハードルを選べばせれば、学力差や意欲差を吸収しながら学びを進めることができます。

基礎力不足の生徒にどう学ばせるか

基礎力が不足する生徒への指導では、既習内容の復習やわかりやすい説明に終始しがちですが、それだけでは問題の根本は解決しません。知識の不足の背景には、学び方への未習熟があります。教科書を読む、対話で気づきを交換する、問いを立てる、振り返るといった活動を通して、必要に応じて自ら学べる力を育てましょう。

学力層に応じた「指導の力点」

教室には様々な学力層の生徒がいます。どの層の生徒にも同じ授業を行うとしても、どこに力点を置くかはクラスの状況によって変わります。生徒が卒業後に担う役割も視野に入れ、どの能力を重点的に育てるのかを意識しながら学習活動を選び、配列する必要があります。その主眼を生徒とも共有して授業を進めていきましょう。

「学びの拡張」まで考慮したカリキュラムの設計

カリキュラムを設計する際には、学びをどこまで拡張するのかをあらかじめ見通しておく必要があります。授業や単元で共有するコアとなる理解を明確にした上で、発展課題や関連分野への探究など、学びを深めたり広げたりする「選択」を用意(必達の学習内容と挑戦的な学習内容を多層的に配置)することが、個別化の本質です。

知識をどこまで拡張するかは個々のニーズに合わせて

必要な知識の範囲は、生徒一人ひとりの事情によって異なります。どこまでを学習のゴールとするかを個々の生徒に応じて示すのは、教師の重要な仕事です。その線引きには用語集や傍用問題集を活用できます。また、同じニーズを持つ生徒を集めて発展学習の場を作ることで、それぞれに必要な学びの拡張を図ることができます。

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教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一